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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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戦場は完全に二つへ分かれていた。


十二柱と十二魔将。


そして――


葵達と漆黒の槍使い。


◇ ◇ ◇


「ハハハハッ!」


ベルゼルの大剣が振り下ろされる。


「どうした青龍!」


「昔はもっと楽しませてくれただろう!」


「黙れ!」


轟雷が走る。


青龍の雷槍とベルゼルの大剣が激突し、凄まじい衝撃波が周囲の魔物をまとめて吹き飛ばした。


一歩も引かない。


一歩も譲らない。


まさに互角。


「これが……。」


「世界を救った者達の戦いか。」


遠くから見ていた冒険者達は言葉を失っていた。


◇ ◇ ◇


「白虎。」


「少しは笑ったらどう?」


妖艶な魔将が妖しく微笑む。


「あなたを見て笑える趣味はありません。」


はなが静かに答える。


瞬間。


周囲一帯が凍り付いた。


氷柱が何十本も地面から突き出し、それを黒い魔力が次々と砕いていく。


氷。


闇。


互いの魔法がぶつかるたび、空気そのものが悲鳴を上げる。


「相変わらず綺麗な魔法ねぇ。」


「褒め言葉として受け取っておきます。」


こちらも一歩も動かない。


完全な均衡だった。


◇ ◇ ◇


六合の前では、老人と無数の魔法陣が空中へ浮かんでいた。


「結界。」


「拘束。」


「封印。」


老人は次々と魔法を放つ。


六合も同じ数だけ結界を展開する。


「流石ですね。」


「あなたほど結界を操る者は見たことがありません。」


老人が笑う。


六合も静かに微笑んだ。


「お褒めいただき光栄です。」


次の瞬間。


互いの結界が同時に砕け散る。


しかしすぐに新たな魔法陣が展開される。


知恵と技術のぶつかり合い。


こちらも勝敗は全く動かなかった。


◇ ◇ ◇


その頃。


「ぐっ!」


クロードが吹き飛ばされる。


盾を地面へ突き立て、何とか踏み止まった。


「クロード!」


「大丈夫です!」


すぐに立ち上がる。


漆黒の槍使いは表情一つ変えない。


槍を一振りするだけで衝撃波が生まれ、三人をまとめて襲う。


「くっ!」


葵が飛び込み剣で受け流す。


その隙にセレナが魔法を放つ。


クロードが前へ出る。


三人の連携は決して悪くない。


それでも――


「速い!」


「重い!」


「隙がない!」


一撃一撃が致命傷になりかねない。


押されながらも、何とか食らいついていた。


クロードは深く息を吸う。


「……葵。」


「少し無茶をします。」


「え?」


クロードの身体から黄金色の闘気が噴き上がる。


筋肉が膨れ上がり、纏う魔力が一段階跳ね上がった。


「これは……。」


「私の切り札です。」


「生命力を削り、身体能力を限界まで引き上げます。」


小さく苦笑する。


「長くは持ちません。」


「保って五分ほどです。」


「その間に決めます。」


「分かった!」


葵も剣を握り直す。


「セレナ!」


「援護頼む!」


「はい!」


クロードが先頭へ飛び出した。


先程まで押されていた戦況が一気に変わる。


重い盾撃。


鋭い斬撃。


次々と繰り出される攻撃に、槍使いも初めて受けへ回る。


「今です!」


クロードの声と同時に葵が踏み込む。


渾身の一撃。


しかし――


カンッ!!


槍一本で受け止められ、そのまま弾き返される。


「まだ足りん。」


低い声が響く。


その直後。


セレナの上級魔法が槍使いを包み込んだ。


轟音。


爆炎。


「やった!」


そう思った次の瞬間。


煙の中から黒い影が飛び出した。


「セレナ!」


葵が叫ぶ。


しかし遅い。


ドンッ!!


槍の柄がセレナの脇腹へ叩き込まれた。


「きゃあっ!」


セレナの身体が大きく吹き飛ぶ。


地面を何度も転がり、ようやく止まる。


「セレナ!」


葵が駆け寄ろうとする。


しかし、その前へ槍使いが立ち塞がった。


「よそ見とは余裕だな。」


槍の切っ先が、ゆっくりと葵へ向けられる。


クロードの切り札の時間は、刻一刻と失われていく。


それでも決定打は生まれない。


戦況は、徐々に最悪の方向へ傾き始めていた。

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