↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/91

61

約束の二時間後。


ファルンの正門前には、数え切れないほどの冒険者達が集結していた。


剣士。


槍使い。


弓使い。


魔法使い。


普段は好き勝手に行動している冒険者達が、一つの目的のために集まっている。


その光景だけで、自然と胸が熱くなった。


葵達もその列へ加わる。


出発前、六合達とは作戦を確認していた。


「今回は私達は極力表へは出ません。」


六合が静かに口を開く。


「万が一に備え、力は温存いたします。」


青龍も頷いた。


「私達は葵様達の近くで援護に回ります。」


「必要最低限の補助のみ。」


「危険な状況になった時だけ、本格的に介入します。」


はなも続ける。


「今回は葵様達が中心です。」


「私達は影から支えます。」


葵は三人を見渡した。


「分かった。」


「頼りにはする。」


「でも今回は俺達の力で戦ってみる。」


「はい。」


三柱は静かに頷いた。


その時。


ギルドの扉が勢いよく開いた。


「お前らぁぁぁぁ!!」


腹の底まで響く怒鳴り声。


ギルドマスターだった。


一瞬で全員が静まり返る。


ギルドマスターは集まった冒険者達をゆっくり見渡した。


「恐ぇ奴はいるか?」


誰も答えない。


「いるなら今のうちに帰れ。」


「俺は笑わねぇ。」


「命は一つしかねぇからな。」


少しだけ間を置く。


「……だが。」


「ここで逃げたら。」


「明日から、この町を胸張って歩けるか?」


誰も口を開かない。


ギルドマスターは拳を握る。


「この町は誰の町だ?」


一人の冒険者が叫ぶ。


「俺達だぁ!!」


「誰が守る?」


「俺達だぁぁぁ!!」


その声は次々と広がっていく。


ギルドマスターは満足そうに笑った。


「そうだ。」


「国じゃねぇ。」


「騎士団でもねぇ。」


「今日、この町を守るのは――」


大剣を肩へ担ぐ。


「俺達冒険者だ。」


誰も息をすることさえ忘れていた。


「なら見せてやれ。」


「自由に生きるって決めた俺達が。」


「誰より強ぇってことをなぁ!!」


大剣を高々と掲げる。


「全員――」


「生きて帰るぞぉぉぉぉ!!」


「おおおおおおおおおっ!!!!」


正門前が震えるほどの雄叫び。


その熱気のまま。


ギルドマスターから凄まじい魔力が噴き上がった。


ゴォォォォォッ!!


空気が震え。


地面が軋む。


「……っ!」


葵は思わず息を呑む。


(強い……。)


次の瞬間。


ギルドマスターが大剣を振り抜いた。


「はぁぁぁぁぁぁっ!!」


巨大な斬撃が一直線に走る。


ズガァァァァァァン!!


迫り来るモンスターの群れ。


その先頭集団が、まるで紙細工のように吹き飛んだ。


二百体近い魔物が一撃で消え去る。


「行くぞぉぉぉ!!」


ギルドマスターが駆け出す。


それに続き、冒険者達も一斉に飛び出した。


「おおおおおおっ!!」


「負けるかぁ!!」


「ぶっ倒せぇぇ!!」


戦場が、一瞬で熱を帯びる。


葵も自然と笑っていた。


「みんな!」


「行こう!!」


「はい!」


「任せろ!」


「頑張ります!」


四人もモンスターの群れへ飛び込んだ。



最初に飛び込んできたのはオークの群れ。


「クロード!」


「左を頼む!」


「了解!」


クロードが盾で一体を弾き飛ばし、進路を塞ぐ。


その隙へセレナの風魔法が炸裂した。


体勢を崩したオークへ葵が飛び込む。


一閃。


返す刃で二閃。


続けざまに三体目を斬り伏せる。


「後ろです!」


六合の声。


振り向くより先に、小さな結界が展開される。


飛来した毒針が結界へ弾かれた。


「助かった!」


今度は青龍が小さく指を動かす。


バチッ。


小さな雷が魔物の足元へ落ちる。


ほんの一瞬だけ動きが止まる。


「今!」


葵がその首を刎ね飛ばした。


はなは後方から全体を見渡し、危険な攻撃だけを確実に処理していく。


三柱は約束通り補助しかしない。


それでも、その支援は絶大だった。



次々と押し寄せる魔物。


ゴブリン。


ウルフ。


オーク。


ホーンラビット。


数は圧倒的。


決して楽な戦いではない。


それでも。


「右から来ます!」


「任せろ!」


クロードが受け止める。


「セレナ!」


「はい!」


火球が弾ける。


葵が飛び込み、一気に間合いを詰める。


剣を振るたびに、一体、また一体と魔物が倒れていく。


周囲を見れば。


他の冒険者達も必死に戦っていた。


知らない者同士が自然と背中を預け合い。


誰かが危なくなれば、別の誰かが助けに入る。


そこにはランクも身分も関係ない。


ただ――


「この町を守る。」


その想いだけが、一つになっていた。


葵は剣を握り直す。


「まだまだ!」


「行ける!」


自然と笑みがこぼれる。


疲れているはずなのに。


身体は軽い。


胸の奥が熱い。


気付けば。


ギルドマスターの言葉が何度も頭の中で響いていた。


『今日、この町を守るのは――俺達冒険者だ。』


その言葉だけで、前へ進めた。


――どうか。


このまま押し切ってくれ。


誰もが、そう願いながら剣を振るい続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。