Episode17 - いける限り
だが行った。
自殺行為?そんなものは今更だ。夜の森、目が慣れてきただけで暗視も無く。徐々に減っていくHPを視界の隅に捉えながらも私は前に進む。
今必要なのは情報だ。
この無人島に何が居るのか。そして、何かが居る事によって森が遺跡化しているのか。それを確かめねばならない。イベントを楽しみ、食を楽しむ為に。
「さぁて、どうなるかな……っと?」
そうして、駆けだした私の耳に1つの音が聞こえてきた。
何かがこちらへと迫ってくる音。巨大な何かが木々を薙ぎ倒しながらも一直線にこちらへと向かってくる音だ。
一体なんだと視線と、種族的な感知を意識して音の聞こえてくる方向へと向けてみれば……そこに居たのは。
巨大な、四本足の蜥蜴の様なモンスターが、勢いよくこちらへと迫ってきていた。
大きさは私よりも一回りは大きく、人1人くらいならば一口で丸呑みに出来るだろう。
……いや、アレ、蜥蜴じゃないな!?
よくよく見れば、暗闇と視界の悪さからそう見えるだけで、蜥蜴なのは形だけだ。
まるでフレームの様に。複数の枯れた植物の繊維によって編まれたその身体。その中心部……蜥蜴の心臓が通常あるであろう場所に、拳大の紅く光る果実の様なモノが在った。
それ以外にも、全身の所々に食虫植物系モンスターの面影らしきものもある。何ならトレントも素材になっているのか、樹皮が鎧の様になっている部位まである始末だ。
「意外と速い……!」
見た目はそのまま植物のゾンビの様なモノ。
そんな蜥蜴は、勢いそのままに私へと向かって突進してこようとして……間一髪、紙一重で避ける事に成功した。
そのタイミングで軽く手で触れ、浅くはあるが皮膚を削るように蜥蜴の身体の繊維を喰らう。
「――」
「ここのモンスター達は声帯とかないのが多いなぁ!そういうのちょっとつまらないぜ?」
避けられた蜥蜴はその場で一回転する事で、繊維で出来た尾を私へと当てようとする。
だが、それに素直に当たってやる様な私ではない。自身の、そして配下からの共有によって強化されたステータスによってその動きの始まりを見て……そして避ける為に上へと跳んだ。
相手の破壊力がどんなものなのかが分からない以上、ここで受け止める、なんて事をする訳にはいかない。
【再誕】はあるが、それは出来るならば『飢餓』の効果によって起動するようにしたいのだ。
「ッ、マジ!?」
しかしながら蜥蜴も蜥蜴で簡単に避けられる事は分かっていたのか。
跳んだ私を狙う様にして、口の中……これまた繊維で出来た舌をカメレオンの様に射出した。ご丁寧に先端を樹皮で硬める事で貫通力を高めている。
……仕方ない……切るか。
空中、逃げ場無し、迫る舌。
私自身に出来る事は既にほぼ無く、出来るだけ被弾箇所を急所以外にするように身体を捻るか、受け止める様に腕、足を交差させて防ぐ事だけ……そう、私だけの力ならば。
「――『イートリスト』解放。対象……【瘴気生成】、【瘴気纏い】」
瞬間、私の身体から溢れ出す紫色の瘴気と、骨の甲冑に纏わりつく様に作られていく紫の装甲。
レストートの2つのスキルを今、ここで解放したのだ。だがそれだけでは終わらない。
舌が私の身体に、骨と瘴気の装甲に命中すると共に周囲の瘴気を固める事で貫通しようとする動きを止めながらも、両手で掴む。
「『イートリスト』解放。対象【粘体分泌】」
『『イートリスト』内のスキル使用回数が上限に達した為、保存領域から削除されました。対象:【粘体分泌】』
ドロソフィルム型モンスターを喰らい、ストックされたスキル【粘体分泌】。
効果は単純、ドロッとした粘り気のある物質……粘体を自身の身体の何処からでも分泌出来るようになるだけのスキルだ。普段であるならば絶対に使わない。使ったとしても……フータの様な罠を設置し獲物を待つタイプのプレイヤーの方が性に合っているスキルだろう。
しかしながら、今のこのタイミングであれば。蜥蜴が舌を引き戻そうとしているタイミングであれば、このスキルは非常に輝く事が出来る。
「ほぉら綱引きしようぜ、蜥蜴くんさァ!」
「――!」
着地、からのすぐさま蜥蜴から距離を取る様に舌を引き地面を蹴る。
蜥蜴も蜥蜴で、舌を戻そうと身体全体で私から離れるように踏ん張った。
それを見て、
「――なーんちゃって」
「!?」
私は瘴気を解き、手を離した。
自分よりも巨大。いくら植物の繊維で出来た身体だとしても、そんな相手と力比べを素直にするつもりは毛頭無い。
梯子を外された蜥蜴は、自身の力も相まってから大きく体勢を崩すとともに背後へと転がっていく。それを見た瞬間、一気に私は距離を詰めた。
……今の力比べでどれくらいパワーあるかは大体理解出来た!
私よりも少し力が強い程度。
強化済みの私よりも強い時点で十分脅威ではあるのだが……それでも。動きが大きく、小回りが効かない相手に負ける訳にはいかない。
「あはッ、繊維だけの身体は流石に味がしなさそうだからさァ……」
詰めた距離。蜥蜴の側面へと回り込み、瞬間的に【ヒットボックス拡張】を口に適用して胴体を喰らいとる。
血は流れない。だが……その奥にある紅く光る果実のような心臓へと口が届くようになる。
ならばこそ。
「それ、美味しそうだよね……イタダキマス」
喰らった。





