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青年は穏やかに微笑み、葵達へ軽く頭を下げた。
「初めまして。」
「私はレイン。」
「この世界に存在する全てのダンジョンを管理している者です。」
「ダンジョンマスター。」
「……ダンジョンマスター?」
聞き慣れない言葉に葵達は首を傾げる。
晴明は懐かしそうに笑った。
「昔からの友達なんだ。」
「色々助けてもらったよ。」
レインは苦笑する。
「君には随分振り回されたけどね。」
「でも、また会えて嬉しいよ。」
そう言ってから、レインは少し真面目な表情になる。
「せっかくだから説明しておこう。」
「君達はダンジョンを攻略している。」
「だけど。」
「何故ダンジョンが存在しているかは知らないだろう?」
誰も頷く。
レインは窓の外へ広がる草原を見つめながら話し始めた。
「この世界には魔力が満ちている。」
「魔力は生物からも自然からも少しずつ生まれ続ける。」
「そして本来、その魔力は世界全体を循環しているんだ。」
「だけど。」
「長い年月が経つと、一部へ魔力が偏ることがある。」
「魔力だまり……。」
六合が小さく呟く。
「その通り。」
レインは頷く。
「魔力が一定以上集まり続けると。」
「濃度も密度も異常なほど高くなる。」
「すると。」
「強力な魔物が自然発生したり。」
「土地そのものが魔境へ変わったり。」
「空間が歪んだり。」
「最悪の場合、その地域そのものが崩壊する。」
葵は思い出した。
地球で女神から聞いた話。
「魔力だまり……。」
「俺が巻き込まれたやつか。」
「そう。」
レインは静かに頷いた。
「世界を維持するため。」
「神々は、その魔力を安全に集めて管理する装置を作った。」
「それがダンジョンなんだ。」
その一言に全員が驚く。
「装置?」
「うん。」
「ダンジョンは巨大な魔力循環装置。」
「周囲へ溜まり始めた魔力を吸収し。」
「内部へ蓄え。」
「世界全体へ少しずつ還元している。」
「だから世界は安定している。」
六合が感心したように頷く。
「だから世界中へダンジョンが存在するのですね。」
「そういうこと。」
レインは笑う。
「もちろん。」
「魔力だけ集めても意味がない。」
「だからダンジョン内部では、その魔力から魔物が生まれる。」
「冒険者達は魔物を倒しながら奥へ進む。」
「その戦いで魔力は少しずつ消費される。」
「さらにボス討伐後。」
「転移石が現れるまでの間に、内部で余剰魔力の浄化も行われる。」
「だから冒険者が攻略すること自体が、世界を守る仕事になっているんだ。」
クロードは静かに息を呑む。
「つまり。」
「私達は知らないうちに……。」
「世界の維持へ協力していた。」
「そう。」
レインは優しく笑った。
「だから冒険者という存在は、とても大切なんだ。」
葵は少し疑問に思った。
「じゃあ。」
「今回みたいなスタンピードは?」
レインの表情が少し曇る。
「本来は滅多に起きない。」
「でも。」
「ダンジョンへ急激に魔力が流れ込み過ぎたり。」
「誰かが意図的にコアを暴走させたりすると。」
「内部で処理しきれなくなる。」
「結果。」
「魔物を外へ放出して魔力を逃がそうとする。」
「それがスタンピード。」
「自然災害みたいなものなんだ。」
六合も納得したように頷く。
「だからあの時。」
「ダンジョンコアを暴走させていたんですね。」
「うん。」
「ベルゼル達はその仕組みを知っていた。」
「だから利用した。」
レインは静かに晴明を見る。
「もっとも。」
「この仕組みを知っているのは。」
「神々。」
「私。」
「そして。」
「ゼノスぐらいだけどね。」
晴明は照れ臭そうに笑った。
「昔、一緒に作戦を考えたからね。」
レインも笑い返す。
「君はいつも無茶ばかり言ってた。」
「でも。」
「それが楽しかったよ。」
二人のやり取りを見て、葵達は改めて実感する。
目の前にいる二人は、世界の歴史を共に歩んできた”親友”なのだと。




