Episode3 - 話をしよう
気張る、とは言え。
ここは交渉の場ではない。そもそもとして、私達はまだ何も問題を起こしている訳でもなく今後の為の情報収集としてタラッセイアを訪れただけ。
そして、今欲しい情報と言えば。
「まずお互いの名前からいこう。私はイヴ。そしてそっちの子はフータ。よろしく」
「おぉ、こいつぁいけねぇ。オレはお嬢……レイナ様の世話役のオイラー。よろしく頼んます」
「うんうん、オイラーくんね」
そう、名前だ。
こうして食事をしながら会話をしているというのに、ここまで互いの名前を知らなかったのは……私としても、向こうとしても礼儀を欠いてしまっていた。
「で、だ。私達は単純にこの辺に生えてる植物とか、タラッセイアがどういう国なのかってのを調べに来たんだよ。元々ロレリアの近くで活動はしてるんだけど、最近あそこで結構な事件があったじゃない?」
「あぁ、どうも封印されてたモンスターが復活したとかなんとか聞いたな……でも討伐されたとも聞きましたぜ?」
「そうだね。でもそれがまた起こったら……私達的にはちょっと活動し辛いんだよ。そこまで実力がある訳じゃあないからね」
フータの視線が私に突き刺さっているがやめてほしい。謙遜をしている訳ではなく、単純に……私やフレデリカだけでメントゥムの様な巨大なワールドボスを倒す事は難しいのだから嘘は言っていないのだ。
「成程、確かに何度もあるとなったら活動はし辛いでしょう。でも植物?なんでです?」
「ここには連れてきてないんだけど、私達の仲間の1人に植物系のモンスターの子がいてね。その子が移動するとなると、ちょっと海の近くは……色々問題があるだろう?」
「海風で陸の方の植物はちょっと厳しいでしょうなぁ」
「そうそう。でも、その子曰く、その地に生えてる植物を取り込めばそこで活動出来るようになるかもしれないって言ってたんだ」
「だから植物を探してる、か。成程、よく分かりやした」
無論、ここで嘘を言っても良いが……私が知らないだけでNPCが嘘を見破る様なスキルを持っている可能性もある。
特に今回話している相手は軍人だ。それもタラッセイアにおいて重鎮とも言える、国の一部を担う通り名付きのNPCも同席している状態。
故に、ここで嘘を言うよりも真実を。そして、真実は真実でも他人に言って良い部分までを言う事にしたのだ。
……ま、何か言ってない事があるくらいは察するだろうけどね。
相手はレイナ……軍をまとめる『海賊姫』の世話役だ。恐らく、それ以外にも役職は持っているだろうが、この場においてはその立場でしか話す気が無いのだろう。
そもそもとして、この場は政治的な話をする様な公式の場ではない。
ただ迷惑をかけてしまったと考えた側が用意した、謝罪の為の食事の場なのだから。
この会話も、食事中の雑談とそう変わらない。
「なら、オレらでそれらしい植物がないかを探しても良いですよ」
「え、マジ?本当?」
「勿論、本当です。ただ、やってもらいたい仕事もあるにはあるんでさぁ。成果には対価を。ギブアンドテイクってぇやつです」
「ほう?」
話を聞きながらも、テーブルの上の料理を口に運ぶ事は怠らない。
本当なら両手に口を生成して喰らってやりたい所ではあるのだが……流石に年齢がまだ低いであろうレイナが居る前でそんな事をする程、私は無法者ではない。
幾ら普段のスタイルが食べ物鷲掴みワイルドウーマンスタイルだとしても、それは子供の教育に悪すぎる。
存在自体が教育に悪いと言われれば黙るしかないのだが。
「何をすればいいのかな?」
「簡単ですよ。監視船の範囲外ではあるんだが……タラッセイアの船団近くに野良のモンスターが集まって来ていやして。無論、範囲内に入れば駆除はするんですが……」
「あぁ、成程?今はお祭り期間中だもんね。軍や警ら隊が物々しく出ていくと流石に雰囲気壊しちゃうか」
「そういう事です。お二方共、元よりロレリアの方で活動していて……尚且つモンスターだ」
オイラーは最後の言葉を言うタイミングで、少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべた。
ロレリアはタラッセイアと違い、モンスターの排除に何ら躊躇いはない。それこそ、私達の様な意志疎通が出来るモンスターであっても討伐対象になってしまう。この間のメントゥム戦の時が異例なのだ。
故に、彼に分かる様に、気にしていないと手と首を振りながら、
「良いさ良いさ。じゃあ依頼という形でやる事にするよ。私達はタラッセイアに近い野良のモンスター達を狩る」
「そして、オレらはその報酬として、この付近に生息している植物を渡す」
「うんうん。ちなみに狩ったモンスターの素材はどうする?」
「要らねぇなら買取りますよ。そのまま貰ってもらっても構いやせんが」
「ふむ……」
ちらとフータを見る。
彼は少しだけ考えたような素振りをした後に、軽く頷いた。
「じゃあ貰っておくよ。でも良いのかい?これじゃあ私達が貰いすぎてないかな?」
「良いんです良いんです。今回のこの祭りは建国記念のでっけぇ祭りだ。それだけ邪魔されたくはねぇって事です」
そうして、私とオイラーは互いの手を取り合い握手した。
これでフレデリカ用の植物の確保はほぼ確定で出来る様になった訳だ。





