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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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68

グレンの参戦により戦況は大きく変わった。


葵達も冒険者達も苦戦しながらも、確実に魔物を迎撃していく。


先程まで押されていた戦場が、少しずつ前へ押し返され始めていた。


そんな中、葵はふとグレンへ視線を向ける。


「……。」


思わず言葉を失った。


笑みを浮かべながら聖剣を振るうグレン。


剣を一振りする度に何十体もの魔物が吹き飛び、次の瞬間には別の群れへ飛び込んでいく。


まるで散歩でもしているかのような軽い足取り。


それでいて、周囲には魔物の死体だけが積み上がっていく。


「……。」


「……。」


葵、クロード、セレナの三人は思わず顔を見合わせた。


「……あの人。」


「めちゃくちゃ強いですね。」


クロードが呆れたように呟く。


「いや……。」


「強いってレベルじゃないよ。」


セレナも乾いた笑みを浮かべる。


葵も苦笑した。


「……あの爺さん。」


「一人で全部解決できるんじゃね?」


そんな冗談を言いながらも戦い続ける。


しかし――。


どれだけ倒しても、魔物は次から次へと現れる。


終わりが見えない。


グレンもその様子を見て小さく息を吐いた。


「こりゃあ……。」


「魔物を生み出しておるダンジョンを潰さんと駄目じゃな。」


そう言うと、聖剣を大きく振りかぶる。


「ふんっ!」


眩い斬撃が一直線に放たれる。


進行方向にいた魔物達が一瞬で吹き飛び、大地には一直線の道が出来上がった。


グレンはその道を指差す。


「ここはワシが抑える。」


「お主達はダンジョンを潰しに行け!」


突然の指示に葵達は一瞬戸惑う。


だが後ろを振り返ると、グレンは一人で魔物の大群へ突っ込んでいた。


魔物達が次々と宙を舞い、悲鳴を上げる暇もなく消えていく。


「……。」


葵は思わず呟いた。


「やっぱり……。」


「あの爺さん一人で全部解決できるんじゃね?」


「そんな気もしますが……。」


「今は信じて進みましょう。」


クロードの言葉に二人も頷く。


三人は道を駆け抜け、スタンピードの発生源と思われる場所へ向かった。


そこには、漆黒のダンジョンが口を開けていた。


入口からは今もなお、魔物達が次々と湧き出している。


六合は静かに目を閉じる。


「……確認します。」


淡い光が広がり、術式が展開された。


数秒後、六合は目を開く。


「階層は三階。」


「最奥に非常に強い魔力反応があります。」


葵が眉をひそめる。


「三階しかないのに?」


「はい」


「恐らく生まれたばかりのダンジョンでしょう。」


「ですが、この規模のスタンピードが発生している理由も分かりました。」


六合の表情が険しくなる。


「先程の魔族達が、ダンジョンコアを暴走させたのでしょう。」


「恐らく最奥には、コアを守るガーディアンが存在します。」


「通常ではあり得ないほど強力な個体になっているはずです。」


「このまま放置すれば――。」


「ダンジョンコアの魔力が尽きるまで、スタンピードは止まりません。」


葵は静かに尋ねた。


「ちなみに……。」


「尽きるのは?」


六合は少しだけ間を置いた。


「現在の放出量ですと……。」


「少なくとも一週間以上は続くでしょう。」


その言葉に、その場が静まり返る。


「……。」


「一週間。」


葵は小さく息を吐いた。


「放置して、魔物と戦い続けるって選択肢は……無しか。」


誰も答えない。


答えは決まっていた。


葵はダンジョンの入口を見据える。


「行こう。」


「このダンジョンを止める。」


その言葉に全員が頷き、新たに生まれたダンジョンへ足を踏み入れた。

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