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約束の二時間後。
ファルンの正門前には、数え切れないほどの冒険者達が集結していた。
剣士。
槍使い。
弓使い。
魔法使い。
普段は好き勝手に行動している冒険者達が、一つの目的のために集まっている。
その光景だけで、自然と胸が熱くなった。
葵達もその列へ加わる。
出発前、六合達とは作戦を確認していた。
「今回は私達は極力表へは出ません。」
六合が静かに口を開く。
「万が一に備え、力は温存いたします。」
青龍も頷いた。
「私達は葵様達の近くで援護に回ります。」
「必要最低限の補助のみ。」
「危険な状況になった時だけ、本格的に介入します。」
はなも続ける。
「今回は葵様達が中心です。」
「私達は影から支えます。」
葵は三人を見渡した。
「分かった。」
「頼りにはする。」
「でも今回は俺達の力で戦ってみる。」
「はい。」
三柱は静かに頷いた。
その時。
ギルドの扉が勢いよく開いた。
「お前らぁぁぁぁ!!」
腹の底まで響く怒鳴り声。
ギルドマスターだった。
一瞬で全員が静まり返る。
ギルドマスターは集まった冒険者達をゆっくり見渡した。
「恐ぇ奴はいるか?」
誰も答えない。
「いるなら今のうちに帰れ。」
「俺は笑わねぇ。」
「命は一つしかねぇからな。」
少しだけ間を置く。
「……だが。」
「ここで逃げたら。」
「明日から、この町を胸張って歩けるか?」
誰も口を開かない。
ギルドマスターは拳を握る。
「この町は誰の町だ?」
一人の冒険者が叫ぶ。
「俺達だぁ!!」
「誰が守る?」
「俺達だぁぁぁ!!」
その声は次々と広がっていく。
ギルドマスターは満足そうに笑った。
「そうだ。」
「国じゃねぇ。」
「騎士団でもねぇ。」
「今日、この町を守るのは――」
大剣を肩へ担ぐ。
「俺達冒険者だ。」
誰も息をすることさえ忘れていた。
「なら見せてやれ。」
「自由に生きるって決めた俺達が。」
「誰より強ぇってことをなぁ!!」
大剣を高々と掲げる。
「全員――」
「生きて帰るぞぉぉぉぉ!!」
「おおおおおおおおおっ!!!!」
正門前が震えるほどの雄叫び。
その熱気のまま。
ギルドマスターから凄まじい魔力が噴き上がった。
ゴォォォォォッ!!
空気が震え。
地面が軋む。
「……っ!」
葵は思わず息を呑む。
(強い……。)
次の瞬間。
ギルドマスターが大剣を振り抜いた。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
巨大な斬撃が一直線に走る。
ズガァァァァァァン!!
迫り来るモンスターの群れ。
その先頭集団が、まるで紙細工のように吹き飛んだ。
二百体近い魔物が一撃で消え去る。
「行くぞぉぉぉ!!」
ギルドマスターが駆け出す。
それに続き、冒険者達も一斉に飛び出した。
「おおおおおおっ!!」
「負けるかぁ!!」
「ぶっ倒せぇぇ!!」
戦場が、一瞬で熱を帯びる。
葵も自然と笑っていた。
「みんな!」
「行こう!!」
「はい!」
「任せろ!」
「頑張ります!」
四人もモンスターの群れへ飛び込んだ。
⸻
最初に飛び込んできたのはオークの群れ。
「クロード!」
「左を頼む!」
「了解!」
クロードが盾で一体を弾き飛ばし、進路を塞ぐ。
その隙へセレナの風魔法が炸裂した。
体勢を崩したオークへ葵が飛び込む。
一閃。
返す刃で二閃。
続けざまに三体目を斬り伏せる。
「後ろです!」
六合の声。
振り向くより先に、小さな結界が展開される。
飛来した毒針が結界へ弾かれた。
「助かった!」
今度は青龍が小さく指を動かす。
バチッ。
小さな雷が魔物の足元へ落ちる。
ほんの一瞬だけ動きが止まる。
「今!」
葵がその首を刎ね飛ばした。
はなは後方から全体を見渡し、危険な攻撃だけを確実に処理していく。
三柱は約束通り補助しかしない。
それでも、その支援は絶大だった。
⸻
次々と押し寄せる魔物。
ゴブリン。
ウルフ。
オーク。
ホーンラビット。
数は圧倒的。
決して楽な戦いではない。
それでも。
「右から来ます!」
「任せろ!」
クロードが受け止める。
「セレナ!」
「はい!」
火球が弾ける。
葵が飛び込み、一気に間合いを詰める。
剣を振るたびに、一体、また一体と魔物が倒れていく。
周囲を見れば。
他の冒険者達も必死に戦っていた。
知らない者同士が自然と背中を預け合い。
誰かが危なくなれば、別の誰かが助けに入る。
そこにはランクも身分も関係ない。
ただ――
「この町を守る。」
その想いだけが、一つになっていた。
葵は剣を握り直す。
「まだまだ!」
「行ける!」
自然と笑みがこぼれる。
疲れているはずなのに。
身体は軽い。
胸の奥が熱い。
気付けば。
ギルドマスターの言葉が何度も頭の中で響いていた。
『今日、この町を守るのは――俺達冒険者だ。』
その言葉だけで、前へ進めた。
――どうか。
このまま押し切ってくれ。
誰もが、そう願いながら剣を振るい続けていた。




