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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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63

四人の視線が、一斉に葵へ集まる。


静寂。


誰も動かない。


最後まで黙っていた老人が、ゆっくりと目を閉じた。


そして――。


「……なるほど。」


小さく呟く。


「これは……。」


「力の残滓だけか。」


周囲の空気が張り詰める。


老人は葵を真っ直ぐ見据えた。


「だが、間違いない。」


「確かに感じる。」


「ゼノスの力だ。」


その一言で、ベルゼル達の表情が変わる。


「何?」


槍使いが目を細める。


老人は静かに頷いた。


「そうか……。」


「そういうことか。」


「転生。」


「ゼノスは転生していたのだ。」


その言葉に、ベルゼルの口元が吊り上がる。


「ハッ!」


「そういうことか!」


「だから気配だけだったのか!」


妖艶な女も妖しく微笑む。


「しかも……。」


「まだ完全には戻っていない。」


老人は杖を強く地面へ突いた。


コンッ!!


「好機だ。」


その一言だけで空気が変わる。


「今のゼノスは。」


「まだ前世の力を取り戻していない。」


「今ならば――。」


濁った瞳が鋭く光る。


「我らでも討てる。」


杖を掲げる。


「今しかない。」


「死力を尽くせ!!」


「おおっ!!」


四人同時に膨大な魔力を解放した。


ゴォォォォォォォォッ!!


大地が震え。


空が揺らぐ。


今まで感じたことのないほど濃密な魔力が、戦場全体を覆い尽くした。


「……っ!」


葵の背中を冷たい汗が流れる。


(なんだ……この威圧感。)


(息が……。)


クロードも歯を食いしばる。


「これが……。」


「魔界最強クラス……!」


セレナは震える手で杖を握り締めた。


「怖い……。」


「でも!」


四人の魔将が同時に地を蹴る。


「行くぞ!!」


「ゼノスを討つ!!」


「「「「おおっ!!」」」」


その瞬間。


「葵様!」


青龍が前へ飛び出した。


「ベルゼル!」


雷を纏い、黒鎧の巨体へ突撃する。


「ようやく本気か!」


ベルゼルも大剣を振り上げた。


轟音と共に二人が激突する。


反対側では。


「白虎。」


「久しぶりに遊びましょう。」


妖艶な女が笑う。


「その趣味はありません。」


はなが冷たく言い放ち、凍てつく冷気を放つ。


一瞬で二人の周囲が白銀の世界へ変わった。


六合の前には老人。


「六合。」


「相変わらず面倒な術を使う。」


「あなたも変わりませんね。」


六合は静かに結界を展開する。


幾重もの魔法陣が重なり、老人の魔法とぶつかり合う。


三柱は、それぞれ宿敵と対峙した。


しかし。


残る一人――。


漆黒の槍使いは、そのまま葵へ一直線に突っ込んできた。


「ゼノス。」


「貴様だけは、この手で討つ。」


「来るぞ!」


クロードが盾を構える。


「セレナ!」


「援護を!」


「はい!」


三人は同時に動いた。


槍使いの一撃をクロードが受け止める。


その衝撃だけで地面が砕け散る。


「ぐっ……!」


「重い!」


セレナの魔法が放たれ。


葵がその隙を逃さず飛び込む。


剣と槍が激しくぶつかり合う。


火花が散る。


衝撃が大地を揺らす。


十二柱。


十二魔将。


そして――


ゼノスの転生体である葵。


世界を救った戦いの因縁が、時を超えて再び幕を開けた。

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