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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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「さて。」


朱雀が手を叩く。


「ご主人様に呼ばれたから急いで来たけど……。」


「実は今、ちょっと忙しいんだ。」


「あんまり長くここにいると、戻るのが遅くなっちゃう。」


「あ、そうなの?」


葵は少し驚く。


せっかく再会できたのだから、もう少し一緒にいるものだと思っていた。


朱雀は申し訳なさそうに笑う。


「うん。」


「でも……。」


少しだけ間を置く。


「今度、暇になったら遊びに来てもいい?」


その言葉に、葵はすぐに頷いた。


「もちろん。」


「助けてもらったし。」


「それに……。」


「また話したいから。」


朱雀の顔が一気に明るくなる。


「ほんと!?」


「やったー!」


「じゃあ絶対遊びに来るね!」


「約束だからね!」


「ああ。」


葵が笑う。


「待ってるよ。」


朱雀は満足そうに頷く。


そして、はな達を見る。


「じゃあ、またね!」


「青龍、今度は氷で迷惑かけないようにね!」


「……。」


青龍の表情が固まる。


「朱雀まで言うのですか……。」


はなが小さく笑う。


「事実ですから。」


「はなまで……。」


青龍は肩を落とした。


朱雀は楽しそうに笑う。


「じゃあねー!」


そう言って手を振る。


次の瞬間。


朱雀の周囲に炎の魔法陣が浮かび上がる。


「また呼んでね、ご主人様!」


「ああ。」


「またな。」


葵が手を振る。


紅蓮の光が広がり――


朱雀の姿は炎の中へ消えていった。



「……。」


葵は朱雀が消えた場所をしばらく眺めていた。


「なんというか……。」


「十二柱って、もっとこう……凄く近寄り難い存在なのかと思ってた。」


六合が穏やかに笑う。


「力だけを見れば、間違いなくそうでしょう。」


「ですが……。」


「昔から皆様、中身はあまり変わっておりません。」


「そうなんだ。」


葵は少し嬉しそうに笑う。


「じゃあ、行こうか。」


一行は再び歩き出した。



その後の攻略は順調だった。


30階層。


そこに待ち構えていたのは――


グランドオーガ。


巨大な身体。


圧倒的な腕力。


並の冒険者なら、まともに戦うことすら難しい相手。


しかし。


「行きます。」


クロードが隙を作る。


セレナが魔法で援護する。


はな、青龍、六合が確実に動きを封じる。


そして最後。


「これで終わりだ。」


葵の一撃がグランドオーガを捉えた。


巨大な身体がゆっくりと崩れ落ちる。


「……勝った。」


葵が息を吐く。


ボス部屋の中央に光が集まる。


現れたのは転移石。


「30階層突破ですね。」


六合が告げる。


葵は転移石へ触れる。


「次は40階か。」


まだ先は長い。


しかし。


仲間と共に進むこの時間は、悪くないと思えた。


一行は転移石を登録し、その日の攻略を終えるため地上へ戻った。

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