↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/91

79

九十階を突破してからの攻略は、驚くほど順調だった。


もちろん、敵が弱いわけではない。


九十一階。


九十五階。


九十九階。


SSランク級の魔物が、当たり前のように出現する。


それでも葵は、圧倒的な力で道を切り開いていった。


セレナもまた、日を追うごとに魔法の精度を高めていく。


以前は一つの魔法しか同時に扱えなかったが、今では複数の魔法陣を同時展開し、戦況を支配するまでになっていた。


「ライトニングランス!」


「アイスウォール!」


「ウィンドカッター!」


三属性の魔法を立て続けに放ち、魔物を翻弄する。


「すごい……」


葵は素直に感心した。


「もう俺より魔法は上じゃないか?」


「そんなことありません!」


そう言いながらも、セレナの表情には確かな自信が宿っていた。


一方で――クロードは違った。


確実に強くはなっている。


だが、葵やセレナほどの急激な成長はない。


敵が強くなるほど、その差は少しずつ広がっていく。


それでもクロードは弱音を吐かず、黙々と剣を振るい続けていた。


◇ ◇ ◇


そして――百階。


巨大な扉がゆっくりと開く。


これまでとは明らかに違う威圧感が、空間全体を震わせていた。


六合が静かに告げる。


「百階の守護者です」


「このダンジョン最上層のボス……気を付けてください」


扉の奥から現れたのは、黄金の鎧を纏った巨大な騎士だった。


身長は七メートルを超え、巨大な盾と聖剣を携えている。


全身から神々しい魔力が溢れていた。


「ゴォォォォォ!」


戦いが始まる。


◇ ◇ ◇


黄金の騎士は、圧倒的に強かった。


これまでのボスとは比べ物にならない。


クロードが前に出る。


「通しません!」


剣と盾が激しくぶつかり合う。


ガァァァン!!


重い衝撃。


何度斬りかかっても、黄金の騎士はびくともしない。


「まだだ!」


クロードは必死に食らいつく。


セレナも後方から魔法を放ち続ける。


「エクスプロージョン!」


爆炎が戦場を包む。


しかし煙の中から、黄金の騎士が飛び出した。


無傷。


「硬すぎる……!」


葵も前へ出る。


「俺も行く!」


三人は連携し、少しずつ傷を刻んでいく。


長い死闘の末――。


「これで終わりだ!」


葵の渾身の一撃が、黄金の騎士を貫いた。


ズバァァァァン!!


巨体は静かに崩れ落ちる。


百階――攻略完了。


◇ ◇ ◇


静まり返ったボス部屋。


その中央に、転移石が現れる。


さらにその隣に、美しく輝く巨大な水晶が出現した。


「これは……」


六合が目を見開く。


「ダンジョンコアです」


「通常、このような場所に現れるものではありません」


その瞬間、コアから柔らかな光が広がった。


『百階踏破を確認』


『報酬を選択してください』


三つの光が浮かび上がる。


一つ目。


『ランダムマジックアイテム獲得』


二つ目。


『基礎能力向上』


三つ目。


『ランダムスキル・魔法獲得』


「選べるのか」


葵は腕を組む。


「全部欲しいな」


「私もです」


セレナも真剣な表情を浮かべる。


クロードも悩み始めた。


「どれも魅力的ですね」


その時だった。


『ねぇ』


聞き慣れた優しい声が響く。


晴明だった。


「僕に選ばせてもらってもいいかな?」


葵は迷わず頷く。


「もちろん」


「俺は詳しくないし、任せる」


クロードたちも異論はない。


「お願いします」


晴明は柔らかく微笑んだ。


「ありがとう」


そしてゆっくりとダンジョンコアへ歩み寄る。


誰も見たことのない文字を、空中に描き始めた。


晴明は静かにコアへ手を触れた。


次の瞬間――。


コアが七色に輝く。


ゴゴゴゴゴ……。


部屋全体が揺れた。


『管理者権限を確認』


『封印解除』


『隠し領域を開放します』


空間がゆっくりと裂けていく。


そこに現れたのは、一枚の木製の扉だった。


「扉……?」


誰もが言葉を失う。


晴明だけが、懐かしそうに微笑んでいた。


「こっちだよ」


「付いておいで」


扉が開く。


眩い光。


そして――。


全員が息を呑んだ。


そこに広がっていたのは、どこまでも続く青空。


風に揺れる緑の草原。


小鳥のさえずり。


その中心に、一軒の小さな木造の家が建っていた。


「……何ここ」


葵が呟く。


「ダンジョンの中だよな?」


六合も信じられない表情を浮かべる。


「こんな空間……聞いたこともありません」


晴明は家を見つめ、懐かしそうに言った。


「変わってないな」


そして歩き出す。


家の前まで来ると、大きな声で呼んだ。


「おーい!」


「久しぶり!」


「いるんだろ?」


数秒後、玄関の扉がゆっくりと開く。


現れたのは、二十代前半ほどの青年。


長い銀髪を後ろで束ね、穏やかな笑みを浮かべている。


青年は晴明を見ると、目を見開いた。


「……本当に」


「帰ってきたんだね」


葵たちは、その青年をただ呆然と見つめるしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。