Episode12 - VS『忌夜狩獣 レストート』5
本日5話更新
5話目、明日からは普段通りです
『特殊存在昇華を開始します……行動ログ精査開始。種族『魂喰い』確認。……保有スキル精査開始。スキル【捕食】、【噛みつき】、【魂喰い】の組み合わせ保有を確認、昇華ポイントを加算します……スキル【暴食】の保有を確認、昇華ポイントを加算します……捕食及び食魂量の限界超過を確認、昇華ポイントを加算します……ワールドボス『拷掠審獣 メントゥム』並びに『忌夜狩獣 レストート』との遭遇、その肉体及び魂の捕食歴を確認、昇華ポイントを加算します……精査完了』
一息。
『存在昇華先の種族を選択する事は出来ません』
『特殊存在昇華『存在喰い』への存在昇華を開始します』
私の視界が徐々に変わっていく。
これまでは魂が視えていたそれが、魂だけでなく……何か、違うモノが見える様に成っていく。
周囲の全てのモノ、私の指先全てに格子状の線が薄っすらと見えるようになり。
その上で、私の髪は毛先とインナーカラーだけが白く染まっていく。それ以外にも、軽くではあるが透けていた筈の足が透けなくなっている。だが、自分で把握できる変化はそれだけだ。
『存在昇華が終了しました。スキルのリビルドが可能です』
『存在昇華に伴い、【存在視】が獲得可能になりました』
『『存在喰い』への存在昇華の影響で、スキル【存在喰い】を自動取得しました』
『4次種族へと存在昇華をした影響で、一部スキルの上限を撤廃しました』
スキルのリビルドについては保留して。
私は少しだけ成ったモノに対して考えようとして……やめた。
存在昇華の影響なのか、私の腹は先程までと打って変わって音が鳴る程減っていた。それに加え、『飢餓』を始めとした捕食によって付与されるバフデバフ全てが消えているのだ。
そして、ここはレストートの胴体、そこに喰らい掘る事で出来た穴の中。つまりは……食糧が大量にある場所だ。
「兎にも角にも……腹ごしらえからやっていこうか!」
考えるのは喰らった後で良い。
一口、ゆっくりとレストートの肉を喰らう。すると、だ。
【捕食】を始めとした、喰らう事で効果を発揮するスキル達が一斉にログに流れると共に、
『【存在喰い】が発動しました。捕食対象の存在を喰らい、ステータスを強化しました』
『【存在喰い】によってバフ『イートリスト』が付与されました』
『【存在喰い】が発動しました。捕食対象の存在を喰らい、スキル【瘴気生成】並びにスキル【瘴気纏い】が使用可能となりました。『イートリスト』より適用の可否が可能です』
胃を中心に、私の身体に熱い力が駆け巡る。
瞬間、身体から溢れ出したのは……レストートの纏っていた瘴気と同様のモノだ。
少しだけ目を見開きながらも、私はそれを手足の様に操っていく。使い方は……何故か、既に知っている。頭の中に直接叩き込まれた様な、そんな鈍痛を抱えながらも手に、足に、白い骨の甲冑に。その全てに瘴気を纏い……私は更に肉を喰らう。
一口喰らえば、レストートが痺れたように跳ね。
二口喰らえば、掛かる筈がない『恐怖』に侵され。
三口目には、レストートのヘイトは胴体の穴の中に居る私に完全に向いていた。
だが……レストートは私に思ったように攻撃出来ない。周囲のプレイヤーが邪魔をしている訳でも、修羅と成ったサムライが暴れているからでもない。
『恐怖』。自身が周囲に与え続けていた筈のそのデバフによって、今レストートは震え、力が入らず、狙いをまともに付けられない。
「んっはぁ……!良いね、凄く良いや!流石にここまで来るとプレイヤーも割と反則レベルの性能になってくるわけだ!」
私は嗤い、更に喰らう。
HPの減り方はそこまで多くはない。寧ろ……少しずつ回復している様にも見える。だが、それは間違いだ。確実に減っている。ではどうしてそう見えるのか?
私が喰らうのに合わせて、レストートのHPの上限が減っているのだ。
上限が減れば、その分だけ現状のHPが最大値へと近付いて増えているように見えてしまう。
存在を喰らう者。一口毎に相手を喰らい、そして強化されていく化け物。それが私が成ってしまった者なのだろう。
詳しく性能を確認していけば、そして得られるようになったスキルを得ていけばまた違う戦い方も出来るのだろうが……今は喰らう事に集中させてもらうとしよう。
『――ぁあ!?』
「肉ではあるはずなのに、本当に白身魚みたいだね。美味しいなぁ」
『ぅる!るるる!!』
「んー、だからこそ残念だ。ムニエルとかフライとか、合いそうな料理が沢山あるのに……私はその手の技術をまだ持ってない。なんなら火さえ扱えないからね」
『るぅあッ!ぁああ!』
「あぁ、でも。刺身とかも良いかもなぁ。丁度ここ港だし?その手の調味料も……確かオイラーくん達と食事した時にあった様な覚えあるし。……ちょっとだけ持って帰れるかな?」
『……ぁ、るぅ……!』
喰らいながら進んでいく。今までは横に下に掘り進めていたものを、横に。
肉の中を進んでいく様にして、喰らっていけば……気が付けば、てらてらと赤黒く血で濡れた内臓に辿り着き、それも喰らう。
味わいが変わり、濃い血の味と内臓特有の苦み、そしてその奥のこれまでの白身魚の様な味の肉とは違った、しっかりとした肉の旨味。それらを容赦なく喰らい尽くして。
味変として肉と一緒に喰らう為、無理矢理に引き千切って穴を喰らい掘るのを再開すれば、
「……おっと、見つけちゃったねぇ」
私と同じくらいの大きさの、今も速く鼓動するレストートの心臓を見つける事が出来た。
「いやまぁ?もうHPもほぼ無いみたいだし?」
レストートは今も尚、動き回っている。
自身のHPの減少も厭わず、瘴気を固めて作り出した剣や槍を身体に差し込む事で私を攻撃しようとしていた。だが、今の私にそれは悪手どころの騒ぎではない。
肉を貫き、私の身体に届きそうになるそれらは少し手前で糸が解けるように形が維持出来なくなり、身体に纏う瘴気に吸収されていく。
激しい揺れは、骨の甲冑の形状を変える事でスパイクの様にして身体を支え。
瘴気による攻撃は全て吸収して。その上で出現する取り巻きの蛇や蛭達は私に対してほぼ無力。
既に、レストートは詰んでいる。
「魂も沢山食べたし、まだあんまりよく分かってないけど君の存在?も結構食べたからさァ」
レストートの最大HPは今ではそこらの遺跡のボス程度まで減ってしまっている。
私が喰らい、私の糧にして。その上で更に今も文字通りの手隙に周囲の肉を喰らい続けているのだ。私の様なHPを外付けで増やすスキルを持っていない限りは……このまま喰らい続けているだけで、外のプレイヤー達によって討伐する事が出来るだろう。
だが、そうなってしまったら目の前の宝石の様な心臓の味を確かめる事が出来ない。
メントゥムの時は肉以外を喰らう事が出来ていないのだ。こうして今、味わう事が出来るのであれば……その機会を逃す訳にはいかない。仮にも私は、この手の食材も喰らう為に今ここに居るのだから。
「それでは――イタダキマス」
ゆっくりと手を鼓動する心臓に触れ、軽く口付けをしてから……歯を立てた。
柔らかい。しかしながら、何処か軟骨の様な食感を感じながらも噛み千切る。
瞬間、口の中に溢れるのは濃い血の味だ。噴き出した血で全身が濡れていくのを感じながらも、私は喰らう口を、身体の動きを止めない。
本来であれば血抜きをしっかりとして、その上で火を入れた方が良いのだろうが……それをしないからこその味。僅かに感じる脂の甘味。肉に近い味も感じるが非常に薄く、固体となった血を喰らっているような感覚だった。
『『忌夜狩獣 レストート』が討伐されました』
『ワールドボスが討伐されました。参戦プレイヤーに対し、報酬が分配されます』
『『忌夜狩獣 レストート』との再戦用コンソールが設置されました。今後、特殊フィールドにて『忌夜狩獣 レストート』との再戦を行う事が可能です』
『ワールドボスの討伐数が一定数に達しました。世界レベルが上昇します。――皆様、良きプレイ体験を』





