Episode16 - 未知なるモノ
可能性の鍵。当然ながら全く知らないワードであり、今このタイミングでそれが解放される意味も分からない。
そう考え、何処かに記載されていないかと森の中を歩きながら、様々なウィンドウを開き確認していると。
「あ」
あった。
現在私が持つスキルの、その進化に関係する条件を書いてあるスペースにそれはあった。
ご丁寧に『可能性の鍵(2/8)』と、残りの必要数までもが書かれている。
……合計8つ。で、現状2……?
ログが流れたのは今さっきが初の筈。それなのに、既に私は2つそれを持っている事になっている。
何がトリガーになったのか。それを考えて……1つの仮説に辿り着いた。
「……もしかして、大罪系スキル?」
私は【暴食】を。そしてセツナは【憤怒】を。
それぞれ名前が異なる大罪系のスキルを持っている。その上で言うならば……私は【憤怒】を獲得は出来ていない。だが、それを持つセツナの肉を、血を、骨を。魂を、存在を摂取した。
相手がプレイヤーである事は一旦置いておいたとして。
もしも、それを理由にこの可能性の鍵とやらを獲得出来ているのならば。
「へぇー……ふぅーん……?」
頬が緩み、口の中からは涎が溢れ出す。
大罪系スキル。それを持つモノを喰らえば獲得出来るのであれば……私にとっては最高の獲得条件だ。
無論、自分で他の大罪系スキルを獲得しても良い。だが……それをするならば、喰らった方が私には合っている。
……それに、この手のスキルって……まぁ誰かが掲示板に載せるよね。ゲットしたら。
今の所、大罪系のスキルについての情報は掲示板にはほぼ載っていない。
理由は簡単だ。
検証組のプレイヤーがまだ獲得出来ていない事。私やセツナの様な、掲示板に書き込むような事をしないプレイヤーが獲得している事。そして、少し調べた所に依れば……大罪系スキルは、NPC達の間では禁忌……ワールドボスに対応しているデバフ4種と似た様な扱いを受けているらしいのだ。
「ま、理由は分かるよね」
私の【暴食】と、セツナの持つ【憤怒】。
それぞれの性質は違うものの、それぞれを使った結果待ち受ける最期を考えれば禁忌指定にもするだろう。
故に、実質プレイヤー達専用のスキルであり。
プレイヤー相手ならば、幾ら好き勝手に喰らったとしても……罪悪感を覚えなくて済む。まぁ元からあまりその手の感情は湧いてこないが。
「……っとと。まぁ今は……進むとしようか!」
陽が落ち始め、【光合成】の回復速度も下がり『飢餓』との釣り合いが取れなくなってきたタイミングで、私は駆け始める。
森の中、【再誕】が起動するまでの少しの間……凡そ、時間にして数分。
出来る限り、今の状態のままで森の中を駆け抜ける為に地面を踏みしめる。
……うん、やっぱり何か食べるってのは重要だねぇ。
少しずつ、食虫植物達を喰らってはいたものの。しっかりとしたモノを喰らうのはこのイベントではセツナが初。
故になのか。私の身体はやっと本調子を取り戻したかのように力を全身に回し始めた。
胃を中心に血が巡り。心臓がそれを全身に届け、足腰が身体を動かして……前へと駆ける。
森の中?視界が悪い?関係ない。骨の甲冑を纏い、駆けていく私の前に普通の木々は障害物にもならなかった。
「あはッ!」
「――!」
「――!?」
「――!!――?!」
そして、障害物にならないのは木だけではない。
道中、私の進路上に立ったモンスター達は、何とか私を止めようと攻撃をしてくるも……その全てがステータス依存で強化される骨の甲冑によって弾かれ。その身体の勢いによって轢かれ、消えていく。
この間にも配下達は狩りを続けているのだ。私自身が食べずとも、強化は続いていくのだから……素の状態でも勝てる相手に足を止める必要は一切ない。
「ッ、っとぉ……?」
それからどれだけ進んだだろうか。
陽が完全に落ち、『飢餓』によるHP減少が進んでいく中。私は一度立ち止まる。
無人島、その森の中。光は無く、周囲の音をスキルで拾い、種族的な感知によって索敵し続けていた私にはここが何処か、どこまで進めたのかは分からない。
しかしながら、感じた。
空気が少しだけ冷たく、そしてどこからの視線を、だ。
……プレイヤー……じゃあないね。PKなんだったらもうちょっと音が鳴るし、存在も感じない。
幾ら最小限の動きで私の事を狙っていたとしても、生きている以上音は鳴る。
種族的な感知にも引っ掛かっていない以上、プレイヤーでもモンスターでもない。
ならば、何か。
「……」
自身のHPを見た。
消費は進み、残り2割。【再誕】は発動していないものの、戦闘するとなれば心許ない残量だ。
それに、それを補える様なモノも……周囲には木々くらいしかない。幾ら私がなんでも喰らえるとは言っても、木々を喰らってまで一時的にHPを確保したいとは思っていない。
……それに……ここら辺。魂が全然ない。
視えない。
木々はある。植物も生えている。
だが、在る筈の魂が……極度に薄く、目を凝らして見なければ分からない程になってしまっていた。
「……ここが中層以降、だとして。居るとしたら……ボス。もしくはそれに準ずる何か、だよねぇ」
視線は外れない。まるで私の事を観察しているかの様なそれ。
何処からの視線かは分からない。分からないが故に、先に進むのを躊躇する。
この先にレストランでもあるならば話は別だ。しかしながら、この先にあるのは今の所闇でしかなく。
何が待つかも分からない状態で行くのは……流石に自殺行為にしかならない。





