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その頃、葵の修行も本格的に始まろうとしていた。
広大な草原。
目の前には晴明、青龍、六合、はな。
四人が揃って葵を見つめている。
晴明は穏やかに笑った。
「そういえば。」
「葵は、どこまで強くなりたい?」
突然の質問だった。
葵は少し考えた後、照れ臭そうに笑う。
「やっぱり……。」
「俺つえー、やりたいです。」
一瞬、静まり返る。
次の瞬間。
晴明は満面の笑みを浮かべた。
「そっか。」
「じゃあ。」
「もっと厳しくいこうか。」
「……え?」
「何回か死にかけるかもしれないけど。」
「大丈夫。」
「神薬もあるし。」
葵の顔が引きつる。
「いやいやいや!」
「死にかける前提なんですか!?」
「もちろん。」
「俺つえーって、そんな簡単にはなれないからね。」
葵は小さく手を挙げた。
「今なら……。」
「普通に強くなりたいですって変更できます?」
「却下。」
晴明は即答した。
その横で。
青龍が満面の笑みを浮かべる。
「じゃあ葵様!」
「いっぱい頑張りましょう!」
「……その笑顔が逆に怖いんですけど。」
「えへへ♪」
「大丈夫ですよ!」
「死なない程度です!」
「その基準がおかしいんです!」
◇ ◇ ◇
青龍は楽しそうに指を一本立てた。
「まずは青龍の封印!」
「今回は一つずつじゃありません!」
「全部開けちゃいます!」
「全部!?」
「はい!」
「葵様なら大丈夫です!」
「全然大丈夫な気がしない!」
晴明が苦笑する。
「まぁ。」
「大丈夫じゃなかったら僕が止めるから安心して。」
「安心できる要素あります!?」
青龍は両手をパンッと合わせた。
「それじゃあ!」
「いきます!」
次の瞬間。
ゴォォォォッ!!
凄まじい魔力が葵の身体へ流れ込んだ。
「ぐぁぁぁぁ!!」
全身が軋む。
骨が悲鳴を上げる。
血管が張り裂けそうになる。
「はいはい!」
「まだ止めちゃダメですよー!」
「もっと耐えてください!」
「笑顔で言うことじゃない!」
何とか耐え切る。
だが、その直後。
ドサッ。
その場へ倒れ込んだ。
「はい。」
「神薬です。」
はなが優しく差し出す。
葵は一気に飲み干す。
「よし!」
「回復しました!」
青龍は笑顔で親指を立てた。
「それじゃあ二回目!」
「待ってください!」
「休憩は!?」
「ありません!」
「えぇぇぇ!?」
◇ ◇ ◇
何度も倒れ。
何度も神薬を飲み。
その度に立ち上がる。
青龍の封印。
二つ目。
三つ目。
四つ目。
一つ解放される度に。
身体能力は飛躍的に向上する。
しかし。
その力を制御出来なければ意味がない。
「葵様!」
「力を押さえて!」
「押さえてるつもりなんです!」
地面を軽く蹴っただけで大地が砕ける。
木を避けようとしただけで風圧が森を吹き飛ばす。
「違います!」
「身体じゃなくて魔力です!」
「難しい!」
青龍は楽しそうに笑う。
「惜しい!」
「今の良かったです!」
「もう一回!」
「あと百回!」
「百回!?」
「はい!」
「頑張りましょう!」
「その頑張りましょうが一番怖い!」
◇ ◇ ◇
次は、はなの番だった。
「ご主人様。」
「今度は魂です。」
「魂?」
「魂の強度を高めます。」
封印解除。
全身を焼かれるような激痛。
「うぁぁぁぁぁ!!」
「ご主人様!」
「耐えてください!」
「あと少しです!」
何度も心が折れそうになる。
それでも。
立ち上がる。
◇ ◇ ◇
最後は六合。
六合は静かに葵を見つめた。
「これが最も危険です。」
「魔力の器そのものを広げます。」
「失敗すれば。」
「身体も魂も崩壊します。」
「さらっと怖いこと言わないでください!」
六合は静かに詠唱を始める。
白銀の魔法陣。
青龍。
はな。
六合。
三柱の封印が同時に共鳴する。
晴明も真剣な表情になった。
「ここが一番きつい。」
「頑張れ。」
「葵。」
葵は拳を握る。
「頼みます!」
膨大な魔力が身体へ流れ込む。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
その叫びは何日も草原へ響き渡った。
◇ ◇ ◇
数週間後。
修行は終わりを迎えた。
葵は静かに立ち上がる。
以前とは比べ物にならない魔力量。
身体能力。
反応速度。
そして。
青龍。
はな。
六合。
三柱が持つ封印。
その全てを解放し、完全に制御出来るようになっていた。
青龍は嬉しそうに拍手する。
「やりました!」
「全部成功です!」
はなも飛び付く。
「ご主人様!」
「凄いです!」
六合も静かに頷く。
「予想以上ですね。」
晴明は満足そうに笑った。
「うん。」
「これでようやく。」
「スタートラインかな。」
葵は固まる。
「…………。」
「え?」
「今ので?」
「スタートライン?」
晴明は笑顔で頷いた。
「そう。」
「ここから本番。」
葵はその場へ崩れ落ちた。
「俺つえーって……。」
「こんなに大変だったのかぁぁぁ!!」




