Episode13 - 仕方のない事
前日5話分更新してるのでお気をつけて
レストートが消えていく中、私は急ぎ駆ける。
この場に居ても良い事は1つとして無いと確信しているからだ。
故に、強化されたままのステータスを駆使して、やり切ったという顔を浮かべながら周囲のプレイヤー達と盛り上がっていたフータを素早く回収し、港の方へと向かう。
「ん!?イヴ姉ちゃん!?」
「良いから!早くしないとまずい……!」
「はぁ?レストートは倒しただろ?何がまずいんだよ」
「まずいんだよ!レストートは確かに討伐できた。でも、あの場には私達プレイヤー以外も居たでしょ!?」
「プレイヤー以外……あっ!?」
そう、あの場には私達とレストート以外の勢力が居た。
タラッセイアの軍人達だ。
武装船からの焼夷弾は確かに蛇を蹴散らすのには役に立っていた。そして、陸地を進んでいた警ら隊達はプレイヤー達に混じってレストートへの攻撃を仕掛けてもいた。
確かに彼等が居たからこそ生まれた隙や、ダメージもあっただろう。
だが、私が言いたいのはそれではない。
彼等が居た事自体が問題なのだ。
「オイラーくんを探さないと……」
港から、タラッセイアの船団へ。
一瞬私達を見て、警備に立っていた軍人達が止めようとするが、ここ数日で顔見知りになっていた為に止められず。
いつもオイラーに報告をする為に使っていた飲み屋の様な店の近くまで駆け抜けると。
「居た!」
「ん?……おぉ!イヴの姐さん!」
店の前にオイラーと……彼にあやされるようにして、少しばかり不貞腐れた様子のレイナが立っていた。
彼は私達に気が付くと、少し焦った様な雰囲気を醸し出しながら、
「大変でさぁ!砂浜の方に、巨大なモンスターが現れたそうで!」
「知ってる!もう倒した!……で、そっちはどういう状況かだけ教えてもらって良い?」
私の言葉に、彼の雰囲気が、周囲に流れる空気が変わる。
一気に冷えた様に。こちらを案じるモノから、値踏みする様に。
「……タラッセイアは、今後在野の冒険者に支援をしない事を決定しました」
「……」
「警らから俺達軍へ、そして政府へ。今回の出来事が伝わった結果です。……すいやせん」
「オイラーくんが謝ることじゃないでしょ。それに私達が困る事でもない」
「ははっ……確かにイヴの姐さんとフータ坊はモンスターですもんね。で、ここから先の話をしよう」
「ですね」
お互いに立ったまま。
しかしながら、レイナはオイラーの陰に隠れる様にしながらも、以前出会った時とは違い警戒した視線をこちらへと向けてきていた。
彼女の身体からは……複数の、生物ではない物を隠し持っている様な感覚が発せられている。
……これ、魂喰いの魂感知みたいなものか。
まだ存在喰いになって時間が経っていない為に、その感覚に慣れていない。
故に、今感じたモノについては置いておいて。
「私達は早めに……それこそ、この後タラッセイアを出る事にするよ。ちょっと目立っちゃったからね。国がそういう決定をしたなら、私達は居ない方がいい」
「でしょうな。元よりいつでも渡せる様に、報酬はここに」
「おっ、有難いよ。助かる」
オイラーが懐から取り出した小さな木の箱。
私は使った事はないが、プレイヤーもNPCもが使うインベントリの様な機能をもつ、所謂アイテムボックスだ。
それを受け取ろうとして……オイラーが少しだけ手を引く事で、こちらが箱を取れない様にした。
どういうつもりだ、と視線を投げてみれば。
「すいやせん。1つだけ聞いておきたいことがあるんでさぁ」
「……何かな?必要な事?」
「必要です。特に……オレらは軍人。国に所属する者だ。だからこそ、確かめないといけない」
一息。
真剣な眼差しを向けるオイラーが言葉を発そうとした瞬間、彼の陰に隠れていたレイナがこちらを見上げながらも、
「お姉ちゃん、厄災指定になっちゃったの?」
「厄……なんだって?」
そう言った。
厄災指定。聞き馴染みのない言葉だ。
だが、このタイミングで聞いてくるのならば……彼女達と出会った時と今で決定的に違う点は1つしかない。
「厄災指定。オレらタラッセイアと、他3国が決めた、一定値以上の危険度を持つモンスターの区分でさぁ。厄災指定のモンスターを発見した場合、国を挙げて……なんて次元ではなく、周辺国家含めて、討伐する為に軍を派遣しやす。……で、イヴの姐さんは……そんなバケモノになっちまったのか、と聞きたいんです」
「あー……成程……」
恐らく、私が存在喰いになったタイミングで、各国のある程度の役職を持ったNPCなどに通知が行ったのだろう。
そして、目の前の2人はそれが状況的にも私である事を確信している。
だが、その上で。どうかを確かめた上で……約束を反故にしまいとしてくれているのだ。
「うん、そうだよ。私は存在喰いに成った。多分君達の言う厄災指定になったんだと思う」
「そう、ですか。――総員!厄災指定を発見!オレが足止めを行う!出来る限りの準備をしてから増援に来い!」
オイラーが叫び、手に持っていた箱をその場から私達の方に向けて転がす様に落とした。
その行動の意味を悟り、軽く笑みを浮かべて頭を下げてから。
「ありがとう。……逃げるよフータくん!」
「あぁ、もう!もうちょいゆっくり出来ると思ったんだがなぁ!?」
「対象、現場から逃走!追え!追え!……すいやせん、イヴの姐さん、フータ坊」
背後から聞こえる声に、フータを背に乗せながら振り返らずに片手を挙げる事で返して。
またも駆けるようにその場から離れる事に注力する。
……ま、こうなるよね。今回の事は。
私が考えるのは、厄災指定というよく分からないモノではなく。今回のタラッセイアの決定についてだ。
今回のレストートの復活。そして、それを討伐するまでの流れ。
私やサムライ、フータ、それ以外にもレストートの瘴気から生まれる蛇や、後半に出現した蛭などを処理出来る者達が居たからこそ被害はほぼ零に抑えられていたものの……これらのどれか1つでも欠けた状態で戦闘が開始していたら港だけでなく、タラッセイアの船団も無事では済まなかっただろう。
タラッセイアとしてはレストートを討伐してくれた事に関しては感謝したいのだろうが、元となるソレを復活させた私達プレイヤーを許すつもりもない。だからこその、支援の停止。関わっていない者からすれば誰かが起こした問題に巻き込まれてさぞ迷惑な事だろう。
「監視船に引っ掛かった!こっちだ!」
「魔導銃を使っても良い!だが奴が港に逃げたら使うなよ!関係のない者達が巻き込まれる可能性がある!」
「港に逃げられてしまえば、流石の俺達でも今の状況だと逃げられちまうなー!くっそぉー!絶対港まで行かせるんじゃねぇぞー!」
「……あは」
背後から聞こえてくる声に、思わず笑みを零してしまう。
どれもこの数日で仲良くなった者達の声だ。私が耳が良いのを知っていて、それでも尚、大声でその内容を言ってくれている。
心の中で頭を下げつつ、私は聞いた通りに港の方へと逃げていく。
途中、警ら隊と思われる者達が私の前に立ちはだかったが……今の私を止められる筈もなく。
船団から跳び出し、空中で振り返る様に回転しながら、
「楽しかったぜ、タラッセイア!また会おう、オイラーくん!レイナちゃん!」
そう言って、港へと着地してまた駆けていく。
「しっかし、色々と濃い数日間だったな」
「だねぇ。まぁ目的のモノは手に入ったし……良いんじゃない?」
「それもそうだな。……で、後どれくらい保つんだ?」
「……まぁ5分。だからそれまでに……遺跡を探すよ!攻略されてなかったら攻略まで!」
「だぁもう!締まらねぇなぁ!?」
色々と考える事も、これから起きるかもしれない事もあるだろう。
だが、それらよりも先。今も尚、私の身体を蝕んでいる『飢餓』によって死ぬ前に、宿を探す事にしよう。
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プレイヤー:イヴ
合計スキルレベル:71
戦闘カテゴリレベル:29
保有スキル:【噛みつき】Lv5、【捕食】Lv5、【カニバリズム】Lv2、【部位破壊】Lv2、【ヒットボックス拡張】Lv5、【魂喰い】Lv5、【背水の陣】Lv1、【座標攻撃】LV1、【暴食】Lv1、【再誕】Lv1、【存在喰い】Lv1
探索カテゴリレベル:2
保有スキル:【地獄耳】Lv1、【影法師】Lv1
その他カテゴリレベル:40
保有スキル:【恐怖耐性】Lv2、【口腔生成】Lv5、【多産】Lv5、【配下指示】Lv5、【主従共有】Lv5、【バフチェイン】Lv5、【旧共通語】Lv1、【狂気耐性】Lv2、【骨鎧生成】Lv3、【光合成】Lv1、【霊体化】Lv1、【魂視】Lv1、【尊き身体】Lv1、【防御増加】Lv1、【麻痺耐性】Lv1、【萎縮耐性】Lv1
『イートリスト』:『忌夜狩獣 レストート』
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