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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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73

黄金と蒼。


二つの光は葵の身体へゆっくりと降り注いだ。


ドクン――。


心臓が大きく脈打つ。


次の瞬間。


「うああああぁぁぁぁぁ!!」


凄まじい魔力が全身から噴き上がった。


黄金の魔力と蒼き魔力が渦を巻き、天井へと駆け上がる。


髪が逆立つ。


視界が一変した。


今まで速過ぎて追えなかったコアガーディアンの動きが、まるで止まって見える。


地面を流れる魔力。


空気の揺らぎ。


敵の筋肉の動き。


全てが鮮明に映る。


「これが……。」


「封印の力……。」


しかし。


次の瞬間。


全身へ激痛が走る。


「ぐっ……!」


身体中の魔力が暴れ始めた。


力が溢れ過ぎる。


剣を握る手が震える。


「制御……出来ない!」


魔力が腕を駆け巡り、勝手に暴れようとする。


今にも身体が内側から弾け飛びそうだった。


――葵。


晴明の声が優しく響く。


――焦らなくていい。


――力を押さえ込もうとするから暴れるんだ。


「でも……!」


――大丈夫。


――君はもう、一人じゃない。


――六合も。


――青龍も。


――みんなが君へ力を託してくれた。


――だから信じて。


――力を抑えるんじゃない。


――受け入れるんだ。


葵はゆっくりと息を吐いた。


力へ逆らうのをやめる。


暴れる魔力を押さえ付けるのではなく、その流れへ身を任せる。


すると。


荒れ狂っていた魔力が少しずつ一つへまとまり始めた。


「……そうか。」


「こういうことか。」


身体が軽い。


剣が羽のようだった。


その時。


「葵様!」


クロードの叫び声が響く。


振り向くと。


コアガーディアンの巨大な拳が迫っていた。


クロードはその前へ立ち塞がる。


「ここは……通しません!」


ドォォォォン!!


拳が直撃する。


「がっ!」


クロードは血を吐きながら吹き飛ばされた。


「クロード!」


セレナが咄嗟に支える。


だが、その隙を狙うようにガーディアンが腕を振るう。


「きゃあっ!」


セレナも衝撃波で地面へ叩き付けられた。


二人とも立ち上がろうとする。


しかし。


身体はもう限界だった。


「葵……様……。」


「お願いします……。」


その姿を見た瞬間。


葵の中で何かが切り替わった。


「……もう。」


「誰も傷付けさせない。」


静かに剣を構える。


晴明が優しく笑う。


――そう。


――その一太刀へ。


――君の全部を乗せるんだ。


コアガーディアンが咆哮を上げる。


巨大な魔力が拳へ集まる。


空間そのものが歪むほどの一撃。


だが。


葵は動かない。


静かに目を閉じる。


「ありがとう。」


「みんな。」


目を開く。


黄金と蒼。


二色の魔力が剣へ集まっていく。


眩い光が刃を包み込んだ。


「――神断。」


一歩。


踏み出す。


その瞬間。


世界から音が消えた。


剣がゆっくりと振り抜かれる。


ズバァァァァァァァン!!


黄金と蒼が交わった巨大な斬撃が一直線に走る。


コアガーディアンを真っ二つに斬り裂き。


そのまま後方の巨大なダンジョンコアまで貫いた。


静寂。


数秒。


誰も動けなかった。


やがて。


ピシッ。


巨大なコアへ亀裂が走る。


一本。


二本。


三本。


そして――。


パリン。


眩い光と共にダンジョンコアが砕け散った。


同時に。


暴走したコアガーディアンの身体も崩れ始める。


「ギィィィィィ……。」


最後の咆哮を残し。


光の粒となって消えていった。


辺りを包んでいた禍々しい魔力も、嘘のように消えていく。


「終わった……。」


葵は小さく呟いた。


そして。


「あ……。」


全身から一気に力が抜ける。


膝をつく。


視界が揺れる。


「やっぱり……。」


「無茶……だったか。」


そのまま前へ倒れ込んだ。


「葵様!」


クロードが最後の力を振り絞って駆け出す。


「葵!」


セレナも涙を浮かべながら駆け寄る。


同時に。


三柱を閉じ込めていた結界が音もなく砕け散った。


「ご主人様!」


はなが一番に飛び出す。


青龍と六合もすぐ後を追う。


全員が葵の周りへ集まった。


葵は薄っすらと目を開ける。


仲間達の顔がぼやけて見える。


「……勝てた?」


その一言に。


全員が安堵の笑みを浮かべた。


「はい。」


クロードは静かに頷く。


「私達の勝ちです。」


その言葉を聞いた葵は、小さく笑う。


「……よかった。」


そのまま安心したように目を閉じ、静かに意識を手放した。


誰も言葉は発さなかった。


ただ、葵を囲む仲間達の表情には、戦いを乗り越えた安堵と、彼への深い信頼が刻まれていた。

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