Episode2 - 様々な見つけたもの
湿地帯から草原へ、そして草原から東へと向かって駆けていくと。
徐々に空気が変わってきた事に気が付いた。
殺意などではない。単純に、空気の中の匂いに潮の様なモノが混じり始めたのだ。
「イヴ姉ちゃん、多分もう草原は抜けたよな?」
「多分ね。まだまだタラッセイア付近には遠いだろうけど……もう潮の匂いはしてるし」
「だよな。一応この辺でも採取しとくか?」
「んー……いや、この辺のは良いかな。もっとガッツリ海に近い場所で探してみて、なかったらこの辺に戻ってきても良いと思う」
「了解」
周囲の景色は少しだけ変わっている。
背の高い草木がなかった草原に比べ、今ではそれなりに背の高い木々が視界に入るようになってきた。
また、地面に生える草もまばらになり、水を含んだ泥が混じり始め湿地帯の様に少しだけ走りにくい。
とはいえ、この程度の足場の悪さには慣れている。
「そういえば、フータくんはこのゲームのタラッセイア付近のフィールドってどんなのがあるのか知ってるかい?」
「……知らずに走ってたのか?まぁ良いけどさ……まずまずとして、タラッセイアの周辺から主に東側に広がるのが海原。海のモンスターが大量に居て、この前のワールドボスみたいな大きさのモンスターがごろごろいるらしいぞ」
「すっごいじゃん。食べる所沢山ありそうで助かるなぁ」
「実際、その辺りのモンスターの肉はタラッセイアで売られたり調理されたものが出回ってるらしいから、寄れたら探してみる?」
「良いね良いね!凄くいい!」
海と言えば、であるのかどうか。
どのゲームでも、陸地よりも海中に存在するモンスターの方が巨大になる傾向がある。
KFOでもその流れに則っているのか、それとも偶然か。どちらにしても、メントゥムレベルの大きさのモンスターが居るとなれば……いつかは挑んでみたいと思ってしまう。
まぁ食べるだけならばフータが言った通り、タラッセイアに入れば十分食べる機会は訪れるだろうが。
「で、西側……今俺達が居る方向には、大体2段階のフィールドが存在してるらしい」
「2段階?一応は1個のフィールドって事かな」
「そうだな。大きくまとめて沿岸部。その中に、草原寄りのが河川部と海よりの汽水域があるみたいなんだよ」
「へぇ……?違いは?」
「単純に淡水か海水かの違いじゃねぇかなぁ」
フィールドに関する情報は私にとっても重要だ。ただ食べることだけに意識が向いているだけではないのだ。
フィールド上を移動する場合や、遺跡を攻略する上でもその辺りの情報があるかないかによって、どう行動するかの指針になってくれる。
例えば、明らかにそのフィールドにはそぐわない植物や動物が居る場合。
その場合、確実にその周辺にそれらを配置した何者かや、影響を与える遺跡か何かが存在している可能性が高いために、排除するか否かを選択せねばならない。
「じゃあこの辺は……沿岸部の中の河川部って感じになるわけだ」
「多分な。まだ草原っぽさもあるから、ちゃんとフィールドが移り変わったって訳じゃないんだろうが」
「うんうん……やっぱフータくんは年不相応だねぇ、色んな意味で」
「どういう意味だよそれ!?」
そんな事を言いながら駆けていく事暫し。
時折、狼やウサギのような形をしたモンスターとすれ違うものの、交戦する事は特に無く。
他に人間のプレイヤーと出会うことも無かった。
人が少ない、と言うわけでは無く単純にタラッセイアに行くプレイヤーが少ないのだ。
……ま、海に興味があるなら最初っからスポーン位置に選んでるだろうしね。
それに、時期も時期だ。
ロレリアのプレイヤー達は、未だメントゥム討伐時の被害の補修を行っていたり。
他の国からは、メントゥムと戦う為にと多くのプレイヤーが訪れているらしい。
故に、ロレリアに行くなら兎も角として、わざわざこの時期に他の国へと移動しようとする者の方が珍しいのだ。
「そういえばフータくんはメントゥムと戦ったのかい?」
「俺?俺は戦ってないな。スキルビルド的に、あの手のデッカいのに効く罠がまだ作れないから」
「あぁ〜……確かにそこが問題になるのか」
「普通のボス程度の大きさなら幾らでも罠に掛けられるんだけどな。イヴ姉ちゃんみたいに見てから避けてもこないし」
「あは、その辺りは鍛え方次第だぜ?」
「鍛えても自分の眼球に口を作ろうとは考えねぇよ……」
そんな事を話していると。
周囲には、細いながらも私達の進行方向に向かって流れていく川が。
木々はあまり変わらないものの、湿地帯や草原ではあまり見かけることのない草花も見かける様になってきた。
……そろそろ今日のキャンプ地を見つけたいところ……なんだけども。
テントなんて文明的な物、モンスターである私達は持ち合わせていない。
そこで代わりになるのが遺跡だ。攻略さえしてしまえば、ボス部屋は一時的に寝泊まりすることが出来る部屋にすることが出来るし、他のプレイヤーを侵入させない様にする事も出来る。
「どうするかな……」
遺跡自体はこれまでに何個か見つけることは出来ている。
だが、それに挑んでいない理由は単純だ。
確実に我慢出来ずにボスを喰らい、【暴食】が発動して『飢餓』が取り返しのつかないスタック数になってしまう。
故に、今回の遠征中、まともな街に辿り着きスポーン地点を設置することが出来るまでは……私は普段の戦術の大半を封じられているに等しいのだ。
その上で、
「お、あそこなんてどうだ?イヴ姉ちゃん」
「んー?……おぉ、木に覆われてる遺跡だ。なんか思い出すなぁ……」
フータが見つけたのは、1つの遺跡。
複数の木々の根が纏わりつき、1つの空洞を作り出していた。
一瞬脳裏にかつて戦ったボスの姿が浮かんだものの……入ってみるだけならばタダ。
そう考え、私はフータをしっかりと担ぎ直してからその空洞の中へと飛び込む様にして侵入した。





