59
「さて。」
朱雀が手を叩く。
「ご主人様に呼ばれたから急いで来たけど……。」
「実は今、ちょっと忙しいんだ。」
「あんまり長くここにいると、戻るのが遅くなっちゃう。」
「あ、そうなの?」
葵は少し驚く。
せっかく再会できたのだから、もう少し一緒にいるものだと思っていた。
朱雀は申し訳なさそうに笑う。
「うん。」
「でも……。」
少しだけ間を置く。
「今度、暇になったら遊びに来てもいい?」
その言葉に、葵はすぐに頷いた。
「もちろん。」
「助けてもらったし。」
「それに……。」
「また話したいから。」
朱雀の顔が一気に明るくなる。
「ほんと!?」
「やったー!」
「じゃあ絶対遊びに来るね!」
「約束だからね!」
「ああ。」
葵が笑う。
「待ってるよ。」
朱雀は満足そうに頷く。
そして、はな達を見る。
「じゃあ、またね!」
「青龍、今度は氷で迷惑かけないようにね!」
「……。」
青龍の表情が固まる。
「朱雀まで言うのですか……。」
はなが小さく笑う。
「事実ですから。」
「はなまで……。」
青龍は肩を落とした。
朱雀は楽しそうに笑う。
「じゃあねー!」
そう言って手を振る。
次の瞬間。
朱雀の周囲に炎の魔法陣が浮かび上がる。
「また呼んでね、ご主人様!」
「ああ。」
「またな。」
葵が手を振る。
紅蓮の光が広がり――
朱雀の姿は炎の中へ消えていった。
⸻
「……。」
葵は朱雀が消えた場所をしばらく眺めていた。
「なんというか……。」
「十二柱って、もっとこう……凄く近寄り難い存在なのかと思ってた。」
六合が穏やかに笑う。
「力だけを見れば、間違いなくそうでしょう。」
「ですが……。」
「昔から皆様、中身はあまり変わっておりません。」
「そうなんだ。」
葵は少し嬉しそうに笑う。
「じゃあ、行こうか。」
一行は再び歩き出した。
⸻
その後の攻略は順調だった。
30階層。
そこに待ち構えていたのは――
グランドオーガ。
巨大な身体。
圧倒的な腕力。
並の冒険者なら、まともに戦うことすら難しい相手。
しかし。
「行きます。」
クロードが隙を作る。
セレナが魔法で援護する。
はな、青龍、六合が確実に動きを封じる。
そして最後。
「これで終わりだ。」
葵の一撃がグランドオーガを捉えた。
巨大な身体がゆっくりと崩れ落ちる。
「……勝った。」
葵が息を吐く。
ボス部屋の中央に光が集まる。
現れたのは転移石。
「30階層突破ですね。」
六合が告げる。
葵は転移石へ触れる。
「次は40階か。」
まだ先は長い。
しかし。
仲間と共に進むこの時間は、悪くないと思えた。
一行は転移石を登録し、その日の攻略を終えるため地上へ戻った。




