Episode14 - 壌土の蛇
「……うわぁ……」
誰かがつい零した言葉。
しかしながら、それはこの場に居るフレデリカと私以外が心の底から絞り出した言葉でもあった。
……まぁ、ここまでなら見せても……というか、見せたとしても対策出来ないからね。コレ。
樹木の魔女、そして彼女の持つスキルを組み合わせた蛇達はトレント達に喰らい付く。
柔らかい土が攻撃力を持つのか?と尤もな疑問が浮かぶかもしれないが……この蛇達に限ってはそれに当てはまらない。勢いがあり、尚且つ根などの植物を身体に混ぜられた形で突っ込んでくるソレらは……蛇の形をした土砂崩れに近い。
故に、
「広域、展開、生成……再展開」
フレデリカが目を瞑り、呟くごとに蛇の数は増えていく。
土を操り、植物を操り、元々はスキルでしか行っていなかったそれを種族的能力でも行う事で更に強固なモノとして。そうして出来上がるのは……崩れても土や植物が在る限り動き続ける兵士だ。
トレント達も始め、一瞬は抵抗出来ていた。
植物系のモンスターらしく、地面に根を張り衝撃に耐えられるようにと受け止めようとしていた。
だが、悪手。フレデリカにとってはこの場の……自身の力が届く範囲にある土、普通の植物全てが武器なのだから。
地面に張ったと思った根は丁寧に掘り起こされ、支えが無くなった所を壌土の蛇達が殺到し、砕き、耕す様にして光の粒子へと変えていく。
どんなに数が居ようと相性差によって覆される。彼らが植物であり、地面に根を張って生きるモノならば……今のフレデリカに対して取れる択は限りなく零に近かった。
「よしよし。大体終わりました」
「うん、御苦労様。……貯まった?」
「はいはい!この辺りの木々と植物、それらの種が集まりましたよ」
「「「……」」」
そうして数分後。
フレデリカを中心に……約300メートル範囲が壌土の蛇によって均されていた。
「いやあの……イヴさん?」
「ん?どしたのリットンちゃん」
「いえ……フレデリカさんって戦闘系の方だったんですか?メントゥム戦からの印象で支援系だと思っていたのですが……」
「んー……」
本人がインベントリ内の整理をしているのを横目に確認しながら、
「いや、支援系で合ってるよ。でも普段はソロで動いてるからね。1つや2つくらい攻撃手段は持ってるさ。……それに」
「それに?」
「単純に、私達モンスターだからね。人間の尺度で語っちゃダメだぜ?」
「……なる、ほど?」
そう。私達は運営側から推奨されているとは言い難いモンスターアバターのプレイヤー。
私が対個に特化したモンスターならば、フレデリカは対多……それも、対象は敵だけでなく味方も含めた広域を対象に相手取れるモンスター。
そんな彼女の得意フィールドとも言える森の中での戦闘だ。
ちょっとした地形の変動くらいは起こせて然るべきだろう。
「さて、皆!呆けてないで消耗品やらの確認!HP減ってる子はちゃんと回復して!今の内にちょっと休憩挟んでから奥に進んでいくよー」
「「「お、応!」」」
「イヴさんイヴさん」
「ん?」
と、ここで。
整理が終わったのか、フレデリカがこちらへと手招きをしながら話しかけてきた。
「変なのでもドロップしてた?」
「いえ、基本的には植物とかだけなんですが……こういうのがドロップしてまして」
そう言って、フレデリカがインベントリから取り出したのは……1つの木で出来た板。
一瞬それを見て何なのか分からなかったものの……その表面を見て、何なのかを理解した。
文字だ。ミミズが這った様な文字。そして……私はそれと似たようなモノをこのゲーム内で見た事があった。
……石板……の木製版か。
私の視線に気が付いたのか、フレデリカが頷いた。
だが、読めない。【旧共通語】を持っている筈の私が読めないという事は、ロレリアの遺跡から見つける事が出来ていた石板とは違う時代、もしくは言語で記されたものだ。
「読める?」
「いえ。ただ、アイテム名が……『無人島雑記2』って名前でして」
「雑記……いや、2の方が問題かぁ」
「ですねですね。ナンバリングされてるって時点でちょっと色々考えないといけないかもです」
私もフレデリカもどちらも読めないソレ。
探索が再開する前にリットンを含めた周りの探索班の面々にも見せてみたが……同様に読めるプレイヤーは居なかった。
特にこの板に書かれた文字を読む為のスキルが解放された訳でもない。
つまるところ……今の所は読めない、もしくは読む必要がないフレーバーアイテムの可能性が高い。
「……掲示板の方でも確認取れました!反対側の探索、戦闘班の中にもドロップしている方がいらっしゃるようです!」
「よし、とりあえずこれからは無人島雑記がドロップした人は報告、数が集まったら1つに集めてみて何か反応があるか確かめよっか」
「ですねですね。それが良いかと。……もしかして、襲撃イベントってこの板を集めやすくする為のイベントだったりするんですかね?」
「ありそう」
太陽はまだ高い位置にある。夜になる前に仮拠点のある砂浜まで戻れればいい。
故に、私達はまだ先へと進む。出来れば……反対側のプレイヤー達と合流できる事を願って。





