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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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ダンジョンへ入る直前。


葵は異空間倉庫を開いた。


「みんな、これ持って。」


次々と取り出される小瓶。


中には淡い金色に輝く液体が入っている。


クロードが目を丸くした。


「神薬ですか?」


「うん。」


「俺はまだ沢山持ってるから遠慮しないで。」


「一本ずつじゃない。」


「何本か持っておいて。」


セレナは戸惑う。


「ですが……。」


「こんな貴重な物を……。」


葵は笑った。


「命の方が大事。」


「使わずに死ぬ方がもったいない。」


その言葉に二人は頷いた。


「ありがとうございます。」


「助かります。」


三柱にも神薬を渡す。


はなは苦笑した。


「ご主人様。」


「私達には必要ないと思いますけど?」


「いや。」


「もしもの時はある。」


「遠慮なく使って。」


青龍も六合も静かに受け取る。


「承知しました。」


「ありがとうございます。」


そして葵は一本取り出す。


「入る前に一本飲んどこう。」


「万全で行きたい。」


クロードとセレナも頷き、それぞれ神薬を飲み干した。


疲労が一瞬で消える。


全身へ力が満ちていく。


「何度飲んでも……。」


「信じられない効果ですね。」


クロードが驚く。


セレナも自分の手を握った。


「これなら……。」


「全力で戦えます。」


葵はダンジョンを見上げる。


「行こう。」


「このスタンピードを止める。」


全員が頷き、新たに生まれたダンジョンへ足を踏み入れた。


◇ ◇ ◇


一階へ入った瞬間だった。


「グルァァァ!!」


無数の咆哮が響く。


「いきなりか!」


葵が剣を抜く。


目の前には数十体の魔物。


その中でも一際大きな影が前へ出た。


「……。」


クロードの表情が変わる。


「アイアンオーガ。」


「冒険者ランクA指定です。」


その隣では巨大な狼が牙を剥く。


「ブラッドフェンリル。」


「こちらもAランク。」


さらに奥。


禍々しい魔力を放つ巨大な黒い騎士が立っていた。


「……!」


セレナが息を呑む。


「デスロード。」


「Sランクです。」


「一階からSランク?」


葵も驚く。


普通のダンジョンでは考えられない。


だが。


六合は冷静だった。


「コアが暴走しております。」


「魔物の強さも通常ではありません。」


青龍が前へ出る。


「Sランクは私達が引き受けます。」


はなも拳を鳴らす。


「ご主人様はAランク以下をお願いします。」


「任せろ!」


戦闘開始。


青龍が雷を纏い、一瞬でデスロードへ迫る。


轟音。


雷と黒い剣が正面からぶつかった。


同時にはなも巨大な魔狼へ飛び込む。


鋭い爪が火花を散らす。


六合は結界を展開しながら魔法を放つ。


三柱は自然とSランクだけを引き受けていた。


「クロード!」


「右!」


「はい!」


クロードがアイアンオーガの懐へ潜り込み、一太刀。


しかし浅い。


逆に巨大な棍棒が振り下ろされる。


「くっ!」


受け止める。


腕が痺れる。


「硬い!」


「セレナ!」


「援護!」


「任せて!」


風魔法が炸裂。


オーガの体勢が崩れた。


「今だ!」


葵が飛び込む。


「はぁぁぁぁ!!」


全力の一撃。


首元へ剣が食い込み、そのまま切り裂く。


ドォン!!


巨大な身体が倒れた。


だが休む暇はない。


「後ろ!」


セレナの声。


ブラッドフェンリルが飛び掛かる。


葵は身体を捻って避ける。


牙が頬を掠めた。


「危なっ!」


クロードが追撃。


セレナの魔法。


三人で一体ずつ確実に数を減らしていく。


それでも。


次から次へと魔物が現れる。


「まだいるのか!」


「終わりません!」


汗が流れる。


息も荒い。


その時。


奥から巨大な咆哮が響いた。


「ゴォォォォォ!!」


新たなAランク魔物。


さらに奥には、もう一体Sランク指定の魔物が姿を現す。


青龍が小さく笑う。


「次が来ましたか。」


「飽きませんね。」


はなも拳を握る。


「久しぶりに本気を出せそう。」


三柱が新たなSランクへ向かう。


その背中を見送りながら、葵は剣を構え直した。


「俺達も負けてられない。」


「行くぞ!」


「はい!」


「もちろん!」


再び三人は魔物の群れへ飛び込んでいった。


一階は、想像を遥かに超える激戦となっていく。

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