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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第10章 後の海岸事変編

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Episode9 - VS『忌夜狩獣 レストート』2

本日5話更新

2話目


『ぃるるぅ!?』

「何で?!」

「言ってる場合か!来るぞ!」

「分かってるよッ!」


 何故命中したかは分からない。だが、今の一撃でHPを僅かに削る事が出来たからか……レストートの紅い瞳が私達を捉えた。

 砂浜を転がりながら、次にどう攻撃するかを頭の中で考えていると。

 瞬間、周囲の瘴気が集まり渦を巻き……次第にそれは槍状になっていく。


『『忌夜狩獣 レストート』との戦闘を開始します:参加プレイヤー数72』

「やばっ!?」


 その光景に危機感を覚えた私はすぐさま体勢を立て直し、その場から慌てて跳び退いた。

 次の瞬間、私が居た場所に何本もの瘴気の槍が殺到する。

……瘴気の固形化!それにやっぱり操れるのかアレ……!厄介度が跳ね上がったんだけど!?

 恐らく瘴気の『恐怖』を付与する効果自体は失われていないだろう。その上で、槍状のそれを被弾でもしてしまえば……最悪耐性すら貫通して付与してくる可能性だってある。

 レストートは自身へと攻撃してきた私に意識を集中しているのか、周囲の瘴気全てが槍状に変わっていく。そこから始まるのは、私を中心とした槍が雨の様に降る別の地獄だ。

 避ける事自体は簡単だ。別にそれは音速を越えている訳でもなく、速度自体も……今も配下から共有されてくるバフによって強化されていく私にとっては、フータの罠よりも遅く見えている。

 だが問題はそれの密度。

 半身に度々なりながら、触れて良いか分からないモノを砕けず避け続けるのは精神的にも肉体的に疲れが溜まっていく。

 今はまだ強化された身体能力によって無理矢理に避けているものの……それもいつまで続くか分からない。


「ッ、ふぅー……」


 避ける。

 真横から迫ってくる槍を半身になりながら、背中側から迫ってきていた槍をバク転する事で回避して。

 更に真上から降ってくる無数の槍を、着地と共にその場で踊る様にしながら槍の隙間へと身体をねじ込んでいく。


「イヴ姉ちゃん」

「黙って。今は」


 避ける。

 次第に密度どころかタイミングすらも合わせてきている槍を、動きをコンパクトに抑える事で避けていく。

 だが、流石に人間とほぼ変わらない構造をしている私の身体では避けるのにも限界はある。

 今はまだレストートが気が付いていないのか、それほど頭が回らないのか。全方向から同時着弾、なんて事をされない限りはまだ避けられる。

 だが、それも私の集中力が続くならばの話だ。

……キツイな。

 レストートのヘイトが私にしか向いていないのが問題だ。

 ダメージを与えられたのが私だけなのもあってか、レストートの瞳は私しか映しておらず、他の攻撃に関してはそもそも謎の無効化で効いてすらいない。私が向こうの立場であっても、ダメージを与えてきた相手を最優先で倒そうとするだろうし、間違っちゃあいない。


「後ろッ!」

「……ッ!」


 限界が来た。

 一瞬の集中の途切れ。その隙に、背後から飛来してきていた槍の音を聞き逃してしまいフータの声で気が付いて。

 走馬灯の様にゆっくりと、近付いてくる槍の穂先が見える中。

 出来るだけ被害が少なくなるようにと左腕を犠牲にしようとして、


「――むん、邪魔をするでゴザル」

「は?」


 風が来た。

 私へと迫ってきていた槍を、横から突然吹いた風が叩き折ったのだ。……否、それは風ではない。

 人だ。人間だ。人間特有の匂いが私の鼻をくすぐり、口の中に涎が分泌されていくのを感じながら、その姿を見る。

……さ、サムライだ……侍じゃなく、外国人がイメージするタイプのやつだ……!

 そこにはサムライがいた。

 今も私達へと迫ってきている槍を、全く見ずに片手を動かし続ける事で砕きながら。

 金髪をポニーテールの様にまとめ、所々にフリルの様なモノが付いた和装らしきものを着た女性。腰ではなく、肩から刀の鞘を提げた彼女は群青の瞳をこちらへと向け、私の姿を見て軽く笑う。


「ここは拙者に任せるがいいでゴザル」

「いや、え?」

「いざ、参る」


 サムライは一度腕の動きを止め、握っていたらしき刀を鞘へと無理矢理に納めた後。

 一息。

 今の私にも見えない速度で鞘から刀を解き放ち……迫りくる槍全てを斬り砕いた。


「……えぇー……」

「なん、この何?イヴ姉ちゃんの知り合い?」

「いや、あんなイロモノと知り合いにしないでよ」


 完全に集中力が切れ、背中のフータに返答していると。

 そのサムライは既に動き出していた。


「モノノケの類、拙者が断ち斬ってやろう」


 今の私よりも速い動き。コマ落ちしたかのように一瞬でレストートの目の前、側面へと辿り着き。

 上段へと構えていた刀を振り下ろした。


『!?!?』

「うそぉ……」


 斬った。両断までは至ってはいないものの、鱗を断ちその下の肉を浅く斬ったようだった。

 血が噴き出すと共に、レストートは混乱したようにのたうち回るものの……サムライは止まらない。


「オシテマイル!」

「そこは片言なのかよ!?」


 フータのツッコミを聞いているのかいないのか。

 サムライは更に空中を蹴って跳ね。背中から光る腕を2本生やし、虚空から刀を新たに3本出現させた。

 変則的な四刀流。それも、中途半端とはいえ強化されている私よりもダメージを出した上でそのペースを上げようと言っているのだ。

 当然、レストートは許さない。

 空中に居るサムライに対し、全ての槍を集中させ迎撃しようとして、


「あはッ、忘れちゃダメだぜ?」

『――ぅぁ!?』


 その一部、サムライに向かう槍を視界内に捉え……私は喰らう。

 【座標攻撃】、そして【ヒットボックス拡張】による座標指定範囲攻撃。今回の戦闘で【座標攻撃】は役に立たない事はここまでの流れで薄っすらと分かっていた。

 故に、ここで切る。

 私の口が閉じるのに合わせ、サムライの背後から迫ってきていた何本もの槍が砕かれ、抉れ、消えていく。

……レストートはそこまで頭が良くない。こっちの事をほぼ無視してたメントゥムと比べると感情的、ってよりは……取捨選択が上手くない。多分スキルの所為もあるんだろうけど。

 周囲に居るプレイヤーの事は理解しているのだろう。

 しかしながら、レストートが狙うのは現状はサムライのみ。時折私の方に槍が飛んでくるのは……少しだけ意識をこちらに向けているからだろうか。

 だからこそ戦い易い。巨大な蝮に対してダメージを与えられる者が2人以上居る状態で、レストートのそれは致命的過ぎる。


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