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レインは晴明を見て苦笑した。
「で?」
「久しぶりに私へ会いに来た……って訳じゃないんだろ?」
晴明は頭を掻きながら笑う。
「まぁね。」
「もちろん会いたかったのもあるよ?」
「でも今回は頼み事。」
レインは肩を竦める。
「やっぱり。」
「君は昔から変わらないね。」
晴明はクロードへ視線を向けた。
「この子。」
「力を解放してあげたくてさ。」
「それと。」
今度は葵を見る。
「葵もだいぶ今の力へ慣れてきた。」
「でも。」
「これから先は、もっと厄介なのが出てくる。」
「だから。」
「修行も兼ねてね。」
葵は首を傾げる。
「クロードの力を解放?」
「厄介なの?」
「何のこと?」
疑問ばかりが頭へ浮かぶ。
晴明は少しだけ微笑み、クロードへ目を向けた。
「葵。」
「クロードが昔、ゴーレムだったって話は聞いてるよね?」
「ああ。」
「前に聞いた。」
「でも、それだけだ。」
晴明は静かに頷いた。
「じゃあ。」
「その先を話そう。」
部屋の空気が少しだけ変わる。
「クロード。」
「君の前世は普通のゴーレムじゃない。」
「僕とレイン。」
「二人で作り上げた、最高傑作だった。」
クロードが目を見開く。
「……私が?」
レインも懐かしそうに笑った。
「そう。」
「私がダンジョンコアを応用して核を作り。」
「ゼノスが設計を担当した。」
晴明は続ける。
「町を守るため。」
「魔族の侵攻から人々を守るため。」
「僕が初めて契約した使い魔。」
「それが君だった。」
「当時考えられる技術。」
「魔法。」
「素材。」
「全部注ぎ込んだ。」
「さらにレインの協力でコアは成長し続けるよう調整した。」
「そして。」
「人工の魂を宿した。」
レインが苦笑する。
「正直。」
「作りながら思ってたよ。」
「こんなの完成したら誰も勝てないって。」
晴明も笑う。
「実際。」
「完成したクロードなら。」
「当時の魔王でも単独で倒せたかもしれない。」
その言葉へ。
全員が息を呑んだ。
「そんなに……。」
葵も驚きを隠せない。
晴明の表情が少しだけ曇る。
「でも。」
「魔族は真正面から戦わなかった。」
静かな声だった。
「町の子供達を人質に取った。」
クロードは無意識に胸を押さえる。
何も思い出せない。
それなのに。
胸だけが苦しくなった。
「君は。」
「最後まで子供達を守った。」
「全員助け出した。」
「だけど。」
「その代わり、自分は修復不能なほど壊れてしまった。」
部屋が静まり返る。
「僕が駆け付けた時には。」
「もう身体は完全に壊れてた。」
「残っていたのは。」
「人工の魂だけ。」
晴明はゆっくりとクロードを見る。
「だから。」
「女神へ頼んだ。」
「この魂だけでも救ってほしいって。」
「そして。」
「転生したのが今の君。」
クロードは静かに拳を握った。
「……。」
「今の君は人工の魂じゃない。」
「ちゃんとした人間の魂を持っている。」
「でも。」
「当時の力は。」
「完全には消えていない。」
晴明は胸を指差す。
「まだ。」
「君の奥底で眠っている。」
「それを目覚めさせたい。」
レインも頷いた。
「だから。」
「ここへ来てもらった。」
葵は感心したようにクロードを見る。
「やっぱり普通じゃなかったか。」
「どうりで子供好きな訳だ。」
「昔から町を守って。」
「子供達を守ってたんだな。」
クロードは照れ臭そうに笑う。
「そう……なんでしょうか。」
「記憶はありません。」
「でも。」
「何となく。」
「子供を見ると放っておけないんです。」
「身体が勝手に動いてしまう。」
晴明は優しく微笑んだ。
「それは。」
「きっと君自身の優しさだよ。」
「前世だけじゃない。」
「今のクロードも同じなんだ。」
葵は嬉しそうに笑う。
「やっぱクロードはクロードだな。」
「……ありがとうございます。」
少しだけ照れながら頭を下げるクロード。
その横で。
葵は晴明の言葉を思い返していた。
「でもさ。」
「厄介なのが来る……か。」
肩を落とす。
「何か最近。」
「平和な生活がどんどん遠ざかってる気がするんだけど。」
晴明は苦笑した。
「うん。」
「その気持ちは分かる。」
「でも。」
「たぶん。」
「君が思ってるより、ずっと大変になるよ。」
「……。」
葵は天井を見上げた。
「聞かなきゃ良かった。」
「何か悲しくなってきた。」
その場にいた全員が思わず笑った。
緊張していた空気が、少しだけ和らいだ。




