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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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ベルゼル達四人の表情が、一変した。


「そ、その剣は……。」


槍使いが思わず後ずさる。


「聖剣……。」


ベルゼルが目を見開く。


「貴様……勇者か!」


少年は首を傾げる。


「まぁ、そうじゃの。」


まるで世間話でもするような軽い返事だった。


「で?」


「やるんか?」


剣を肩へ担ぎ、のんびりと笑う。


「できれば、このまま帰ってくれるとありがたいんじゃがの。」


軽い口調。


だが、その一言だけで四人は動けなかった。


「…………。」


誰も答えない。


ベルゼル達は互いに視線を交わす。


(今なら……。)


(今ならゼノスを討てる。)


今の葵はまだ未熟。


前世の力も戻っていない。


この機会を逃せば。


二度とゼノスを討てる機会は訪れないかもしれない。


だが――。


相手は勇者。


しかも聖剣を持つ、本物。


四人掛かりでも勝てる保証はない。


仮に全員で挑めば。


相打ち覚悟で勇者を食い止め、その隙に誰か一人がゼノスへ辿り着けるかどうか。


それすら分からない。


あまりにも分の悪い賭けだった。


老人が静かに目を閉じる。


「……撤退しましょう。」


「何?」


ベルゼルが振り向く。


老人はゆっくり首を振った。


「ここで我らが全滅すれば。」


「魔王様へ顔向けできません。」


「ゼノスはまだ未完成。」


「また機会は訪れます。」


「ですが勇者は……。」


老人は少年を見つめる。


「今、この場で相手をしてはならない存在です。」


しばらくの沈黙。


やがてベルゼルは舌打ちした。


「……チッ。」


「仕方ねぇ。」


少年へ剣先を向ける。


「勇者。」


「今日は運が良かったな。」


少年は苦笑した。


「いやいや。」


「運が良かったのは、お主らの方じゃよ。」


「儂も今日は、あまり暴れたくないんでの。」


ベルゼル達四人はゆっくりと後退する。


そして。


黒い魔法陣が足元へ広がった。


「ゼノス。」


ベルゼルは最後に葵を見つめる。


「必ず殺す。」


「次は逃がさん。」


黒い光が四人を包み込み――。


その姿は戦場から消え去った。

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