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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第9章 遠征開始編

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Episode7 - VS『共生樹 コーディス』3


 私が蔦や根で拘束された後の事は大体理解した。

 恐らくあれは、ボスの持っていたある種の封印だったのだろう。対処するのが難しい、もしくはある程度力がある相手を安全に、そして抵抗を許さない様に取り込み栄養とする……その為の拘束であり、狼という巨大な動物の中に格納する封印だ。

 しかしながら、今回は私という……意識があるならば身体のどこにでも口を生成する事が出来てしまう相手を対象にそれを使ったが為に裏目が出た。それだけだ。

 相手を滅多刺しにしつつ、栄養を吸う事で効率的に殺す根は噛み止められ。

 相手を無抵抗にする為の蔦は、同じ様に噛み千切られ外されて。

 最後の砦でもあったであろう狼の体内。それは……根を引かれる事で本体である樹木が身体を貫通。共生していた筈が、狼の身体を背中側から蹂躙し尽くす武器となってしまった訳だ。


「……で、どうするの?キミ」

『――ッ』


 私の視線はゆっくりと、手に掴んでいた根を辿り……大本である樹木、その幹に存在する眼球へと向けられた。

 上下左右、怯えた様に忙しなく動き続ける眼球。普通であればパニックに陥っている、もしくは……恐怖で考えがまとまっていないと考えるべきなのだろうが。

 私はハンドサインでフータに新たな罠を生成しておくように伝えておく。

……相手はボス。しかもしっかりこっちを捕えて殺す、みたいな考えが出来る程度には賢いボス。もうここまで来て嘗めるとかは出来ないからね。

 この遺跡に侵入し、探索している段階では考えてもいなかったが……目の前のこの樹木はある程度以上に思考を巡らせ、作戦を立て、そしてこちらを殺す術を持っている。

 そんな相手を追い詰めたとして、気を抜く事なんて出来る筈がない。

 そも、植物系のモンスターに関してあまり安全であるというイメージはこのゲームでは無いのだ。ニドリー然り、身内であるフレデリカ然り、どちらも植物を扱い中々に規模の大きい被害を齎していたのだから。

 故に、目の前の『共生樹 コーディス』と名のついたボスに関しても油断はしない。

 最期の最期、討伐ログが流れるまでは……食欲が暴走する以外では意識を逸らさない。


『ッ!――ッ!!』

「「あちゃー」」


 そうして、私の問い掛けに対し目の前の樹木が選んだのは……抵抗。

 枝、蔦、そして私が掴んでいるモノ以外の根。それらを操り、私とフータを捕え貫き切り刻もうと動いてしまったのだ。

 1つ1つの動く速度はそれなりに速い。それこそ、しっかりと強化している今の私が速いと感じる程度には。恐らくバフが盛れていなかったら……目視するのも難しいのではないだろうか?

 だが、それだけだ。


「フータくん」

「言われなくとも」

『!?』


 言うと同時、その全ての動きが止まる。

 私1人であれば対処するのは難しかっただろう。どんなに強化されていたとしても、無数の、そしてそれなりに速度がある物体を避けながら本体に攻撃するのは今の私には難しい。

 しかし、今は私1人で挑んでいる訳ではない。

……ワイヤートラップ好きなのかな。さっきも使ってたし。

 罠使い、そしてダンジョンマスター……ボギーのフータ。

 この遺跡に侵入してから、彼の扱う罠には助けられてばかりだ。

 今も、先程はボスの身体を拘束していたワイヤーの様な細い金属の糸を使う事で、無数の迫りくる攻撃を全て拘束し止めている。

 彼自身はソロでの戦闘能力に乏しいだなんだと言っていた記憶があるが……先の支配権争奪戦での戦いや、今の対応力を見る限り、ある程度以上の実力は持っているだろう。


「いやぁ、助かるよ。――それじゃあ、抵抗したって事は……喰われても仕方ない、よね?」

『――!――!!』

「あは、そんなに身体を震わせても何言ってるか分からないや。生憎、ここにはフレデリカちゃんは居なくてさぁ」

『!ッ!!?ッ!?!!』

「さて、それでは……イタダキマス」


 樹皮を剥がし、喰らい。草木特有の青臭さと、古く外の空気に触れていたが故の埃っぽさ。

 そして狼の血肉に塗れたそれをしっかりと味わい嚥下して。

 その内側の木部へと舌を這わせ、歯を立て、削り取る様に喰らう。

 当然、美味いとは感じない。葉や実、樹液などは現実でも食用として扱われるものが多いが、それ以外の枝などは香りづけなどで直接食べる事は少ない。その理由は……旨味の様なモノが無いからだ。あったとしても、それをわざわざ喰らう程、人類は旨味の確保に困っていないというのもある。

 故にこそ、KFOというこの世界だからこそ、人目を憚らずに喰らう事が出来る珍味。意志のある樹木という、下手をすれば他のVRMMOでも味わう事が出来ないゲテモノ中のゲテモノ。

 それを喰らって味わっている。それだけで、私の中の何かが満たされていくような感覚を覚え、


『『共生樹 コーディス』が討伐されました』

『MVP選定中……参加プレイヤー数2人。MVPを選出しました』

『MVP:プレイヤー名『イヴ』』

『MVP特典として、スキル取得用の特殊アイテムが付与されました』


 ログが流れる頃には、私の目の前に在った樹木は木片すらも無くなっていた。

 攻略完了だ。

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