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黄金と蒼。
二つの光は葵の身体へゆっくりと降り注いだ。
ドクン――。
心臓が大きく脈打つ。
次の瞬間。
「うああああぁぁぁぁぁ!!」
凄まじい魔力が全身から噴き上がった。
黄金の魔力と蒼き魔力が渦を巻き、天井へと駆け上がる。
髪が逆立つ。
視界が一変した。
今まで速過ぎて追えなかったコアガーディアンの動きが、まるで止まって見える。
地面を流れる魔力。
空気の揺らぎ。
敵の筋肉の動き。
全てが鮮明に映る。
「これが……。」
「封印の力……。」
しかし。
次の瞬間。
全身へ激痛が走る。
「ぐっ……!」
身体中の魔力が暴れ始めた。
力が溢れ過ぎる。
剣を握る手が震える。
「制御……出来ない!」
魔力が腕を駆け巡り、勝手に暴れようとする。
今にも身体が内側から弾け飛びそうだった。
――葵。
晴明の声が優しく響く。
――焦らなくていい。
――力を押さえ込もうとするから暴れるんだ。
「でも……!」
――大丈夫。
――君はもう、一人じゃない。
――六合も。
――青龍も。
――みんなが君へ力を託してくれた。
――だから信じて。
――力を抑えるんじゃない。
――受け入れるんだ。
葵はゆっくりと息を吐いた。
力へ逆らうのをやめる。
暴れる魔力を押さえ付けるのではなく、その流れへ身を任せる。
すると。
荒れ狂っていた魔力が少しずつ一つへまとまり始めた。
「……そうか。」
「こういうことか。」
身体が軽い。
剣が羽のようだった。
その時。
「葵様!」
クロードの叫び声が響く。
振り向くと。
コアガーディアンの巨大な拳が迫っていた。
クロードはその前へ立ち塞がる。
「ここは……通しません!」
ドォォォォン!!
拳が直撃する。
「がっ!」
クロードは血を吐きながら吹き飛ばされた。
「クロード!」
セレナが咄嗟に支える。
だが、その隙を狙うようにガーディアンが腕を振るう。
「きゃあっ!」
セレナも衝撃波で地面へ叩き付けられた。
二人とも立ち上がろうとする。
しかし。
身体はもう限界だった。
「葵……様……。」
「お願いします……。」
その姿を見た瞬間。
葵の中で何かが切り替わった。
「……もう。」
「誰も傷付けさせない。」
静かに剣を構える。
晴明が優しく笑う。
――そう。
――その一太刀へ。
――君の全部を乗せるんだ。
コアガーディアンが咆哮を上げる。
巨大な魔力が拳へ集まる。
空間そのものが歪むほどの一撃。
だが。
葵は動かない。
静かに目を閉じる。
「ありがとう。」
「みんな。」
目を開く。
黄金と蒼。
二色の魔力が剣へ集まっていく。
眩い光が刃を包み込んだ。
「――神断。」
一歩。
踏み出す。
その瞬間。
世界から音が消えた。
剣がゆっくりと振り抜かれる。
ズバァァァァァァァン!!
黄金と蒼が交わった巨大な斬撃が一直線に走る。
コアガーディアンを真っ二つに斬り裂き。
そのまま後方の巨大なダンジョンコアまで貫いた。
静寂。
数秒。
誰も動けなかった。
やがて。
ピシッ。
巨大なコアへ亀裂が走る。
一本。
二本。
三本。
そして――。
パリン。
眩い光と共にダンジョンコアが砕け散った。
同時に。
暴走したコアガーディアンの身体も崩れ始める。
「ギィィィィィ……。」
最後の咆哮を残し。
光の粒となって消えていった。
辺りを包んでいた禍々しい魔力も、嘘のように消えていく。
「終わった……。」
葵は小さく呟いた。
そして。
「あ……。」
全身から一気に力が抜ける。
膝をつく。
視界が揺れる。
「やっぱり……。」
「無茶……だったか。」
そのまま前へ倒れ込んだ。
「葵様!」
クロードが最後の力を振り絞って駆け出す。
「葵!」
セレナも涙を浮かべながら駆け寄る。
同時に。
三柱を閉じ込めていた結界が音もなく砕け散った。
「ご主人様!」
はなが一番に飛び出す。
青龍と六合もすぐ後を追う。
全員が葵の周りへ集まった。
葵は薄っすらと目を開ける。
仲間達の顔がぼやけて見える。
「……勝てた?」
その一言に。
全員が安堵の笑みを浮かべた。
「はい。」
クロードは静かに頷く。
「私達の勝ちです。」
その言葉を聞いた葵は、小さく笑う。
「……よかった。」
そのまま安心したように目を閉じ、静かに意識を手放した。
誰も言葉は発さなかった。
ただ、葵を囲む仲間達の表情には、戦いを乗り越えた安堵と、彼への深い信頼が刻まれていた。




