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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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激戦の末。


最後のアイアンオーガを葵が斬り伏せる。


「はぁ……。」


肩で息をする葵。


クロードも剣を地面へ突き立て、大きく息を吐いた。


「ようやく……終わりましたか。」


セレナも額の汗を拭う。


「一階で、この強さなんて……。」


三人が振り返る。


そこにはSランク魔物の亡骸が転がっていた。


青龍は袖についた血を軽く払う。


「終わりました。」


はなも首を回す。


「少し身体が温まったかな。」


六合だけは周囲を警戒し続けている。


「休憩は短めに。」


「魔物が再び集まり始めています。」


「行こう。」


葵の一言で再び歩き始める。


◇ ◇ ◇


二階へ続く階段を降りた瞬間。


全員が違和感を覚えた。


「静か……?」


セレナが辺りを見回す。


一階とは違い魔物の姿が見えない。


「気を付けてください。」


六合が警戒を強める。


「嫌な感じがします。」


慎重に進み始めた、その時だった。


ガコン。


「!」


葵の足元で何かが動く。


「伏せろ!」


六合の叫び。


次の瞬間。


壁一面から無数の矢が飛び出した。


ガガガガガガッ!!


「うわっ!」


葵は咄嗟に転がる。


クロードが剣で矢を弾き。


セレナは風魔法で軌道を逸らす。


しかし。


「きゃっ!」


一本の矢がセレナの肩を掠める。


「大丈夫!」


「かすっただけです!」


その直後。


天井が揺れる。


ゴゴゴゴゴ……。


「上!」


巨大な岩が落下してくる。


はなが拳で砕く。


ドォォン!!


「危ないですね。」


「罠まであるとは。」


六合が静かに呟く。


「コア暴走の影響でしょう。」


「通常より危険度が上昇しています。」


罠を抜けたと思った瞬間だった。


「グガァァァァ!!」


通路の奥から魔物が押し寄せる。


一階以上の数。


しかも。


Aランクが当たり前のように混ざっている。


さらに奥には二体のSランク。


「またか!」


葵は剣を構える。


「いつも通りです。」


青龍が雷を纏う。


「Sランクはこちらで。」


「任せます!」


再び戦闘開始。


狭い通路。


逃げ場がない。


クロードは正面から迫るブラッドベアの一撃を受け流す。


だが。


横から別の魔物が襲う。


「しまっ……!」


「クロード!」


葵が体当たりで吹き飛ばす。


その隙にセレナの魔法が炸裂。


「ウィンドカッター!」


無数の風刃が魔物を切り裂く。


しかし。


今度は床が光る。


「また罠!」


ボン!!


床から炎柱が噴き上がる。


「熱っ!」


葵の腕が焼ける。


直後。


魔物の爪が胸を掠めた。


鮮血が飛ぶ。


「葵!」


「大丈夫!」


そう答えながらも息は荒い。


戦う。


罠。


戦う。


また罠。


休む暇すらない。


クロードの肩も裂け。


セレナの足にも深い傷が入る。


三柱も余裕はない。


青龍は巨大な雷槍でSランクを貫き。


はなは全身を氷で覆った巨獣を殴り飛ばす。


六合は三人へ結界を張り直しながら魔法で援護を続ける。


「左!」


「後ろ!」


「前!」


声を掛け合い。


誰一人倒れることなく。


少しずつ。


少しずつ。


魔物の数を減らしていく。


そして――。


最後の魔物が崩れ落ちた。


静寂。


誰も立ったまま息を整えるのがやっとだった。


「終わっ……た。」


葵がその場へ座り込む。


クロードも膝をつく。


「ここまでとは……。」


セレナも壁へ寄り掛かった。


「本当に三階しかないんでしょうか……。」


六合は静かに頷く。


「間違いありません。」


「次が最下層です。」


全員が満身創痍だった。


服は裂け。


身体中に傷が刻まれている。


葵は異空間倉庫を開いた。


「みんな。」


「回復しよう。」


神薬を取り出し、それぞれへ手渡す。


全員が一気に飲み干した。


淡い光が身体を包み。


裂けた傷が塞がり。


疲労も一瞬で消えていく。


「……本当に。」


「反則級ですね。」


クロードが苦笑する。


セレナも自分の身体を見つめた。


「これが無ければ……。」


「二階で終わっていました。」


葵は最後の一本を飲み干し、ゆっくり立ち上がる。


目の前には、三階へ続く階段。


六合が静かに告げる。


「この先が最奥です。」


「ダンジョンコア。」


「そして暴走したガーディアンが待っています。」


青龍が拳を握る。


「ここが正念場ですね。」


はなも静かに笑った。


「ご主人様。」


「行きましょう。」


葵は全員を見渡す。


「ここを越えれば。」


「スタンピードは止まる。」


「絶対に終わらせよう。」


「「「はい!!」」」


全員の声が重なる。


覚悟を決めた一行は、最終決戦の待つ三階へ足を踏み入れた。

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