Episode4 - 駆けた先
全身の骨の甲冑を、馬型の身体と同じ様に棘だらけにしつつ。
足裏の形状を変えてスパイクを作り出し、その場から動かないように。
今までは片手だけだった本体との繋がりを、両手で抑える事できちんと力が入る様にして……馬型が動かないように止める。
「さ、皆!早めに!真ん中の核をしっかり狙おうか!」
「は、はい!」
「バフ掛けます!」
「回復続けるので、そのまま抑えていてください!」
私が助けに入ったのは初心者に近いパーティの元。
故に、掛けられるバフや回復量は微々たるものだ。しかしながら、彼らは私が来るまで防戦一方だったにしても繊維の人形を抑え込む事が出来ていた。
と、なればだ。
私と力比べをしていた馬型の、繊維という身体故に出来ている僅かな隙間。それを縫う様に矢が射られた。
……へぇ、良い腕前。
見れば、無人島という環境で即席ながらも作ったのであろうハーフギリーを纏い。
木を組み合わせて作られた弓を構えたプレイヤーが1人、冷静に次の矢をつがえていた。
名前は知らない。私も参加した第1回のイベントには居なかった……と思われる為、最近入ってきた新人だろう。
「――!?」
「おぉっと。暴れないよ暴れない。どうどう」
核を突然攻撃された馬型は暴れ出す……ものの。
私がしっかりと抑え込んでいる為、その場から動けない。今この瞬間も、森の中で狩りに勤しんでいる配下達のおかげで、私の強化は途切れず積み重なっていっているからだ。
故に、この状況で核に直接攻撃出来る存在がいるならば……結果は分かり切っているだろう。
「ふぅ。お疲れ!」
程なくして、馬型の身体は崩れていく。核が耐えきれず、身体が崩壊したのだ。
私はここまで攻撃や支援をしてくれた初心者パーティの面々を労りながらも、次の獲物の元へと向かう。
見れば、周囲では大きく分けて3つの戦場が形成されている様だった。
1つは、ロートが中心となって数多くの繊維の人形を引き付けている主戦場と言うべき場所。白い煙によって作られた戦士たちと、広域制圧が得意なプレイヤー達が連携する事でキルを稼いでいるようだ。
次に、スオウが中心になって戦う、泥臭い戦場。こちらは分身などを行う事で無理矢理に数を増やしながらも、個人個人で戦闘が行えるプレイヤー達が集まる事で各個撃破していっている。時折危ない場面もあるが、それでも手の空いている者がフォローする事で何事もなく回っていた。
そして最後は、ヒルマが中心となった暗殺主体の戦場だ。
「ハハッ、もっとこっちを見ろやッ!」
「タンク役の見せ場だよなぁここが!」
2人のタンク系のプレイヤーが、周囲の繊維の人形達のヘイトを無理矢理奪い、その隙に暗殺や奇襲系のスキルを多く取っている他のプレイヤー達が核を潰していく。
ヒルマは分身を使う事で1人で同じ事を行っているが……ここが一番キル速度が遅く、なんなら一番瓦解しやすいであろう戦場だった。
つまりは、
「行くならここって訳だァ!」
「「!?」」
「――ッ!?」
勢いを付けて、タンク役へと死角から迫っていた繊維の人形の1体を蹴り飛ばす。
突然の私の乱入に、プレイヤー達も、そして何故か繊維の人形達も一瞬動きを止めた。
「クリティカァルッ!ってかイヴ!おせぇぞ!?」
「うるさいうるさーい、私だってちゃんと1体倒してからこっち来てるんだから文句言わないでよヒルマくん」
その隙を見逃さないのがヒルマという男だった。
一瞬で2体の繊維の人形の首を斬り飛ばし、その胴体の内にあるそれぞれの核を抜き取り握り潰したのだ。
ここまでの襲撃への対応も見ていたが、明らかに私と戦った時よりも成長している。
あれから時間もそれなりに経ったのだ。当然と言えば当然だが……やはり、こうして知った顔が成長しているのを実感すると……負けていられないと腹が鳴る。
「何体か貰うから、タンクの2人はそのままヘイト稼いでて良いよ。つまみ食いだ」
「へっ?あ、はい!了解です!」
「仕事を変えなくていいのはありがたいッ!【ウォークライ】!」
「俺も……【雄叫び】!」
タンク役の2人がスキルを発動すると共に、2人を中心に巨大な音と赤黒い波動が周囲へと広がった。
周囲のモンスターのヘイトを引き付ける類の人間専用スキル。故に、一瞬だけ私や周囲のモンスターアバターのプレイヤーの視線が集まってしまうものの。
元からこのKFOというゲームをハードモードでプレイしているのが我々モンスターアバターだ。一瞬視線が誘導されようと、その次の瞬間には目の前の状況への対処にすぐ戻る事が出来ていた。





