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修行の日々は終わりを迎えた。
葵。
クロード。
セレナ。
それぞれが以前とは比べ物にならないほど成長していた。
晴明は三人を見渡し、静かに頷く。
「さて。」
「これからのことを話そうか。」
葵達は顔を上げる。
「予定通り。」
「王都を目指す。」
葵は頷いた。
「せっかくだしな。」
「この世界の中心も見てみたい。」
「まだ知らないことも多いし。」
「行ってみたい。」
晴明は微笑む。
「うん。」
「それでいいと思う。」
◇ ◇ ◇
レインが思い出したように口を開く。
「あ、そうだ。」
「葵。」
「今度、転移の術も覚えておくといいよ。」
葵は首を傾げる。
「転移?」
「そんな簡単に覚えられるものなのか?」
レインは笑う。
「ゼノスが使っていたものだからね。」
「それに。」
「君なら今の状態でも使える可能性がある。」
「前世の記憶が完全じゃなくても。」
「力の感覚は残っているから。」
葵は少し考える。
「なるほど……。」
晴明も頷いた。
「覚えておいて損はないと思う。」
「今後、必要になるかもしれないしね。」
レインは続ける。
「ちなみに。」
「この場所へ来られたのも、ゼノスがダンジョンコアを操作して繋げたからだよ。」
葵は驚く。
「ダンジョンコアって、そんなことまで出来るのか……。」
「普通は無理。」
「ゼノスだから出来たんだ。」
レインは懐かしそうに笑った。
◇ ◇ ◇
そして。
レインはクロードの前へ立つ。
「クロード。」
「君には伝えておきたいことがある。」
クロードは首を傾げる。
「何でしょうか。」
レインは優しく笑った。
「君は。」
「僕にとって息子みたいなものなんだ。」
クロードの表情が少し変わる。
「俺が……?」
「うん。」
「だって君の前世は。」
「僕とゼノスが一緒に作ったゴーレムだからね。」
「最初の頃からずっと見てきた。」
「ゼノスが考えられる全てを詰め込んで。」
「僕も力を貸して。」
「生まれた存在。」
レインは少し寂しそうに笑う。
「だから。」
「君が今こうしてまた会う事ができたのが、本当に嬉しいんだ。」
クロードはしばらく黙る。
そして。
静かに頭を下げた。
「ありがとう。」
「その言葉。」
「忘れない。」
レインは笑う。
「うん。」
「それでいい。」
◇ ◇ ◇
「じゃあ。」
「地上まで送るよ。」
レインが手を伸ばす。
すると。
空間が揺らぐ。
一つの石が現れた。
「転移石。」
「これを使えば地上へ戻れる。」
葵は受け取る。
「本当に便利だな……。」
「まぁね。」
「ダンジョンを管理してる立場だから。」
全員が別れの挨拶を交わす。
「また会おう。」
「うん。」
「今度はもっと強くなって来ます!」
「楽しみにしている。」
最後に。
葵は振り返った。
「ありがとう。」
「レイン。」
レインは笑顔で手を振る。
「またね。」
転移石が光る。
眩い光に包まれ。
葵達の姿は消えていった。
◇ ◇ ◇
誰もいなくなった空間。
レインは大きく息を吐く。
「行ったかぁ。」
静かな草原。
レインは空を見上げる。
「しかし……。」
「今の魔王。」
「本当に強くなってるよね。」
「それに……。」
「アイツの気配も濃くなってきてる。」
少し考える。
「まぁ。」
「ゼノスも気付いてるか。」
「今の葵なら。」
「少しずつ力を取り戻していけば大丈夫でしょ♪」
いつものように。
軽い調子で笑う。
その瞬間。
空気が変わった。
ズン。
濃密な神気が空間全体を覆う。
レインの笑顔が消える。
「……。」
背後から。
間延びした声。
「お久しぶりです〜。」
一瞬。
レインの身体が固まる。
額から大量の冷や汗が流れる。
ゆっくり。
ゆっくり振り返る。
そして。
「……最悪。」
その呟きだけが。
静かな空間へ響いた。




