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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第1章 ゲームスタート編

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Episode16 - VS 『悪母鬼 マーテル』3


 マーテルのHPバーは未だ8割以上残っている。

 オーガ3体を産むのに1割、ゴブリン達を継続的に産むのに更に1割だ。

 私が度々ゴブリンを投げ付けても、ダメージの肩代わりによって防がれているのが現状で、範囲攻撃的なモノを使わない限りは大きく減らすことなど出来ないだろう。


「だからこそ、だよ」


 私は今、やっと。

 屍人喰いの時には辿り着けなかった、マーテルの……肉塊の目の前へと辿り着いた。

 ダメージを与えようと思えば、幾らでも素手が届く距離。今も背後からはゴブリンや、オーガ達が迫ってきている……そんな場所。

……マーテルには直接的な攻撃能力はない。あるならここまで近付いた私に何かしら仕掛けてきている筈なんだ。

 ゆっくりと、そう見える程に滑らかに。

 私はダメージを生じさせない程軽やかに、マーテルへと触れる為に手を伸ばす。

 ただの肉塊に見えていたそれは、脈動しており人肌程度の暖かさを感じることが出来た。

 そう、触れることが出来たのだ。


「触れる事が出来るなら……ここから、幾らでも食べる事が出来る」

『アナタ、学習能力がないのかしらァ?幾らダメージを与えようとしても、私には私の仔が』

「分かってるよ、そんな事」


 大きく口を開き、私はゆっくりと……しかしながら、自身の内側から湧き上がる食欲に身を任せ。

 一度齧り付いた。

 瞬間、歯が何か硬いモノに当たる感覚と共に背後から幾重もの破裂音が響き渡る。

 ダメージを与えられない?そうだろう。

 マーテル自身に対する攻撃はゴブリン達に肩代わりされる?その筈だ。

 だったら。

……私が出来る、最大の攻撃を延々与え続けたらどうなる?

 【捕食】、【筋力増加】によって強化されたステータス。

 【口腔生成】によって、2つになった口。

 そして、【噛みつき】によってどんなに硬いモノであろうとも噛み砕く事が出来るようになった攻撃力。

 その全てが合わさった今の私の噛みつきは……たった一度の咀嚼で何体ものゴブリンを屠る事が出来る程のダメージを叩き出せる。


「ァガ、ァ……?」

「ビャ!?」

『あ、ぁあ……!?そんな、私の仔達が……こんなふざけた事なんてある訳……!?』


 あるのだ、そんなふざけた事が。

 私の歯は、今も尚マーテルの手前で硬い何かに当たり肉塊には届かない。

 だが、それが逆にマーテルへの攻撃となっている。

 背後では私に触れようと、引き剥がそうとして風船の様に破裂していくゴブリンやオーガ達の音が聞こえ、やがてそれは遺跡全体に伝播していくのが【聞き耳】によって聴こえてくる。

 マーテルがダメージの肩代わりを止め、私に身体を食われるか……何かの拍子に私の身体を引き剥がせる程の運の良さを発揮したゴブリンやオーガ達が現れるまで、この行動は止まらない。

 だが、そんな事態は訪れない。

……試してたんだよ、ダメージの肩代わりがどの順番で適用されてるのかさ。

 度々ゴブリンを投げ付けていたのは、何もダメージが徹る事を期待してのモノではない。

 どの距離、どのタイミングで生まれたモノがダメージの肩代わりの対象に優先的になるのかを確かめていたのだ。

 結果、分かったのは……マーテルから近ければ近い程、その対象に優先して選ばれる、という1つの事実。


『ッ、ぁあアアア!!』


 私が噛みつくのを止めようとしないからか、マーテルは私を引き剥がす為のゴブリンを産もうとして……ダメージの肩代わりの発動によってその全身を血で濡らしていく。

 詰んでいるのだ、既に。

 私がここまで近付けて、尚且つ限定的な状況であろうと、今のプレイヤー達からしたら規格外なダメージを延々与え続けられる手段を持っている段階で。

 視界の下部のマーテルのHPが急速に減っていく。

 部屋の中には既に私とマーテル以外の生存者はおらず、遺跡の中も先程までとは打って変わって静かになった。

 だからこそ、マーテルは産み続ける。自身に外部の敵を攻撃する手段がない所為で、産み続ける事しか出来ない所為で……自身の仔を産んでは血に変える事しか出来ない。


『ぁ……あぁ……』


 やがて、私の歯に触れていた硬いモノが消え去り……柔らかい肉へと口が触れた。

 口の中に広がるのは、幾重にも浴び塗られた血の味と。その中に香る、微かなミルクの様な甘さ。

 肉本来の味は一切せず、繊維を噛み切る感覚と共に……私はマーテルの一部を喰らい取った。


『【捕食】が発動しました。バフ『全ステータス強化』が付与されました』

「あは、ここまで肉ばっかりでデザートの気分だったんだ。丁度良いね、君」


 既に、目の前の肉塊は強者ではない。

 捕食者(わたし)の前に置かれた、逃げる事の出来ない被捕食者(いけにえ)だ。


『やめ、止めろ……ッ!』


 喰らう。


『私が、私はここから始める為に……!』


 喰らう。


『まだ、何も成せていないのに!』


 喰らう。


『き、消え――』

「ゴチソウサマ」


 最後の一片、人の顔のような形をしたサッカーボール大の肉を手のひらに生成した口と共に喰らい切れば。

 マーテルという存在は、全て私の腹の中に収まったのだった。


『『悪母鬼 マーテル』が討伐されました』

『MVP選定中……参加プレイヤー数1人。MVPを選出しました』

『MVP:プレイヤー名『イヴ』』

『MVP特典として、スキル取得用の特殊アイテムが付与されました』



――――――――――

プレイヤー:イヴ

合計スキルレベル:11

保有スキル:【噛みつき】Lv1、【筋力増加】Lv1、【聞き耳】Lv2、【隠密】Lv1、【恐怖耐性】Lv1、【捕食】Lv2、【口腔生成】Lv1、【カニバリズム】Lv1

――――――――――

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― 新着の感想 ―
なるほど種が分かればどうと云うことなかった訳か 身代わり能力が仇となりそしてマーテル自身に戦闘能力は無いから手も足も出ないあとはただ喰われるだけの文字通りの肉塊に成り果てる どんな気分だマーテル、一度…
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