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四十階を突破した葵達は、その勢いのまま攻略を続けた。
四十一階。
四十五階。
五十階。
階層を重ねるごとに魔物は確実に強くなっていく。
しかし、それ以上に葵達も成長していた。
◇ ◇ ◇
「セレナ!」
「右だ!」
「はい!」
セレナが杖を掲げる。
「フレイムランス!」
以前とは比べ物にならない速度で魔法陣が展開される。
次の瞬間。
何本もの炎の槍が空を裂き、魔物を正確に貫いた。
ドドドドドッ!!
「すご……。」
葵が思わず声を漏らす。
以前のセレナなら一本撃つだけでも時間が掛かっていた。
今では詠唱も短く、威力も精度も段違いだった。
六合が満足そうに頷く。
「完全に才能が開花し始めていますね。」
「魔力操作も格段に上達しています。」
セレナは少し照れ臭そうに笑った。
「皆さんのおかげです。」
「まだまだ頑張ります!」
◇ ◇ ◇
一方。
クロードは違った。
「はぁっ!」
剣を振るう。
だが。
以前なら一撃で倒せていた魔物へ二撃、三撃と必要になってきていた。
「くっ……!」
魔物を倒しても息が乱れる。
葵はそんなクロードを何度も助けていた。
「大丈夫か?」
「申し訳ありません。」
クロードは苦笑する。
「足を引っ張っていますね。」
「そんなことない。」
「クロードが前衛にいてくれるから助かってる。」
「ですが……。」
クロードは自分の手を見つめる。
「以前より皆さんとの差を感じます。」
その言葉へ誰も返せなかった。
◇ ◇ ◇
その後も攻略は続く。
六十階。
七十階。
八十階。
以前なら一階攻略するだけでも数日掛かっていた。
今では一日に何階も突破していく。
葵は完全に新しい力を自分のものにし始めていた。
そして。
セレナもSランク級魔法を少しずつ扱えるようになってきていた。
だが。
クロードだけは違った。
成長している。
それは間違いない。
それでも。
葵とセレナの伸び方が異常過ぎた。
◇ ◇ ◇
そして――。
八十九階。
最後の魔物を倒し終える。
「これで八十九階。」
セレナが汗を拭う。
「次はいよいよ九十階ですね。」
クロードは静かに頷く。
「節目の階層です。」
葵は剣を肩へ担ぐ。
「行こう。」
全員が頷いた。
◇ ◇ ◇
九十階。
巨大な扉がゆっくりと開く。
現れたのは。
六本の腕を持つ巨大な鬼神。
全身から禍々しい魔力が溢れている。
六合が表情を引き締めた。
「オーガロード・エンペラー。」
「九十階の支配者です。」
「SSランク。」
「これまでとは別格です。」
咆哮。
次の瞬間。
鬼神が消えた。
「速っ!」
クロードが飛び出す。
「葵には行かせません!」
真正面から剣を合わせる。
ガァァァン!!
凄まじい衝撃。
クロードは吹き飛ばされる。
それでも立ち上がる。
「まだです!」
何度も立ち向かう。
だが。
実力差は大きかった。
鬼神の六本の腕が一斉に襲い掛かる。
「クロード!」
葵が叫ぶ。
間に合わない。
ズドォォォン!!
クロードの身体が壁へ叩き付けられる。
「がはっ……!」
大量の血を吐く。
右腕は折れ。
鎧も砕け散っていた。
「クロードさん!」
セレナが駆け寄る。
「大丈夫です……。」
そう言いながらも立てない。
クロードは悔しそうに拳を握った。
「また……。」
「守れませんでした。」
その瞬間。
葵の身体が静かに動いた。
「もう十分だ。」
一歩。
また一歩。
鬼神へ近付く。
「ここからは俺がやる。」
鬼神が六本の腕を振り上げる。
だが。
今の葵には遅かった。
一閃。
ズバァァァァン!!
鬼神の六本の腕が宙を舞う。
続く二撃目。
巨体は真っ二つになり、そのまま崩れ落ちた。
戦いは一瞬だった。
◇ ◇ ◇
「終わった……。」
セレナが呟く。
クロードだけは笑えなかった。
「また……。」
「また助けられた。」
拳を震わせる。
「私は……。」
「何も出来なかった。」
その姿を。
葵の奥で静かに見つめる存在がいた。
――晴明。
「そんな顔をしなくていい。」
優しい声がクロードへ届く。
クロードは驚いて顔を上げた。
目の前には。
白い羽織を纏った青年。
「あなたは……。」
穏やかに微笑む晴明。
「君の力は。」
「そんなものじゃない。」
「まだ眠っているだけだ。」
クロードは黙って話を聞く。
「焦る必要はない。」
「君には君だけの戦い方がある。」
「それは、まだ始まってもいない。」
クロードは静かに拳を握った。
「……ですが。」
「今のままでは。」
晴明は笑う。
「だったら。」
「まずは百階を目指そう。」
「そこまで辿り着けば。」
「きっと君にも見えるものがある。」
クロードは少し不安そうな表情を浮かべながらも、小さく頷いた。
「……はい。」
「必ず。」
「百階まで辿り着いてみせます。」
晴明は満足そうに笑う。
「その意気だ。」
その姿はゆっくりと光へ溶けていった。
クロードは胸へ手を当てる。
そこには、不思議と先程までの焦りはなかった。
新たな目標。
それは――。
百階到達だった。




