Episode10 - 1日目、そして2日目へ
そうこうして、夜。
フレデリカの植物操作や、その他プレイヤー達が力を合わせた結果、仮拠点が完成し年齢が低いであろう者達から順々に休む事になった。
当然、実力者は何があっても良い様にと寝ずの番だ。
私はと言えば、
「フレデリカちゃん」
「なんですなんです……ってうわぁ……」
「へ、へへ……ちょっと、ちょこっとだけ……その、お花だけで良いからさ……」
「ちょ、ダメですよ!今夜なんですから!イヴさんのスキル構成的に今はダメですって!」
ほぼダメになっていた。
普段は絶食すると言っても、長くて数時間。対して、今はほぼ丸1日絶食している事になる。
ゲーム内である為に何も食べなくとも強烈な空腹感を感じる訳ではない。しかしながら、目の前でHPの回復の為に獲られてきた食糧を食べている姿を幾度となく見ると……正直、何でもいいから食べたくはなってくる。
今、周囲のプレイヤー達に手を出していないのが奇跡なくらいだ。
「うぃーっす、死に戻ってきたぞー……ってうわぁ……」
「それもうやったよケントくん」
「うぉい?!こっち来るんじゃねぇよ人喰いモンスターが!?」
「こーらイヴ。とりあえず反対側が集めた情報とかとこっちの情報見比べながらの会議するよー。起きてる人達は巡回組以外は集まってー」
ロートが周囲のプレイヤー達を集めながら、私の身体を動けない様に白い煙で拘束した。
「さて、と。とりあえず掲示板を見てる限りだと……うん、やっぱりイヴの言う通り1日目は準備期間っぽいね」
「それじゃあ明日からが本番って事スか?」
「うん。だからケントくんは探索班から戦闘班に移動。スオウくんはそのまま探索班だね。食糧班の一部も戦闘班に移動で……リソース消費型の子達を先に戦闘させる形にするよ」
「……その心は?」
「あとに回すと、常時強化型の子らが回復、休憩中に戦線が崩れる可能性があるからね」
戦闘スタイルにも私やフレデリカ、フータを見るだけでも多種多様ではあるが……今ロートが言った様に、大きく分けると2種類に分ける事が出来る。
1つは、リソース消費型。
消費アイテムや、スキル毎に設定されたリソースを消費して一時的にではありながら戦闘能力を向上させる戦い方だ。状況判断をしっかりと行わねばリソース不足に陥りやすいという欠点もあるが、安定して高い火力や戦果をもぎ取る事が出来る為、プレイヤーの間では人気な戦い方でもある。身内で言えば、フータがこれに分類される筈だ。
そしてもう1つは常時強化型。
こちらはパッシヴ系スキルや装備によって強化されているアバターの能力を最大限に活かす事を目的とした戦い方。安定した戦いが出来るが絵面が地味になりやすく、あまり初心者達には好まれないものの、継戦能力はリソース型の比ではない為、パーティに1人は欲しい部類だ。ちなみにフレデリカと……一応、変則的ではあるものの、私もこっちに分類される。
「えーっと……ここのメンバーで言うと、ロートちゃんとスオウくんがリソース消費型?」
「だね。スオウくん、どれくらい貯まってる?」
「……一応、雑魚殲滅ならば1時間は戦い続けられるだろう。だがそれ以上は難しい」
「って事は……ボス戦があったら20分くらいで見た方がいいかな。おっけ、じゃあリソース組は私が。常時組はケントくんに指揮は任せるから。絶対イヴにだけは指揮取らせないで」
「あれ?信用が一切ないぞ?あのリアフレ」
周りが苦笑を漏らしているが、まぁ私も大人数の指揮なんてやれる気がしないのでそれはそれでいい。
とは言え、
「寝てるメンバーが多い時間は、それぞれ起きてるメンバーでなんとかする、でいいんだよね?」
「そうだね……私は別に3日くらいだったら寝なくてもいいけど……ケントくんは流石にキツイでしょ?」
視線の先、ケントが絶対に嫌だと言った風に頭を縦に振るのを見て少し笑いながら。
「ま、流石にすぐに襲撃が来るとは思わないけどね!」
―――――
「で、なんだっけ?すぐに襲撃が来るとは思わない、だっけ?」
「ごめんじゃん!フラグになるとは思ってなかったんだって!」
2日目、朝。
まだ陽も昇り切っていないというのに、仮拠点の周辺は喧噪に溢れていた。
「ハエトリグサ達追加来るぞ!」
「でっけぇウツボカズラまで来てる!耐えろ耐えろ!他の奴らが起きてくるまで耐えれば何とかなるッ!」
現状、私達の仮拠点を襲っているのは食虫植物達の群れ。
ハエトリグサ達を中心に、時折巨大なウツボカズラ型のモンスターまでもが森からこちらへと襲撃を仕掛けてきたのだ。
丁度、私とロートは寝ずの番をしていた所だった為に応戦が出来ているものの、朝早い時間と言う事もあってそもそも参戦出来るプレイヤーの絶対数が少なすぎる。
……喰っても良い。ただ……。
まだ陽が完全に昇っていない。それはつまり、【光合成】による回復が十全ではないと言う事だ。
「……ま、考えても仕方ないか。ロートちゃん!」
「はいはい!?」
「ちょっとだけ本気出す!」
言って、近くまで来ていたハエトリグサを弾き飛ばした後。
私は数いるウツボカズラの内の1体へと一気に近づいて、
「イタダキマス」
「――ッ!?」
このイベントで初めてモノに喰らいついた。





