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紅蓮の炎がゆっくりと収まる。
その中から現れたのは、一人の少女だった。
燃えるような赤い髪を揺らし、大きな瞳を輝かせている。
姿を確認した瞬間――
「ご主人様ーーーーっ!!」
「会いたかったぁぁぁぁ!!」
「うわっ!?」
朱雀は一直線に葵へ飛び込み、そのまま勢いよく抱きついた。
「ちょっ!」
「苦しい苦しい!」
「えへへ~♪」
「本当にご主人様だぁ!」
満面の笑みを浮かべる朱雀。
葵は苦笑しながら頭を掻いた。
「えっと……。」
「初めまして、になるのかな?」
朱雀は首を傾げる。
「?」
「ごめん。」
「俺は前世の記憶がないんだ。」
「君のことは覚えていないんだよ。」
「でも、晴明からは話を聞いてる。」
朱雀は少しだけ目を丸くした。
しかし、すぐに笑顔へ戻る。
「そんなの関係ないよ!」
「ご主人様はご主人様だもん!」
「また会えたんだから、それで十分♪」
その言葉に、葵も自然と笑った。
「ありがとな。」
「さて。」
「早速だけど、お願いしていい?」
葵は氷に覆われた通路を見る。
「これ、何とかできる?」
朱雀は氷の壁を眺めた。
「あれ?」
「これ……。」
「青龍がやったの?」
その言葉に青龍が少し顔を逸らす。
「……はい。」
朱雀は納得したように頷いた。
「そっか!」
「大丈夫!」
「私が溶かすね!」
朱雀は両手を前へ向ける。
「いっくよーーー!」
ゴォォォォォォッ!!
凄まじい炎が放たれる。
一瞬で氷が溶け始め、視界が蒸気で白く染まる。
「おお……。」
葵が感心した次の瞬間。
ゴォォォォォォォッ!!
炎はさらに勢いを増した。
「……。」
「朱雀?」
葵が声をかける。
「え?」
朱雀が振り返る。
「あ。」
「やりすぎた♪」
朱雀の炎が収まる。
氷は完全に消え、通路は開けた。
「よし!」
「これで進めるね!」
満足そうに笑う朱雀。
しかし――
「……。」
葵は足元を見る。
「ん?」
「なんか……暑くない?」
先ほどまで氷に覆われていた床。
そこには朱雀の炎の余波が残り、赤く熱を持っていた。
「……。」
「朱雀。」
はなが静かに名前を呼ぶ。
「はい。」
朱雀の笑顔が少し引きつる。
「加減してくださいと言いましたよね?」
「ご、ごめんなさい……。」
「氷を溶かすだけのつもりだったんだけど……。」
「途中から楽しくなっちゃって。」
葵は苦笑する。
「やっぱり……。」
「六合以外、何かしらやらかしてない?」
その言葉に青龍が反応する。
「……。」
はなも少し目を逸らす。
「わ、私は――」
「いや、青龍の氷の件で煽ってたよね?」
「……。」
はなが黙る。
青龍も咳払いをした。
「……失敗は誰にでもあります。」
「青龍も?」
「……。」
答えない。
その様子を見て、朱雀が笑う。
「あはは!」
「やっぱりみんな変わってないね!」
その時。
はなが前へ出る。
「話は後です。」
「このままでは通れませんから。」
はなは地面へ手を向ける。
「少し冷やします。」
次の瞬間。
周囲へ冷たい空気が広がった。
パキ……。
熱を持っていた地面の温度が徐々に下がっていく。
赤くなっていた床も、元の状態へ戻っていった。
「おぉ……。」
葵は感心する。
「溶かすんじゃなくて、ちゃんと調整できるんだ。」
はなは小さく頷く。
「当然です。」
「氷も炎も、扱い方次第ですから。」
その言葉に青龍が少し反応する。
「……。」
「今の言葉、私に向けたものでは?」
「気のせいです。」
即答するはな。
葵は思わず笑った。
「本当に仲良いな。」
「良くありません。」
「良くありません。」
また二人の声が重なる。
その様子に、全員が笑った。




