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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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累計で2500PV行きました♪読んで下さっている皆様に感謝です。ただ忙しくストックも無くなったので更新頻度が下がっております。申し訳ございません。

「……ん。」


ゆっくりと目を開ける。


見慣れた宿の天井だった。


「ここは……。」


身体を起こそうとした瞬間。


「いっっっ!」


全身へ激痛が走る。


指一本動かすだけでも痛い。


「……何これ。」


「全身筋肉痛の百倍ぐらいあるんだけど。」


その様子を見ていたはなが、呆れたように笑う。


「だから言ったじゃないですか。」


「今回は無茶し過ぎだって。」


「晴明様もかなり疲れていたみたいですし。」


「反動が来るって。」


葵は天井を見上げたまま、大きくため息を吐いた。


「……やっぱりか。」


「身体が全然動かない。」


「最低でも一週間は無理かな。」


すると、隣で本を読んでいた六合が静かに首を横へ振る。


「一週間では済みません。」


「え?」


「恐らく一か月ほど安静です。」


「…………。」


「はい?」


「えぇ。」


六合はさらりと言う。


「封印を二つ同時に解放した代償です。」


「本来なら身体が耐え切れなかった可能性もありました。」


「今こうして生きているだけでも十分奇跡ですよ。」


葵は静かに布団へ顔を埋めた。


「終わった……。」


「俺の冒険、一か月終了。」


◇ ◇ ◇


それから数日。


「ご主人様。」


「ご飯ですよ。」


「……はい。」


はなが朝食を持って来る。


「はい、あーん。」


「いや、自分で食べるから。」


「無理です。」


「右手震えてますよ?」


確かに。


スプーンを持とうとすると、小刻みに震えて全く持ち上がらない。


「……お願いします。」


「はい。」


嬉しそうなはな。


「はい、あーん。」


「……。」


「これ、恥ずかしい。」


はなはくすっと笑う。


「ご主人様。」


「子どもの頃、お母様に同じことをしてもらっていましたよ?」


「……。」


「その記憶は無い!」


「ふふっ。」


「お母様は『葵は本当に手が掛かる子だった』って笑っていました。」


「うわぁ……。」


「思い出したくない。」


部屋の外では青龍の笑い声が聞こえる。


◇ ◇ ◇


数日後。


「今日は歩く練習です。」


六合に支えられながら立ち上がる。


「おぉ……。」


「立てた。」


「一歩だけですよ。」


「分かっ――」


ドサッ。


「痛っ!」


一歩目で転ぶ。


「……。」


「笑った?」


「いえ。」


「今笑ったよね?」


「気のせいです。」


そのやり取りを見ていた青龍が肩を震わせる。


「くっ……。」


「青龍。」


「笑うなら笑え。」


「いや……。」


「失礼。」


そう言いながら背中を向ける。


肩だけ震えていた。


◇ ◇ ◇


さらに数日後。


宿の庭。


ようやく剣を握れるまで回復した。


「久しぶりだ。」


ゆっくりと素振りを始める。


一振り。


二振り。


三振り。


「よし。」


「前より軽い。」


その様子を見ていたクロードが笑う。


「流石ですね。」


「一か月寝込んでいたとは思えません。」


「いや。」


「筋肉は落ちた。」


「でも身体の動かし方が少し変わった気がする。」


青龍が静かに頷く。


「封印を一度受け入れた影響でしょう。」


「以前より魔力の流れが自然になっています。」


六合も微笑む。


「身体も、封印の力へ少しずつ適応し始めています。」


葵は何となく頷いた。


確かに。


以前より身体へ魔力が馴染んでいる感覚があった。


◇ ◇ ◇


その日の夕食。


全員で食卓を囲んでいた。


セレナが笑顔で言う。


「そういえば。」


「グレン様ですが。」


「あぁ。」


葵も思い出した。


「あの後どうしたの?」


クロードが答える。


「お身体が無事なのを確認された後、すぐ出発されました。」


「もう?」


「はい。」


「かなり急いでおられました。」


青龍が苦笑する。


「『これ以上帰るのが遅れたら、本当に父上と母上に怒られる。』」


「と言っていました。」


その言葉に全員が笑う。


六合は一通の手紙を取り出した。


「それと。」


「伝言を預かっています。」


葵は受け取る。


『身体が落ち着いたら、儂も王都へ向かう。』


『王都でまた会おう。』


『楽しみにしておるぞ。』


葵は小さく笑った。


「相変わらずだな。」


「また会えるのが楽しみだ。」


◇ ◇ ◇


そして――。


スタンピード終結から約一か月。


葵はようやく身体の違和感も消え、完全に剣を振れるまで回復した。


大きく伸びをする。


「いやぁー!」


「やっと動ける!」


久しぶりに全力で身体を動かすと、以前より身体が軽く感じる。


青龍も頷く。


「封印を一度受け入れた影響でしょう。」


「以前より魔力が身体へ馴染んでいます。」


六合も微笑む。


「以前より、さらに強くなっていますよ。」


葵は剣を腰へ差した。


「よし!」


「寝てばっかりだった分も取り返さないとな!」


クロードも笑う。


「では。」


「ファルンダンジョン攻略を再開しましょう。」


セレナも元気よく頷く。


「次はいよいよ深層ですね!」


はなは嬉しそうに笑った。


「今度は無茶しちゃダメですよ?」


「……善処します。」


「善処じゃありません。」


「はい。」


仲間達の笑い声が響く中。


葵達は再びファルンダンジョンへ向かって歩き始めた。


さらなる深層。


そして、まだ見ぬ強敵を目指して。

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