Episode5 - まだ残っているのは
私達がこの祭りの間にオイラーから報酬として貰った植物はそれなりの数になってきた。
そして、その数が多くなればなるにつれ……私達とタラッセイア側の関係は変わっていく。
最初は在野のモンスター。意志疎通が出来るとは言え、人間ではない相手。そんな者達に一部とは言えモンスターの討伐を任せるのは如何なものかと、至極全うな意見を見える所で言われていた事もあった。
だが、私達がモンスターを討伐するにつれ、評価は変わった。
最初は嫌味を見える所で言っていた警ら隊の1人は、少しずつ態度を軟化。今では、最初の事を謝りながらもちょっとした食事を奢ってくれる様に。
他にも、モンスターへの忌避感を捨てきれていない住人は、私達がそれなり以上の実力を持っている事を知ると……あからさまに媚びる様な笑みを浮かべる様になった。
「ここまで変わると、まぁ人間もモンスターもそう変わらないなぁって思うよね」
「おぉ、モンスターっぽい発言だな」
「そりゃそうだよ、この世界じゃモンスターなんだからさ」
人間の嫌な所、というか。認める認めないを通り越して、既に人間でない私達に取り入ろうとしてくる者達まで出てきている。
ただの住人が、何の考えもなくただ強い者へと流れようとするのはまだ良い。
しかしながら……その中に、タラッセイアの上層階級……他国で言う所の貴族までもが混じっているのは少しばかり首を傾げてしまう。
……モンスターが比較的近い位置に居る国だからこそ、私達がどういうモンスターかも知らずに内側に入ろうとしてくるんだろうなぁ。
本来であれば、私もフータもそれなりに危険度が高い種族のモンスターだ。
魂食いは生物の魂を喰らい、自分の糧にする。
ボギーは人間へとちょっかいを掛ける過程で、とんでもない事態を引き起こしかねない。
どちらも人間からすれば脅威度は高く、討伐が推奨される類のモンスター達。そんな私達を、ただ友好的……自身達に危害を加える相手を排除してくれたからと言って近づいてくる。強い者に靡くのは良いとして、その相手が人間以外でも良いのかと、少しばかり人付き合いというのが嫌になっては来ていた。当然、モンスター付き合いは別に今まで通り変わらないが。
「でも、その分情報は集まる様になっただろ?悪い事だけじゃないんじゃね?」
「そうなんだけどね。無防備に、っていうか、本人達はある程度距離感保ってると思って近づかれるとさ……」
「あぁー……確かにモンスターと人間じゃ根本的に間合いが違うもんな……いや、違うな?!イヴ姉ちゃん絶対そういう意味で言ってないな!?」
「あ、バレた?ついつまみ食いしちゃいそうになるんだよね」
「やっぱり……!倫理観とかそういうのを持ってる前提で話す俺の方が馬鹿だった……!」
「フータくんすっかりツッコミキャラが板についたねぇ」
「誰の所為だ誰の!」
「誰だろうね?分かんないや。……でもさぁ」
だが問題は私の食欲ではない。いや、最大の問題は人間を食べたくなってしまう食欲ではあるが、そこではない。
タラッセイアという国の情報を集まってくる住人や仲良くなった者達から聞いていくにつれて、1つのとある問題が浮上したのだ。
それは、
「タラッセイアでもワールドボスが近いうちに復活するかもしれない、ってのは大問題だよね。やっぱり」
「……まぁな。冒険者っぽい見た目の奴らが日に日に増えていくのにも納得したぜ」
今も、港の出店で買った物を適当に食べ歩きながら。
私達はここ3日間で集める事が出来た情報をまとめていくと。
……オイラー達は祭りで人間が沢山いるからモンスターが寄ってきていると思ってた。でも、違う。
ある種の誘引効果。モンスターを引き寄せる力。そんな力の源が、タラッセイアの唯一の陸の領土である港に眠っている。
これについては、簡単に調べた程度で確信のある情報ではない。
しかしながら、明らかに祭りを楽しんでいる様子の無いプレイヤーの姿や、以前ガスフロスへと向かう際に喰らった覚えのある妨害派のプレイヤーの姿も見受けられている。
「でも、今回は全く情報が無いよね?掲示板の方にも……噂程度しか載ってないし」
「それだけでも集まってくるのは流石プレイヤーって所だけどな」
「十分すぎるからね。噂と、現場の状況だけでも大体確定に近いって考えられるだろうし。でも何処に封印されてるかもはっきりしてないのが問題だよねぇー……」
「仕方ないだろ。それが簡単に分かったらプレイヤーじゃなくても復活させようとする馬鹿が出てくる可能性があるからな」
「それはそう」
既にフレデリカとのチャットを通してダキニにはこの事は伝えてある。
そしてその返答はと言えば、
「その場に残って、討伐するか何かしてこい……ってのも、うちの姫さんも中々無茶を言うよね」
「まぁワールドボスが残ってるのは俺達にとっても邪魔ではあるからな。いつ封印が解けるか分からない爆弾が眠られてるのはちょっと怖い所じゃないし」
「確かにね。……まぁ討伐かな。それ以外の選択肢は余裕がありそうだったらで」
「そうなるよなぁ。……俺役に立つのかぁ……?」
罠を使うフータが超大型であろうワールドボスとの戦闘を不安に思うのは当然だろう。
しかしながら、その不安は彼だけのものではない。
「私もだけどね?結局私って別に大きい相手に有利な訳じゃないし?」
「喰える範囲が大きくなるってだけだもんな、イヴ姉ちゃんは」
「まぁその分、ヒットボックス大きくすれば一度に大量に食べられるから幸せなんだけどさ」
「うん、そうだな。どうするかなぁ罠」
「お、聞いてないね?後で覚えておけよ」
こうしている間にも、祭りは続く。
先に待っているのは……まだ、私には分からない。





