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グレンの参戦により戦況は大きく変わった。
葵達も冒険者達も苦戦しながらも、確実に魔物を迎撃していく。
先程まで押されていた戦場が、少しずつ前へ押し返され始めていた。
そんな中、葵はふとグレンへ視線を向ける。
「……。」
思わず言葉を失った。
笑みを浮かべながら聖剣を振るうグレン。
剣を一振りする度に何十体もの魔物が吹き飛び、次の瞬間には別の群れへ飛び込んでいく。
まるで散歩でもしているかのような軽い足取り。
それでいて、周囲には魔物の死体だけが積み上がっていく。
「……。」
「……。」
葵、クロード、セレナの三人は思わず顔を見合わせた。
「……あの人。」
「めちゃくちゃ強いですね。」
クロードが呆れたように呟く。
「いや……。」
「強いってレベルじゃないよ。」
セレナも乾いた笑みを浮かべる。
葵も苦笑した。
「……あの爺さん。」
「一人で全部解決できるんじゃね?」
そんな冗談を言いながらも戦い続ける。
しかし――。
どれだけ倒しても、魔物は次から次へと現れる。
終わりが見えない。
グレンもその様子を見て小さく息を吐いた。
「こりゃあ……。」
「魔物を生み出しておるダンジョンを潰さんと駄目じゃな。」
そう言うと、聖剣を大きく振りかぶる。
「ふんっ!」
眩い斬撃が一直線に放たれる。
進行方向にいた魔物達が一瞬で吹き飛び、大地には一直線の道が出来上がった。
グレンはその道を指差す。
「ここはワシが抑える。」
「お主達はダンジョンを潰しに行け!」
突然の指示に葵達は一瞬戸惑う。
だが後ろを振り返ると、グレンは一人で魔物の大群へ突っ込んでいた。
魔物達が次々と宙を舞い、悲鳴を上げる暇もなく消えていく。
「……。」
葵は思わず呟いた。
「やっぱり……。」
「あの爺さん一人で全部解決できるんじゃね?」
「そんな気もしますが……。」
「今は信じて進みましょう。」
クロードの言葉に二人も頷く。
三人は道を駆け抜け、スタンピードの発生源と思われる場所へ向かった。
そこには、漆黒のダンジョンが口を開けていた。
入口からは今もなお、魔物達が次々と湧き出している。
六合は静かに目を閉じる。
「……確認します。」
淡い光が広がり、術式が展開された。
数秒後、六合は目を開く。
「階層は三階。」
「最奥に非常に強い魔力反応があります。」
葵が眉をひそめる。
「三階しかないのに?」
「はい」
「恐らく生まれたばかりのダンジョンでしょう。」
「ですが、この規模のスタンピードが発生している理由も分かりました。」
六合の表情が険しくなる。
「先程の魔族達が、ダンジョンコアを暴走させたのでしょう。」
「恐らく最奥には、コアを守るガーディアンが存在します。」
「通常ではあり得ないほど強力な個体になっているはずです。」
「このまま放置すれば――。」
「ダンジョンコアの魔力が尽きるまで、スタンピードは止まりません。」
葵は静かに尋ねた。
「ちなみに……。」
「尽きるのは?」
六合は少しだけ間を置いた。
「現在の放出量ですと……。」
「少なくとも一週間以上は続くでしょう。」
その言葉に、その場が静まり返る。
「……。」
「一週間。」
葵は小さく息を吐いた。
「放置して、魔物と戦い続けるって選択肢は……無しか。」
誰も答えない。
答えは決まっていた。
葵はダンジョンの入口を見据える。
「行こう。」
「このダンジョンを止める。」
その言葉に全員が頷き、新たに生まれたダンジョンへ足を踏み入れた。




