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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第10章 後の海岸事変編

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Episode7 - 始まり


 駆ける、駆ける。

 祭りの中を、フータを肩車しながら器用に人を避け、時に設置された簡易屋台の屋根の上を跳ねながら。

 私達は駆けている。

 急ぎ、向かわねばならないからだ。


「あーもう!誰だ考えなしにあんなアナウンス出したの!?討伐派だけじゃないんだよ!?」

「イヴ姉ちゃん、【再誕】は?!」

「まだ20時間残ってるよクールタイム!」

「クッソ……!」


 誰彼構わず、対象範囲内にいるプレイヤーへとアナウンスを出したのだ。当然、私達と同じ方向……港の端、いつも私達が狩場としていた反対側へと向かっていく人影は多い。

 人間アバターが多いが、中には空を飛ぶモンスターの姿や、動物にしか見えない者もいる。全てが全てモンスターアバターのプレイヤーだ。

……出来るだけ早く、でも……最近はHPの節約〜とか言って配下達出してなかったからな……!

 私達が急ぐ理由はただ1つ。

 今回アナウンスを出したのは十中八九、ワールドボスを討伐しようとしているプレイヤー達だ。そんな彼らが封印場所を見つければ、多くの人を集め、すぐにでも討伐したいと考えるだろう。それこそ、メントゥムという討伐できてしまった前例がある為に。

 しかしながら、伝え方が悪い。

 無差別に伝えれば、その分だけ思想が違う者も集まってしまう。

 特にこの世界はゲーム。ワールドボスの封印解放自体は手伝うものの、その後の討伐を積極的に邪魔しようとする輩も少なくはないのだから。

 故に、急ぐ。現状私が出せるトップスピードで祭りを駆け抜けて、


「アレか!」


 居た。そして、在った。

 既に数十人規模となったプレイヤー達が1つのオブジェクトを取り囲んでいる。

 それは……朽ちた船舶だった。

 半分ばかりから折れ、浜辺へと打ち上げられたソレ。

 タラッセイアの近くではそれなりに見ることが出来るオブジェクトであり、それ自体に珍しさはそこまでない。

 しかしながら、異様な雰囲気を纏っていた。

 暗く、そして黒い瘴気としか言いようがないオーラを纏い。見れば時折それが1つに固まり、小さな羽の生えた蛇の様なモンスターへと変わってプレイヤーへと襲いかかっている。


「フータくん、準備!もうアレ解ける直前だ!」

「あぁもう!なんだってこんな準備時間がないもんかね!」


 視界の端に自身が取得しているスキルの一覧を出し、新たに取得した【麻痺耐性】、そして【萎縮耐性】がきちんと載っている事を確認してから……私はその集団の近くへと辿り着く。

 一部は私のことを知っているのか、姿を見るだけで『おい、人喰いアリスが来たぞ』、『あの人こっちに居たのかよ』、『しらねぇゴブリンも連れてんな?』という声が聞こえてきた。装備について言った奴の顔は今覚えた。

 だが、私が何かを言おうとした瞬間……視界が黒い光で包まれた。


『全プレイヤーの皆様へと通達です。ワールドボス『忌夜狩獣 レストート』の出現がタラッセイアにて確認されました』


 巨大な建造物が壊れる音と共に、私の視界が元に戻っていく。

 先程までとプレイヤー達は変わりない。変わったのは、オブジェクトの方だ。辛うじて形を保っていた筈の船舶は全て崩れ。

 代わりに……そこには巨大な蛇が居た。……否、蝮だろうか?

 黒く、光の加減によっては紫にも見える鱗。メントゥムを思わせる非常に巨大な身体と、羽衣の様に瘴気を纏い。

 胴体には蝙蝠を思わせる羽根が四つ。

 そして、周囲には……先程から瘴気から産まれていた大量の蛇達を周囲に侍らせて。


『――ぁるぁ?』


 ソレが鳴くと共に、蛇達が周囲に居るプレイヤー達を襲い始めた。


「ッ、おぉ!?戦闘開始ィ!」

「唐突過ぎるだろ!?封印解除はもっと先の筈だろ!?」

「誰かがやっちまったって事だ!それより早く対応!」

「クッソ身体が動かね、ね、ね……!?」


 ソレ自体はまだ動かない。紅い瞳を周囲へと巡らせながら……自身が何故この場に居るのかを考えている様な雰囲気がある。

 しかしながら、周りの蛇達は違う。

 まるで、ソレに献上するモノを集める為に。ソレが満足できる何かを集める為に、周囲へと無差別に攻撃を開始したのだ。

 その中には、まだ集団からは遠い私達の元へと向かってくるモノも居た。

……まだログが流れてない……って事は、レストートっていう奴とは戦闘状態じゃないって事!

 現実に居ればそこらの背の低いビルならば丸呑みに出来るのでは?と思ってしまう程には大きい身体からは、未だ殺気は放たれていない。

 だが、問題はその身体に纏っている瘴気だ。

 まだ遠い私達には被害はないが……近辺に居るプレイヤー達がそれに触れると共に、凄まじい勢いで身体が震えその場に倒れていくのが見えている。


「イヴ姉ちゃん、掲示板に情報来た。名前はアナウンス通りに『忌夜狩獣 レストート』。あの周りのもやもやに触ると結構な勢いで『恐怖』のスタックが溜まってくらしい」

「了ッ解!」

「シャァッ!」

「ジッジッジッ!」


 フータを背中へと移動させ、骨の甲冑を生成しながら。

 矢の様な速度で飛来した蛇を徒手のみで叩き落としていく。【口腔生成】や【捕食】を始めとした食事系のスキルはまだ使えない。メントゥムの時の様に戦闘状態ではなく、それでいてまだ相手の詳細が分かり切っていない為だ。

 あの時とは違い、完全に【暴食】が足を引っ張っている現状に歯噛みしつつ……一息。止まらない蛇の矢を1つ1つ、見える範囲で対処していく。

 一手、首を狙って飛来した蛇を右の手刀で叩き落とし。

 二足、いつの間にか砂の下へと潜っていたのか足元から飛び出してきたモノの胴体を右足で踏みつけ潰し。

 三手、直線的に心臓を狙ってきた蛇を左の手のひらで受け取め、鞭の様に掴みながら。

 四足。左足を止めようと巻き付いてきた数匹を前へと無理矢理進む事で引き千切る。

 一体一体の耐久力は高くない。脆い部類だ。だが、数が多い。どれだけ対処しようにも、既にこの場にいる私達を含めたプレイヤー以上の数が生み出され、放たれているのだから。


「本当、恨むぞ集めた奴……!」


 非常に不味い状況でのワールドボスとの戦闘が今、始まった。

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― 新着の感想 ―
(討伐派のなかに潜り込んでた妨害派の仕業では?)……と思いたいくらいに招集が雑!  そのうえ、ここでしくじるとタラッセイア在住および行商とかで立ち寄ってたNPC経由でPL全体への評判がかなり悪化するの…
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