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人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第8章 新たな犠牲者編

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Episode8 - 本番当日


 次の日。

 私とフレデリカは、フレデリカの庭園にて適当に寛いでいた。

 遺跡の支配権の争奪戦。それを行うにしても、主導はフータ側。私達2人の出番は争奪戦が始まってからになるからだ。

 だが、だからと言って準備をしていないわけでは無い。


「フレデリカちゃん、どのあたりの植物は持っていっていいやつ?」

「えーっとえーっと、丁度イヴさんの近くに生えてる赤い小さな花が沢山咲いてるのは大丈夫です!HP回復用のポーションになる薬草なので、イヴさんならそのまま食べれば良いかと!」

「おっけおっけ、じゃあちょっと多めに持っておこうかな」


 フレデリカの庭園は日々進化している。

 以前見た時はまだ数種、それも草花程度しか育っていなかった筈が、今では庭園の中心に大木が。それ以外にもビニールハウスの様なモノや、畑までもが設置されており、ちょっとした植物ならばここでほぼ揃うのでは無いか?と思うくらいだ。

 そして、それら全てがフレデリカの制御内。

 彼女が指示すれば、私の足元に生えている草花を始めとした植物全てが牙を剥く。

 ここは庭園でありながら、フレデリカの武器庫でもあるのだ。


「さて、と。私が呼び出されなければ良いけどね」

「ふふ、それが一番ですけど……今回の目的を考えると早々に呼ばれそうですね」

「まぁね。フレデリカちゃんは呼ばない様にダキニちゃんに言ったんだっけ?」

「言いました言いました」


 さて、今回の争奪戦におけるスペシャルユニット……ダキニが呼べる強力な駒は私1人となる。

 これは私1人で十分、という意味ではなく。

 フレデリカは別の事を行う為だ。


「遺跡同士が接続された瞬間を狙って、私が胞子を媒介に向こうの遺跡の内部を把握、ダキニさんに伝えます。それ経由で相手の遺跡の核を捜索、見つかり次第そこへと戦力を集中させる作戦です」

「戦力ではなく、索敵装置としての運用ね。ルール自体には引っかからないんだっけ」

「大丈夫大丈夫です。代わりに戦闘には参加出来ない制限が掛かりますけど、私はどちらかと言えば補助系のビルドなので」

「君は大物を1人で抑えられる程度には実力あるけどね……」


 索敵役と戦闘役。

 機能としての役割と、駒としての役割に分かれ争奪戦に参加する。

 一応、その辺りのルールに関しては私以外……フレデリカ、ダキニが問題がない事は確認している。

 とは言え、フレデリカが戦闘行動……例えば、胞子によるデバフの付与なんかを行ってしまった場合には、3時間分のデスペナルティに相当する罰則があるらしい為に気を付けねばならない。

 ちなみにその辺りの判断はプレイヤーの脳波の計測によって行われている為、わざとでないと言い張っても意味がない。


『遺跡『長狐屋敷』に対して、外部から支配権争奪戦が仕掛けられました』

『敵対勢力:遺跡『俺の城!』』

『『逆信狐 ダキニ』より、スペシャルユニットとしての申請が届きました。承認しますか?……承認確認。支配権争奪戦中、互いの遺跡内部以外に移動する事は出来ません。御注意下さい』

『支配権争奪戦ルール設定……確定』

『ルール:数量戦……遺跡内部のモンスターの数量が一定値以下まで下がった勢力の敗北となります。また、遺跡の核を確保、或いは破壊される事でも敗北となります』

『支配権争奪戦を開始します。参加する皆様の御武運を』

『バフによりスキルが一時的に使用可能となりました:【幻生成】』


 瞬間、大量のログと地響きと共に、私の目の前にウィンドウが出現した。

 ダキニからの参戦依頼だ。

 断るはずもなく、承認すれば……私の視界の隅、通常であればバフデバフのデフォルメアイコンが並ぶ位置に1つのアイコンが出現した。

……何々?『スペシャルユニット』……効果はHPの増加に、全ステータス強化、更に遺跡のボスの加護として1つのスキルの貸与……つっよ。

 軽くその場で跳びはねつつ。スキルの発動を意識しながら左手のひらを見つめていれば、


「わわ、イヴさん何かしました?左手が凄い事になってますよ?」

「ん、私的には別に変わった所は無いんだけど……フレデリカちゃんからはどう見えてる?」

「??何と言うか……左手から左手が生えて、そこから更に手が生えて……って感じで花みたいになってます」

「ふむふむ。それじゃあ……こうかな?」

「おお!?」


 フレデリカの見えたモノに合わせるように。

 私は視線を動かさず、頭の中でしっかりとイメージを固めていく。手元、左手の指を花の茎の部分を持つ様に。

 頭の中では、1本の青い薔薇を持っている様にイメージをしてみれば。


「凄いです凄いです!手の花が青い薔薇に変わりましたよ!」

「みたいだね。うんうん、これ結構使い勝手良いかもな……」


 どうやら成功した様だ。そして貸与されたスキルについてもある程度感覚で理解する事が出来た。

 【幻生成】、その能力はその名の通り幻を作り出すだけのスキルだ。

 相手にダメージを与える様な効果は一切ない。そして、スキルの行使者自身が作り出した幻を知覚する事は出来ない。

 しかしながら、作り出せる幻はかなり自由度が高い。

 青い薔薇からフォーク、ナイフ、1枚の銀のトレー、スキットルと変えてみせ。最後には手のひらサイズのクナトの形に変えてみせれば、


「成程成程、結構精巧ですが……その分弱いですね」

「だよね。威圧感とかが再現出来ないから、モンスターとかを作り出して使うのは向かないかも」

「ですね。やるなら……落とし穴とか掘った後にフタをこのスキルで作り出すとか、遺跡内の通路を1つ幻の壁で塞いで意図的に行き止まりを作り出す、とかでしょうか?」

「そうなるかなぁ。ダキニちゃんが使うなら……多分実体のある攻撃と織り交ぜて使うんだろうなぁ。ふむ……」


 結局の所、使い手次第。

 どう使って戦闘や探索に活かすかに依るのだろう。

 故に、私は索敵を始めたフレデリカと共に使い道を考えながら出番が来るのを待つ事にした。


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