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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第10章 後の海岸事変編

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Episode4 - 海の幸は幾ら食べたっていいんだから


 そして、今。

 私とフータはタラッセイア近くの海岸にて、モンスターを討伐している……のだが。


「……多すぎない!?」

「確かに多いな……なーんかおかしくないか?流石に」


 数が非常に多い。

 人が集まっているからとかではなく、単純に海や、ロレリア方面、その他様々な方向からモンスター達がタラッセイアへと向かって出現していた。

 それも、このゲームにおけるスポーン速度を考えると……それなりに遠くから集まってきている可能性があるくらいには。


「イヴ姉ちゃん、そろそろか?」

「うん、そろそろ。一旦終わりにした方が良いね」

「了解、じゃあ準備する!」


 私は自身に付与されている『飢餓』のスタック数を確認しつつ、目の前まで迫ってきた巨大な蟹の鋏を軽く弾き返す。

 既に何度も何度もこの海岸でモンスターと戦闘を行い……そして喰らい、【捕食】などの強化を重ねている。そんな私に対して、ボスでもないただの野良のモンスターが太刀打ちできるワケもなく。

……味は良いんだよね。リアルでも最近蟹なんて食べれてないし。

 タラッセイア付近で出現するモンスター、名前をグラットクラブ。雑食で、私の様に何でも食べ、糧にする過程で身体と鋏が巨大化していくモンスターだ。

 その味は、まさしく蟹。様々なモノを食べすぎている所為か、それとも身体が巨大であるからか、少しばかり大味で後味に独特な臭みがあるものの……それでも美味い。

 私が生で、それも生きている状態のグラットクラブを喰らっている様子を見たオイラーに教えてもらったが、人間側はこのモンスターを食べる事はないらしい。勿体ない。


「――!?」

「はいはい、そんなに振り回しても意味ないからねー。……フータくん、準備出来たー?」

「おう、今出来た!イヴ姉ちゃんが倒し終わったらすぐにでも起動出来る!」

「了ッ解!」


 我武者羅に振るわれた鋏。その全てを骨の甲冑すら纏わない素の肉体だけで弾きながら。

 フータの言葉を聞いた瞬間に動き出す。

 余裕そうに会話をして、態度にもそれを出しているが……私のHPは、既に『飢餓』によって一時HPすらも削られきってしまい風前の灯火だ。すぐに決着を付けねばならない。

 私からすれば一歩。しかしながら蟹からすれば、一瞬で視界の中から消えたのだろう。焦った様に巨体に似合わない小さな眼を周囲へと向けているものの……懐へと潜り込んだ私には届かない。

 息を軽く吐き、ふんどしに当たる部分へと向かって体重を乗せた拳を叩きつけた。

 一瞬の抵抗感と、その後の硬いモノを打ち抜いた時のちょっとした無力感。それと共に、拳に生成した5つの口がそれぞれ蟹の内部を喰い漁って。


「終わりっと」


 びくん、と身体全体を蟹が震わせ慌てたように鋏を振るうも、全てが遅い。

 全身に骨の甲冑を生成し、その防御力だけで鋏の直撃を耐えきりながら。私は自身の口でも蟹の身体を喰らっていく。

 海の匂いと、海の生物特有の臭いがする外骨格に始まり、その下の柔らかい内臓。

 果ては脚や、こちらへと何度も叩きつけて鋏の内側の筋肉。それらを丁寧に、しかしながらいつもよりも手早く喰らっていき……一息。


「ゴチソウサマでしたっと」

「おい、イヴ姉ちゃん!もう良いのか!?」

「良いよ、やっちゃってー!」

「よっしゃ!タレット展開ッ!」


 光の粒子になって消えていくグラットクラブを背に、フータに合図を送れば。

 私の周囲に巨大な、木製のボウガンとそれを持つ木の人形が複数出現した。

 フータの持つ【罠生成】。一度に生成出来る罠は一種類のみではあるが、それらを何個も組み合わせる事で作り上げた、複合型の起動罠。

 その効果と言えば、


「自動装填、自動操作に自動射出!全部合わせて出現時間中は範囲内の野良モンスターを自動迎撃出来る罠だ!すっげぇだろ!?」

「すっごいすっごい。……なんで私達との戦いの時に使わなかったのか疑問なくらい」

「うっ……その、これ消費激しくて……今も結構限界ギリギリなんだよ。あの時は別の罠も稼働しないといけなかったから……」

「なぁるほどねぇ……げぼぁ!」

「イヴ姉ちゃーん!?ってこれ何度目だよ!?」


 フータの元へと歩いて戻った瞬間、私は血を吐きHPが0になる。

 『飢餓』によってHPが削り取られたのだ。そして、いつも通りデスペナルティを付与され、


『スキル【再誕】が発動しました。最大HPの50%を回復、一定時間ステータスが強化されました』


 ない。

 私は死ぬ事なく、光の粒子になる事なく立っていた。


「……本当にそのスキル反則だよな……」

「いやまぁそう思うけどさ。でも結構制約も多いんだからね?」

「1回死んでも復活する時点で些細なもんだろ」

「そうなんだけどさぁ」


 リアライブのMVP報酬を使って取得したスキル【再誕】。

 効果は単純、ログにも流れた様にHPが0になった際に発動し、現状の最大HPの50%を即座に回復。そして約30分間ステータスの強化が行われるとんでもないスキルだ。

 とは言え、しっかりと制約もある。

 再使用には発動から24時間経たないといけないのがまず1つ。

 そして、【再誕】を発動してからステータス強化効果が切れるまでの間はHPの回復や、一時HPの獲得も行えない。

 最後に、この【再誕】の効果が切れる前に再度HPが0になると……通常の2倍、デスペナルティが付与されてしまうのだ。

……強いと言えば強いんだろうけど、これ強敵向けのスキルじゃないよね。

 周囲が自分より格下で、延々と小さなダメージの積み重ねによってHPが0になり発動した時はまだ良い。

 問題は強敵……それも、自身よりも格上が相手の場合はこの制約が足を引っ張ってくる。

 回復も嵩増しも出来ない、半分しかないHPで自分を倒せる力量を持った相手と戦わねばならない状況。負ければデスペナルティは2倍。そして、この【再誕】の発動は強制的に行われてしまう。


「ま、今日はこれで終わり。また明日狩ろう」

「だな。俺も結構素材使っちまったから補充しておきたいし」


 私達がタラッセイアについてから、既に3日。

 祭りはまだ終わっていない。

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― 新着の感想 ―
 クセ強サブタンクぅ……オンオフできないシステムだと取得自体がためらわれる類。
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