Episode3 - 始まった戦い
作戦自体は順調に進んだ。
食虫植物系のモンスター達は変わらず襲撃を続けていたものの、こちらの実力もそれなり以上。
壌土の蛇を止めようにも、様々なバフを重ねられたフレデリカが操っている為か、抵抗すら許さずに巻き込まれ、体の一部にされる始末。
そんな中、そろそろ進んできた距離的にもフータが居るであろう拠点に辿り着く頃合いになった時、それは起こった。
「ほ、報告!未確認のモンスターが多数こちらへと迫ってきています!特徴として……全身が繊維のみ、核らしきものが有るモンスターです!」
「来たね」
「ですねですね」
私が出会った、繊維の人形達。
それらが波のように森の中からこちらへと迫ってきたのだ。流石にボスとしても、森の一部を切り拓きながらのプレイヤー合流は看過出来なかったらしい。
「よぉーし、皆!あれがイヴの言ってた人形達だ!モンスターじゃなくただの人形!スキルで作るゴーレムに近い!洗脳系のスキルより、真正面から核を潰すのを最優先!」
「「「応!」」」
「あとイヴはそろそろ働いてねー!」
「あは、仕方ない。行ってくるよ、フレデリカちゃん。気を付けてね」
「はいはい!お気を付けてー!」
私はその場から飛び降りて。
壌土の蛇によって耕され、ふかふかになった土の上に着地した。
見れば、既に戦闘組の何人かが人形達と接敵しているものの……あまり戦況はよろしくない。
当然だ。動き自体は単純であっても、1体1体のスペックは強化されていた私と同等かそれ以上。変に真正面から戦おうとすれば負けるのはこちら側になる。
「強化は十分。……ヒルマくん!」
「なっ、なんだよ?」
「あは、ごめんね。――支障がない範囲で一口、食べさせて?」
「はぁ!?」
丁度近くにいたヒルマの肩を掴み、逃げられない様にしてからそう言った。
彼は最初は驚いたような反応をしたものの、私の大体のスキル構成や戦い方を思い出し、
「……仕方ねぇな。指1本、それで良いか?」
「十分!イタダキマス」
観念した様に差し出された小指を、私は握手の要領で手で包み込み……生成した口で喰らいとった。
瞬間、身体の内側から熱が湧き上がっていくのを感じ、指1本と言ったのにも関わらず目の前のヒルマをもっともっと喰らい尽くしたくなってしまう。
だが、必死に……今、身を任せてはいけないソレを抑え込み。私は嗤った。
『【カニバリズム】が発動しました。一定時間『全ステータス強化』並びに『視野狭窄』が付与されました』
『【存在喰い】が発動しました。捕食対象の存在を喰らい、ステータスを強化しました』
『【存在喰い】によってバフ『イートリスト』が付与されました』
『【捕食】が発動しました。バフ『全ステータス強化』が付与されました』
『【魂喰い】が発動しました。全ステータスを一時的に強化しました』
一度に、そして大量に流れていくログを視界の端に捉えつつ、口の端に滴る涎を手の甲で拭う。
「うぉい!?なんか最大HP減ったんだけど!?」
「あ、ごめん。私の新しいスキルの効果だね。1回死ねば戻るから安心して?」
「クッソ……いやまぁ誤差レベルだから良いけどよォ……次から先に言っとけマジで!」
ヒルマの抗議の声を背に受けながらも、私はその場から駆けだした。
既に戦闘は始まっている。まずは……一番苦戦していそうな雰囲気のある、初心者が固まっていそうな1グループの元へと加勢する事にしよう。
一歩、二歩、三歩。
足が進むごとに、私の身体は速度に乗っていく。
風を肌で感じながら、私はそれを骨の甲冑で遮断して……トップスピードに乗った瞬間に、馬型の繊維の人形へと跳び込むように、骨の甲冑を拳を叩きこんだ。
「――!?」
「へッ!?……あぁ、味方!?」
「あ、あの蛇の上に居た人!」
「よっし、耐えきった!ここから反撃だ!体勢立て直せ!」
拳は胴体と首、その2つの部位の中間辺りに命中した。普通ならば衝撃的にも勢い的にも繊維の人形は多少その場から吹き飛ぶか、衝撃を殺し切れずに少し距離が離れてしまうだろう。
しかしながら、それは許さない。
命中した拳に口を生成し、噛み切らない程度に歯を立てる事で人形の身体を逃がさないようにする事で……私の拳の衝撃全てが逃げる事なく全身へと伝わっていく。
……味見……しても美味しくないんだよな、こいつらさぁ。
繊維の人形の身体の中で、私が美味いと思ったのは核のみ。
それ以外も喰らっても良いが、以前核を狙う為に喰らった蜥蜴型の胴体部は一切味がしなかった。
流石の私も、美味い不味い以前に味がしないモノを食べるのは……ちょっと気が引ける。愉しくもなんともないからだ。
「さ、力比べと行こうぜ人形くん」
「――!」
相手は馬型。蜥蜴型と違い、尻尾や舌の様な武器はない。しかしながら、全身の繊維が硬質化し、棘の様なモノを作り出していくのを見て……私は少しばかり笑みが引き攣った。
「ちょ、待とう待とう。そういうのはちょっと趣味じゃないっていうかさ」
「――ッ!!」
「聞いてくれないなぁオイ!」
壌土の蛇が進む間の、防衛戦。
その本番が今、やっと始まった。





