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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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重厚な扉がゆっくりと開く。


ゴゴゴゴゴ……。


奥から流れ出てきた魔力だけで、床が小さく震えた。


「この魔力……。」


セレナが思わず息を呑む。


「今までのボスとは比べ物になりません。」


広い空間の中央。


一体の魔物が静かに立っていた。


身長は五メートルほど。


漆黒の鎧を纏い、巨大な大剣を肩へ担いでいる。


兜の奥から覗く紅い双眸が、ゆっくりと葵達を見据えた。


「オォォォォォ……。」


低い唸り声だけで空気が震える。


六合が静かに口を開く。


「ダークジェネラル。」


「四十階のボスです。」


「Sランク上位。」


「王国騎士団でも討伐隊を組む相手ですね。」


クロードが剣を握り直す。


「油断出来ません。」


セレナも魔力を練り始める。


「いつでも行けます。」


葵はボスから目を離さず、小さく呟いた。


「……なるほど。」


「強いな。」


ダークジェネラルが大剣をゆっくりと構える。


次の瞬間。


ズドォン!!


床を砕きながら一直線に突っ込んできた。


「速い!」


クロードが叫ぶ。


だが。


葵には見えていた。


「俺が行く。」


一歩前へ出る。


以前なら見失っていた速度。


今は違う。


剣筋。


重心。


力の流れ。


全てが鮮明に見える。


(ここだ。)


葵は静かに踏み込んだ。


カンッ!!


剣と大剣がぶつかる。


凄まじい衝撃が部屋中へ響き渡る。


しかし。


葵は一歩も引かない。


「え……?」


クロードが目を見開く。


「止めた……?」


ダークジェネラルも驚いたように一瞬動きを止めた。


その僅かな隙。


葵は迷わず踏み込む。


「はっ!」


二撃。


三撃。


四撃。


目にも止まらぬ連撃が漆黒の鎧へ叩き込まれる。


ガガガガガッ!!


分厚い鎧へ次々と亀裂が走る。


「嘘……。」


セレナが言葉を失う。


以前なら三人掛かりでも苦戦しただろう相手。


それを葵一人が押している。


怒り狂ったダークジェネラルが咆哮を上げた。


「グオォォォォ!!」


漆黒の魔力が巨大な大剣へ集中する。


「葵様!」


六合が叫ぶ。


「その一撃だけは危険です!」


巨大な斬撃が振り下ろされる。


空間そのものを裂くような一撃。


だが。


葵は静かに息を吐いた。


(焦らない。)


(力を押し込むんじゃない。)


(自然に流す。)


晴明の言葉を思い出す。


ゆっくりと魔力を剣へ流し込む。


以前のような暴走はない。


今なら扱える。


「これで終わりだ。」


静かに剣を振るう。


ズバァァァァァァァン!!


黄金にも蒼にも見える一閃。


巨大な斬撃が一直線に走る。


ダークジェネラルは反応する間もなく。


鎧ごと真っ二つに斬り裂かれた。


数秒。


巨体はその場へ立ち尽くし。


ゆっくりと崩れ落ちる。


ドォォォォン!!


静寂。


「…………。」


誰も動かなかった。


最初に口を開いたのはクロードだった。


「終わり……ですか?」


六合が静かに頷く。


「はい。」


「ボスの魔力反応が消えました。」


「四十階攻略完了です。」


セレナは苦笑しながら肩を落とした。


「私達……。」


「応援しかしてませんね。」


葵は頭を掻く。


「いや。」


「俺もびっくりしてる。」


「ここまで差があるとは思わなかった。」


青龍が静かに頷く。


「ようやく身体が力へ追い付き始めました。」


はなも嬉しそうに笑う。


「ご主人様。」


「もう前みたいに力加減を間違えることも少なくなりましたね。」


その時だった。


ダークジェネラルが消えた場所へ、青白い光が集まり始める。


やがて一つの石が姿を現した。


「転移石ですね。」


六合が微笑む。


「四十階攻略完了です。」


クロードは安堵したように息を吐く。


「帰りましょう。」


セレナも笑顔で頷いた。


「久しぶりにゆっくりご飯が食べられそうですね。」


葵は転移石を見つめ、小さく笑う。


「思ったより早く終わったな。」


青龍が穏やかに答える。


「それだけ葵様が強くなられた証です。」


「……まだまだだけどな。」


そう言いながら、葵は転移石へ手を伸ばした。


淡い光が全員を包み込む。


次の瞬間。


葵達の姿はダンジョンから消えていた。


ファルンダンジョン四十階――攻略完了だった。

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