Episode5 - イベント開始日
そんなこんなで、2週間。
劇的な変化も、スキルの構成が変わる事もなく私達はイベント開催当日を迎えた。
「私はあんまり変わってないけど……2人は何か準備したの?フレデリカちゃんは……なんかお花増えた?」
「はいはい!増えました!」
すこし見ない間に、彼女の頭には複数の小さなピンクの花が生えていた。
5枚の花弁がプロペラの様になっている姿は……何処かで見たような記憶がある。
「現実にあるキョウチクトウみたいなお花です。性質も似たようなモノで、イヴさん達がタラッセイアで貰ってきてくれた潮風に強い植物の1つですね」
「あぁー、オイラーくんがくれた奴か」
あまり興味がなかった為に、内容も特に確認していなかったのだが……役に立っていたようで何よりだ。
そして、フータはかと言えば。
「俺は別に変わってないな。【罠生成】のレベルを上げたくらいだ」
「だろうね。でもなんか……今も罠展開してたりする?もやもやぁっと感じるんだけど」
「ちょっとした罠だな。今、この遺跡の一部の部屋は俺の罠で動かしてるからなぁ」
「あぁ、最近遺跡の中に装備とかを作る部屋が出来たんだっけ?」
「人狐達に頼まれてな。そこで使ってる設備を動かすのに使ってるんだ」
「便利だねぇ……罠の使い方としてはちょっとどうなのかって感じだけども」
現在、ダキニの遺跡は正直言えば良く言うダンジョンからはかけ離れている。
広さもそうだが、その中に設置された設備によって生活の質を向上させていっているのだ。
一番最近追加された装備部屋に始まり、ちょっとした薬などの研究を行う研究部屋。フレデリカの農園と植物園に、まだ一度も稼働しているのを見た事がない食堂の様な部屋。
他にもパッと見では使い方がよく分からない部屋が次々に設置されていっている。
『使えるモノは使う。それが一番じゃろ』
「ダキニちゃん。見送り?」
『阿呆。汝らが廊下で突っ立っとるだけじゃ。まぁまた奇祭じゃろ?死なんとは思うが楽しんでくると良い』
「うん。そっちも私達が居ない間はちゃんと戸締りするんだよ?」
『妾は童か何かか』
と、ここで。
私達の身体が光の粒子によって包まれていく。時間を見ればイベントの開始時間だ。
「じゃ、行ってきます」
私の言葉に、ダキニは軽く息を吐きながらも手を振って応じてくれた。
―――――
視界が切り替わる。
どうやら無人島に直接送られた訳ではなく、巨大な木製の船の甲板の上に私達を含めた複数のプレイヤー達が集められているようだ。
とは言え。
「まだ装備はそのままみたいだね。……よくある転覆からの遭難パターン?」
「ですねですね。……潮風とかには対応してるんですけど、私生き残れるんでしょうか……」
「植物には辛いわな、海の中は」
近くに居たからか、傍に居たいつもの面々と話しながら待っていると。
『んんっ、テステス。オーケー?……よし!はーいプレイヤーのみなさーん!お久しぶりですお久しぶりです!今回もイベントの進行を務めます、運営の佐渡でーす。よろしくよろしく!』
空中に白衣の女性が出現した。
前回のイベントの時も司会をしていた佐渡だ。
『はい、という訳で今回のイベント『ドキッ★真夏の無人島でサバイバル?夢の1週間を生き残れ!』がこれから始まる訳ですが……この後、この船が突然転覆、その後に無人島に辿り着くって寸法です!一応そういう演出が苦手だよって方は今手元にウィンドウ出すので、設定してくれれば演出上の待ち時間の後に無人島に転移って形に出来まーす!あ、モンスターアバターには海が苦手な方もいらっしゃると思いますがご安心を!イベント処理なのでこれが原因でHPが0になる事はありません!全員同じく1割まで減るだけです!』
「さらっと言ってるけど、それなりに酷い事言ってるよね?」
「言ってますね言ってますね。1割まで減るんですか」
「高HP維持型のプレイヤー涙目だろうな」
ちなみに言えば、私は【背水の陣】が。他の2人は別段HPに関係しないスキルでまとめている為、1割まで減った所で戦力が減る事はない。寧ろ強化されるまであるだろう。
『……設定は終わったかな?終わりましたね!ではでは!皆様、良き7日間を!』
「お、おい見ろアレ!めちゃくちゃデケェ波だ!」
「何なら目の前には氷山まで出てきたぞ!?」
「こっちは台風……じゃねぇ!?サメが大量に飛んでやがるじゃねぇかよ!?何処の映画だ運営!!」
周囲のプレイヤー達のツッコミが聞こえると共に、四方八方から船を転覆……と言うよりは全破壊させる様な災害が迫ってきていた。
何人かが出来る限りの被害を抑えようとしているものの……ある種の演出だから意味はないだろう。
何なら既に船から海に飛び込む事で演出自体をスキップしようとしている猛者まで現れている始末だ。
「じゃ、2人共。向こうで合流するのを最初の目的にしよっか」
「了解了解です」
「おう、俺らが合流するまで変なモノ拾い食いするなよ?」
「私そんな我慢できなさそうかな?」
「「……」」
「ここで沈黙は辛いなぁ」
そんな事を話していれば。
船の耐久もそろそろ限界になったようで。崩れていくと共に、プレイヤー達も海へと落ちていく。
私達の立っていた場所も崩れ始め、波に攫われ……意識を失ったかのように視界が暗転した。
少しの待機時間。その後、ゆっくりと目を開くように視界が色を取り戻していく。
「……おぉー……無人島らしい無人島だぁ……」
高い位置にある太陽。
白い砂浜。
よく分からない種類の木々。
無人島の砂浜に、私は辿り着いていた。





