Episode10 - VS『忌夜狩獣 レストート』3
本日5話更新
3話目
「斬る斬る斬るキルッ!」
「あははッ、邪魔な子達は糧にするからねッ!寝っ転がってる自分を恨みなよッ!!」
サムライは私と違って全方位を感知出来る様なスキルは持っていない様だ。だが、しかしながら。
背中から生やした光る腕、そして自前の2本の腕で扱う4本の刀で、周囲から迫る槍を、蛇を、そしてレストート自身の突進や尾による攻撃を捌き、着実にダメージを与えていっている。
相手がワールドボスだからか、その量自体は数値にすると非常に少ないだろう。でも、それでいい。塵は積って山となる。小さなダメージでも、積み重なれば首に届くのだ。
それに……サムライが斬れば斬る程に、彼女の身体からは赤黒いオーラが少しずつ発され始めていた。
……テンション上げていくしかないねッ!
私はそんなサムライに続く様にして、足裏を露出させて砂浜を駆ける。
レストートに近付く為でもあり、私がここから本気で戦う為だ。
今も、蝮の近くには蛇に倒される事なく『恐怖』によって転がっているプレイヤーはわんさかいる。……そう、私の餌が、人間が沢山いるのだ。
足裏に生成した口で、プレイヤー達を踏みつけると同時に喰らう。わざと跳び、プレイヤーからプレイヤーへと着地する様にして、彼らの身体と魂を喰らってスキルを発動させていく。
『【捕食】が発動しました。バフ『全ステータス強化』が付与されました』
『【魂喰い】が発動しました。全ステータスを一時的に強化しました』
『【カニバリズム】が発動しました。一定時間『全ステータス強化』並びに『視野狭窄』が付与されました』
これまで以上の力が、熱が、私の身体の内側に籠り発散されていく。
喰らい、進み。喰らって、目の前。
レストートとサムライの戦いの中に、今私も飛び込んだ。
「ッ、はぁ!」
サムライの様な武器も、蝮の様な巨大な身体も持たない私は原始的な戦いしかする事が出来ない。
両手を、口を。その両方を突き出すように跳び掛かり、その胴体へと危なっかしくも到達し、噛みつく事で張り付いて。
「――フータくん、後頼むぜ」
「任されたァッ!見てろ見てろよ!?知恵がある動物が獲物を捕る時に使うもんはなんだって話だ!そりゃあ――罠だろうがッ!」
『ぅるぁ!?!』
喰らい始めると同時。
私の背、骨の甲冑によって包まれ運ばれていたフータが飛び出して。蝮の胴へと着地し、少しだけバランスを崩しながらも……彼は両手を胴へと付けながら大量の道具を周囲に展開していく。
虚空からは巨大な蝮を捕える為の金属製の糸が。
周囲には蝮の行動を制限する為の何枚もの壁が。
私達を丸呑みに出来ない様に、口には何重もの巨大なベルトが巻き付けられて開かない様に。
そして、彼の口の近くには拡声器の様な形状のアイテムが出現し、
『聞け!こいつは遠距離攻撃を無力化するスキルを持ってる!近接攻撃主体で攻撃しろッ!それが出来ねぇんだったら近接職のフォローに回りやがれ!』
叫ぶ。砂浜に広がる声の波紋。
近くにいた私は思わず耳を覆おうとして、仕方ないと受け入れて。
サムライは一瞬だけフータへと赤黒く染まった瞳を向けたものの、動きの制限されたレストートを斬り刻む腕を止めなかった。
だが、彼の声の影響はすぐさま現れる。
「っ、聞いたか!前衛職、行ってこいッ!」
「ちいせぇ蛇は任せろ、撃ち抜いてやる!」
「3人だけでワールドボスを狩ろうとか、そんな楽しそうな事任せられっかよォ!」
「『恐怖』への耐性向上バフ付けられるから、レベル低かったり持ってない人はこっちに来て!早く!」
プレイヤー達がすぐに連携を開始した。元は討伐するつもりで集まっていたのだ、その辺りの即席の連携ならば出来るのだろう。致命的な部分の準備が足りていなかっただけで。
そして、それ以外にも動きはあった。
声を出したフータへと向けて、何本もの矢や炎、氷、稲妻といった攻撃が飛んできたのだ。
レストートの攻撃ではない。明らかに人に依る攻撃……しかしながら、これはタラッセイアからのモノでもない。……妨害派だ。
レストートの攻略上必須となるであろう情報や、その身体を今も拘束し続けている彼を狙う。
やられてしまえば士気が下がるのは確実だろうし、今も拘束され怒り始めているレストートが大暴れするのは避けられないだろう。だが、もう少し人の……ボギーの話はきちんと聞いた方が良い。
彼の居る場所はレストートの胴体の上。そしてレストートには遠距離攻撃の一切を無力化するスキルが備わっている。
故に、飛来したその全てがレストートから少しばかり離れた位置で透明な壁にぶつかるようにして掻き消えていった。
「やるねぇ、フータくん。そういうの好きなんだ?」
「っるせぇ!あんまやりたくないんだよ、こういうの。目立つじゃねぇか」
「十分拘束だけでも目立ってるけどね?」
喰らいながら。
胴体から掘り進めるようにしながら、私は自身の力を高めていく。
硬く、それでいて柔軟性のある鱗を噛み砕き。
その下にある白く脂の乗った肉を一口、口の中へと含む。感じるのは白身魚の様な濃い旨味と共に……非常に多い骨だ。だが、それも私にとっては良いアクセントとなって楽しめる。
バリボリと、レストートの血で顔と手を染めながら更に喰らう。
ダメージ自体はそこまでではないのだろう。瘴気による槍はその大部分がサムライと……次第に増えてきた『恐怖』に耐性を持っている前衛のプレイヤー達へと向けられており、こちらにはほぼ飛んでこない。
時折、瘴気から蛇が産まれ私へと迫ってくるが……それも、近くに控えるフータの罠に掛かって何処かへと消えていく。
そうなれば、後は私が喰らい続けるだけ。巨大な肉を、見上げる程の魂を。狂った様に、食欲の征くままに……この先の事なんて何も考えず、ただ欲望に従って腹に収めていくのみだ。
「あは、蝮って食べた事はなかったんだよ」
そも、蝮には寄生虫がいるとされている。それも人間に感染する類のものが、だ。
そんな生物の生食なんて、現実では出来る筈もない。流石の私も一晩考えたがやらなかった。
だが、今はKFOというゲームの世界。もしも寄生虫が居ようが……私には関係がない。私の口の中に入ってきたのだ。魂を喰らい、肉を喰らい、力と変える私の口の中に入ってきて……寄生なんて事が出来る筈もない。
だから喰らう。
肉や血には毒はない。リアルと同じならば牙……既にフータが封じた口にさえ攻撃されなければ問題が無い筈だ。
故に喰らう。食い進める。近くにいるフータが滝の様に汗を流しながらも、目や鼻、耳からも血を流しているのを視界の端に捉えながらも、私はしっかりと味わいながらレストートの身体を掘っていく。





