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クロードは静かに目を閉じた。
「……なるほど。」
「だから私は。」
「ずっと葵の、お役に立たなければならない。」
「命を懸けてでも守らなければならない。」
「そんな気持ちがあったんですね。」
ずっと理由が分からなかった。
初めて会った時から自然と湧き上がっていた感情。
守りたい。
支えたい。
命を預けてもいい。
その理由が、ようやく分かった。
晴明は優しく笑う。
「前世の影響は少なからず残ってる。」
「でもね。」
「今、その気持ちを持っているのは前世だけが理由じゃない。」
「今のクロード自身も。」
「葵を仲間として大切に思ってる。」
クロードは静かに頷いた。
「そうですね。」
「今なら胸を張って言えます。」
「私は葵を守りたい。」
「それが私自身の意思です。」
葵は少し照れ臭そうに笑う。
「ありがとうございます。」
「でも、クロード。」
「そろそろ敬語、やめませんか?」
クロードは少し驚いたように目を瞬かせる。
「敬語……ですか?」
「はい。」
「俺達、もうずっと一緒に戦ってきたじゃないですか。」
「命も何度も預け合いましたし。」
「仲間なんですから。」
「普通に話してもらった方が嬉しいです。」
クロードは少し考え込み、それから口元を緩めた。
「じゃあ。」
「今日から葵様って呼ぼうか?」
葵は思わず苦笑する。
「やめてくださいよ。」
「絶対似合いませんから。」
「ははっ。」
クロードは珍しく声を出して笑った。
「冗談だ。」
「分かった。」
「これからは普通に話すよ。」
「よろしくな、葵。」
葵も笑顔で頷く。
「はい。」
「よろしく、クロード。」
二人は固く握手を交わした。
その様子を見ていた晴明は、どこか嬉しそうに微笑む。
「うん。」
「その方が仲間らしいね。」
◇ ◇ ◇
レインは立ち上がる。
「じゃあ。」
「クロードはこっちへ。」
クロードは首を傾げた。
「俺だけか?」
「うん。」
「君は少し特別だから。」
「眠っている記憶と力を無理に目覚めさせると、魂が壊れてしまう。」
「だから。」
「魂そのものを少しずつ調律していく。」
「少し時間は掛かるけど、その方が安全なんだ。」
クロードは頷いた。
「よろしく頼む。」
「任せて。」
レインは笑顔で答え、二人は家の奥へと消えていった。
◇ ◇ ◇
残された葵達へ、晴明が手を叩く。
「さて。」
「待ってるだけじゃもったいない。」
「みんな修行だ。」
「修行?」
「そう。」
「クロードの調律が終わるまで、それぞれ強くなろう。」
六合はセレナへ視線を向ける。
「じゃあ、私はセレナを担当する。」
「よろしくお願いします!」
セレナは元気よく頭を下げた。
青龍は腕を組む。
「私は葵様を鍛えます。」
はなも尻尾を振る。
「私もお手伝いします!」
晴明は笑顔で頷いた。
「僕も見るよ。」
「四人掛かりですか?」
葵は嫌な予感しかしなかった。
「ちょっと待ってください。」
「何その人数。」
晴明は笑顔のまま答える。
「大丈夫。」
「死なない程度だから。」
「いや、その基準が一番怖いんですけど!」
◇ ◇ ◇
一方。
セレナは六合と共に草原へ出ていた。
六合は幾重にも魔法陣を展開する。
「セレナ。」
「今日から魔力操作を一段階上へ進める。」
「魔法は威力だけじゃない。」
「流れ。」
「圧縮。」
「分解。」
「再構築。」
「全て同時に扱えるようになってもらう。」
セレナは驚いた。
「全部ですか?」
「出来るようになる。」
六合は静かに微笑む。
数日後。
セレナは四つの魔法陣を同時展開しながら戦えるようになっていた。
威力も精度も以前とは比較にならない。
「凄い……。」
「魔法ってこんなに奥が深いんですね。」
六合は満足そうに頷く。
「まだ入口だ。」
◇ ◇ ◇
その頃、葵は――。
「ぎゃあぁぁぁ!」
草原を勢いよく吹き飛んでいた。
ドゴォン!!
大木へ激突する。
「痛ったぁ!」
青龍は腕を組んだまま言う。
「遅い。」
「次。」
「鬼ですか!」
今度は、はなが飛び込んでくる。
「ご主人様!」
「避けてください!」
「速っ!」
何とか避けた瞬間。
後ろから晴明。
「隙あり。」
コツン。
軽く額を叩かれただけ。
それだけで葵は空中を何回転もして吹き飛ぶ。
「何で!?」
「今何されたんですか!」
晴明は笑う。
「魔力の流し方。」
「まだ身体能力だけで戦ってる。」
「だから駄目なんだ。」
葵は立ち上がり、土を払う。
「くそぉ……。」
「もう一回!」
青龍は小さく笑う。
「その負けず嫌い。」
「嫌いではありません。」
それから毎日。
何度も吹き飛ばされ。
何度も転がされ。
何度も立ち上がる。
セレナは魔法を磨き。
葵は力の扱い方を学ぶ。
そして家の奥では。
レインによる魂の調律が続いていた。
眠り続けていたクロードの記憶。
そして、その奥底へ封じられた力。
少しずつ、確実に目覚め始めていた。




