表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第10章 後の海岸事変編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/163

Episode6 - 対策を急げ


 討伐すると決めてからの私達の行動は早かった。

 午前中はオイラーからの依頼をこなし、【再誕】が発動したら撤退。祭りの中を食べ歩きながら、情報を集め。

 午後からは軽く近場の遺跡へと赴き、祭壇がないかを探した。

 ロレリア方面にあった遺跡には、かつての巫女がメントゥムの力を分散させる為の祭壇があった。そして、そこにはこのゲームにおけるバックストーリー……ロレリア建国に関係した文章が刻まれ、集めれば集める程にメントゥム戦で必要なスキルを得る事が出来る仕組みだったのだ。

 事実、耐性系は役に立ったようで。当時の掲示板を覗くと、耐性スキルを持っていなかったプレイヤーはまともに動けない程だったそう。

 ならば、それが他の国でも無いとは限らない。


「どうよ、見つかった?」

「いや、無いな。……正確に言うと、祭壇はある。だけど、石板がない」

「んー……取られてるかな。支配権は?」

「そっちは残ってたから、俺が取ってある。あとで統合する為に持っとくつもりだ」

「うんうん、最低限だね」


 だが、その目論見は上手くいってはいない。

 確かに遺跡はある。陸上だけでなく、海中にもあるらしいが、そちらは私達2人ともに海中での戦闘方法を確立していない為スルー。

 だが、内部は既に攻略されているものが殆ど。祭壇も見つけてはいるが、石板が残っていないのだ。

…….メントゥムの時みたいに妨害派か、もしくは普通に私達みたいに討伐する為に動いてるプレイヤーがいるか、だなぁ。

 一応、経験値を使えばスキル自体は手に入る。

 だが、今回戦うであろうワールドボスに対して、どの耐性スキルを持って行った方がいいのかが分からないのは大分厳しい。


「掲示板にも……載ってはないよねー」

「あ、そうだ。イヴ姉ちゃんの友達だっていう人間のプレイヤーは?その人ならある程度知ってたりしないの?」

「あー……ロートちゃんかぁ。いや、無理じゃないかな。あの子の活動圏はロレリアだし、タラッセイアには来てないはず。来てたら何かしらのスクショ送ってきてるだろうし」

「そこで判別するのか……」

「まぁね。度々食べたものとか送ってくるよ」


 そして、今回はロードの様な人間プレイヤーの知り合いが居ないのも大きい。

 人間側の動きや、得た情報を共有して貰えていたものの……タラッセイアではその様な間柄の人物は居ない。

 オイラーがその分類になるかもしれないが、彼はNPC。それもレイナの付き人だ。モンスター討伐の定期報告で会う事は度々あるが、その度に忙しそうにしている姿を見ているため、まだ確証があるとは言い難い事柄について聞くのは……少々気が引ける。


「ま、経験値は貯まってるし取ってない耐性系スキルを取っておくことにするかな。フータくんは大丈夫?」

「俺も経験値自体はある程度余らせてある。早めに何個か進化スキルにしときたいけど……俺はイヴ姉ちゃんと違って、遺跡のソロ攻略は相性が良くないと出来ないしな」


 と、結果的には一度祭壇を探すのは諦める事にした。

 一応どのスキルを取ればいいかは……過去、ロートから聞いた話である程度想像出来ている。

 私の所持しているスキル以外だと……残りは【麻痺耐性】と【萎縮耐性】だ。


「実際問題として、『萎縮』は何となく分かるんだけど……『麻痺』ってそんなに危険なのか?俺くらった事ないから分からないんだけど。掲示板でもあんまり重要視されてないだろ?」

「んー、私としては4つの中で一番危険だと思うけどね?」

「マジでか!?」


 以前ロートに教えてもらった、各国が要注意としているデバフ4種。

 『恐怖』、『狂気』、『萎縮』……そして『麻痺』。それぞれの効果は分かりやすく、『恐怖』であれば身体が震え、力が入らなくなってしまったり。

 『狂気』に関して言えば身体の制御が効かない状態になってしまう。

 『萎縮』は部位に対して判定があるデバフであり、対象となった部位が時間を掛けて枯れ木の様に干からびてしまう凶悪な物。

 では、『麻痺』の効果は?


「当然。軽度……それこそ、数秒で解けるぐらいだったら全身が痺れるだけで済むみたいだけど、それが積み重なってみなよ?」

「全身が痺れて動けないのを延々……?あ、もしかして」

「分かったかな?……このゲーム、私はよぉーく知ってるんだけど、結構きちんと内臓の概念あるんだよね」

「……成程、文字通りの心臓麻痺が起きるのかよ」


 全身の麻痺。痺れによって身体が動かせなくなる。

 それだけであればまだ他のゲームにもあるデバフだろう。しかしながら、KFOにおいてはスタック値が積み重なるにつれて、その麻痺の効果が細分化されていく。

 最初は全身から。そして次にどれかの部位が重度の麻痺に。その次は何処かの内臓が。

 その時点でも選ばれた内臓によっては致死になるだろうが……問題はその先だ。

 内臓が、骨が、血管が、筋繊維が、細胞が。生き残れば、『麻痺』を付与する相手を止めなければ延々と痺れは身体中に広がっていき、確実に死へと誘う死のデバフ。

 無論、詳しく見ていけば他の3つも同じ様に死の可能性があるデバフではあるのだが……私が『麻痺』を一番危険だと思う理由は別にある。


「他3つはまだワンチャンがあるんだよ。身体に力が入らなくても、制御が効かなくても、一部身体が使い物にならなくなってもさ。でも『麻痺』だけは違うんだ。くらった瞬間にそのワンチャンすら消えるんだ。……だから、お姉さんは一番危険だって思うのさ」


 そう、逆転を許してくれないその性能にこそ、危険を感じたのだ。

 私のその言葉にフータは納得したように頷き、


「……じゃあマストで取っとくべきじゃねぇか!?しかもレベルも上げといた方がいいな!?」

「そうだよ?まぁ私も今の今まで取ってなかったけどね?」

「っんでだよ!こんだけ語っといて!」

「必要無かったし、くらった覚えもないからなぁ。ダキニちゃんが使ってきたら取ってたかもしれないけど、あの姫さん結構ちゃんと物理だし」


 と、ここで。

 私とフータは同時に視線を虚空へと向けた。通知音が聞こえたのだ。

 それは……あまり使われる事の無い、プレイヤーから一定地域内に居るプレイヤー全員へ向けてのアナウンス。

 今回はタラッセイアに居るプレイヤーに向けてのモノであり、普段使われる時はプレイヤー主催のイベントや、それ以外にも出店の宣伝などくらいでしか聞かないモノ。

 丁度タラッセイアは建国記念の祭り中。ならばあまり重要な事ではないだろうと、一目見て雑談に戻ろうかと考えて、


『至急、集まれるだけ集まってくれ。ワールドボスの封印場所を見つけた』


 私達は互いに顔を見合わせて、集合場所へと急ぎ走り出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ