Episode8 - VS『忌夜狩獣 レストート』1
本日5話更新
1話目
蛇を引き連れ、前へと進む。
既に配下5体産み出して暴れさせているが、それでもあまり状況は宜しくない。理由は簡単、私達や一部のプレイヤー以外が基本的に『恐怖』のデバフへと無対策であったが故だ。
超が付くほどに巨大な蝮……レストートはまだ動かない。私達が戦っているのをじっと瞳で見つめていながらも、時折近場で『恐怖』によって動けなくなっているプレイヤーを丸呑みにするだけで、戦闘をしようとする意志すら見せていない。
だからこそ、私とフータはレストートに手を出すつもりはなかった。
……あれは何かのトリガーがあるパターン。一番分かりやすいのは……手を出したら本格的に戦闘が始まる奴!
無論、この場は既にほぼ乱戦の様な状況だ。
誰が放ったかは知らないが、レストートへと矢や遠距離攻撃の類を仕掛けようとする者も存在しているが……届かない。
システム的な防衛の様に、自動的に周囲の蛇達がそれを止めるように動くからだ。
故に、何をするにも延々と生み出される蛇に対処して……その上で未だ動いていない未知のワールドボスを倒す必要がある。無茶にも程があるだろう。
「フータくん、掲示板の方は?」
「一応他の国から向かってる奴は多いみたいだぞ。それにタラッセイアからも声明が出てる」
「なんて?」
「『此度の強大なモンスターが在野の冒険者の手によって解き放たれたのは誠に遺憾であり、許されざる行為である。我が国の建国記念である祭事を邪魔した罪と、民を危険に晒した行為を我々は決して許す事はない』……だそうだ」
「あは、オイラーくん頭抱えてそう」
流石のタラッセイアもこれには激怒しているようだ。まぁ、向こうからしたら祭りで騒いでたら突然とんでもない災厄が飛び出してきたのだから同情しか出来ない。
とは言え、タラッセイア側もこの状況を無視するつもりはないらしい。
私の耳には背中の港側から大量の足音と、何やら巨大なモノが移動する様な音が聞こえてきていた。
更には、
「おいアレ見ろ!」
「アレは……タラッセイアの外海探索用の武装船じゃねぇか!」
「武装船?んだそりゃ、こっちは陸地で戦ってんだぞ!?」
「馬鹿野郎!外海で戦う為の装備が大量に積まれた一種の軍艦みてぇなもんだよ!その主力は当然……」
思わず耳を塞ぎたくなる程に巨大な破裂音が連続すると共に、レストートが復活したこの砂浜は一瞬で炎の海へと生まれ変わってしまった。
武装船から放たれるのは焼夷弾。狙いはレストートではなく、その周囲の地面や蛇であり。それらに命中すると同時、黄の炎が辺り一帯を包み込んでいく。
無論、前へと進みレストートに近づこうとしていた私達にもそれは襲い掛かる。
……プレイヤー達の安否はどうでも良い訳だ!まぁあんな声明出してる以上そうだろうと思ったよ!
そも、KFOのNPC達には既にプレイヤーが死んでも復活する存在だと知られている。
故にこうして犠牲も厭わない方法で蛇の殲滅を図っているのだろう。
だが巻き込まれる身からすると堪ったものではない。既に燃えている炎を避け、音速を越えて飛来する焼夷弾の直撃だけを割けるように転がりながら。背中に居るフータには悪いが、全く気に掛ける事はせずに、身の安全だけを考えて更に前へと行く。
私が前に出る理由は単純。私やフータが出来る事が全てレストートの近場に居ないと出来ないからだ。
「ぐっ、ふぅ……フータくん、HPは?」
「まだまだ余裕あるぞ、イヴ姉ちゃんは?」
「ちょい半分くらい。配下達から蛇を食べる端からHP共有されてるけど……流石にこの環境じゃ焼け石に水だね」
「だよな……っていうか、配下生きてんの?この中で?」
「まぁね。私のスキルって割と生きるだけなら幾らでも出来るんだぜ?それを貸してるんだ、餌があって弾に直撃しない限りは……生きれるさ」
「わぁ……バケモン……」
「君もね?」
砂浜は既にレストートが出現する前と今とでは全く様子が変わっている。
レストートが撒き散らす瘴気による『恐怖』で動けないプレイヤー達と、それらを殺し、焼き払われる蛇達。
その中心では未だダメージを1も喰らっていない巨大な蝮。
地獄の様な風景の中、私は駆ける。
「で、イヴ姉ちゃんどうすんのこれ?正直、俺結構もう諦め入ってるんだけど」
「まぁやるしかないっしょ。問題は……今回は全く勝てるイメージがない所だよねぇ」
「……多分、条件次第でダメージ無効とかそういうの持ってるぞあいつ」
「マジ?」
「ほら、見てて」
蛇達に邪魔されながらも、少しずつ進んでいく中。フータが背中からある一点を指し示した。
その先は私も今目指しているレストートの姿。何も先程から変わった事がないと思いながらも見ていると。
……ッ、本当なら当たってるじゃんか!?
蛇達の防御を越え、レストートに届いた矢が身体から数十センチ以上手前で見えない何かに弾かれている様子を見る事が出来た。
明らかな異常。
だがそのタネが分からない。レストート自身が持つ何らかのスキルが原因だとは考えられるが……それを考えるには情報が足りなさすぎる。
「……仕方ないッ!1回死んでから考えるよ!」
「イヴ姉ちゃんの【再誕】のCTが上がってればなぁ……」
「仕方ないじゃん今日こんな事になるなんて考えてなかったんだからさぁ!」
互いに軽口を叩き合いながらも、私は砂を踏みしめて……征く。
上がってきたテンションと、重なってきたバフによって徐々にその速度は上がっていき、約1秒後。レストートの近く、まだ20メートルはあろう場所まで辿り着き、
「よし、覚悟決めてね」
「わぁーってるよ、そっちも出来るだけ攻撃避けてな!」
「うんうん、分かってる。よしじゃあ行こう!」
征った。一足飛びの要領で、強化された身体能力にものを言わせる事で一気に距離を縮め。
私の接近を阻むように出現した蛇達を、その勢いだけで突き破りながら辿り着いた先。まだ誰も立って辿り着いていないタッチの距離。
勢いを殺さぬよう、そしてこの足場が悪い中でやれる攻撃と言えばただ1つ。
跳び蹴りだ。
現状の最大値、完全にテンションがハイになり様々な強化も積み重なっている時とは比べ物にはならないが、今でも相応のダメージを出せる筈のソレ。先程見た矢を防いだ何かに防がれると考えながらも放ったそれは何事もなく突き進み……巨大な蝮の身体に命中した。





