57
休憩を終え、一行は再び先へ進もうとした。
しかし――
「……。」
「進めない。」
目の前には、見渡す限りの氷の世界。
床も壁も天井も、すべてが分厚い氷に覆われている。
青龍は腕を組み、どこか誇らしげに胸を張った。
「ふふっ。」
「私が本気で生み出した氷です。」
「そう簡単に溶けるものではありません。」
その言葉に、白虎が冷たい視線を向ける。
「つまり。」
「誰かさんのせいで進めない、ということですね。」
「……。」
青龍の笑顔が固まる。
「そ、それは……。」
「結果だけ見ればそうなりますが……。」
「言い方というものがあるでしょう!」
白虎はため息をついた。
「事実を言ったまでです。」
「ぐぬぬ……。」
葵は氷の壁を軽く叩いた。
コンコン。
「……無理だ。」
「これ、マジでどうすんの?」
六合が一歩前へ出る。
「方法は二つございます。」
「一つは、このまま地上へ戻り、ダンジョンの自己修復を待つ方法です。」
「ダンジョンは一定時間で元の状態へ戻ります。」
「もう一つは――。」
六合は少し間を置いた。
「朱雀を呼ぶことです。」
「朱雀?」
葵が首を傾げる。
その瞬間。
青龍と白虎が同時に顔をしかめた。
「……あいつですか。」
「できれば呼びたくありませんね。」
「え?」
「二人ともそんな反応する?」
六合は苦笑する。
「少々……賑やかな者でして。」
「炎に関しては十二柱でも随一です。」
「青龍の氷を溶かせるの?」
「はい。」
「容易に。」
その一言で青龍が肩を落とした。
「容易って言わなくても……。」
葵は腕を組んで考える。
「でも、どうやって呼ぶんだ?」
六合は穏やかに微笑んだ。
「葵様が召喚してください。」
「……俺が?」
「はい。」
「いやいや。」
「召喚魔法なんて使えないぞ?」
六合は首を横に振る。
「通常であれば不可能です。」
「ですが、私ども十二柱と葵様は魂で深く結ばれております。」
「そのため、私どもが魔力の補助と術式の制御を行えば、現在の葵様でも十二柱の召喚は可能でしょう。」
「へぇ……。」
「そんなことできるんだ。」
「ええ。」
「初めてですので、私が手順をご説明いたします。」
六合は地面へ小さな魔法陣を描いた。
「まず、手をこちらへ。」
葵は言われるまま手をかざす。
「次に、朱雀を思い浮かべてください。」
「会ったことないんだけど。」
「大丈夫です。」
「召喚は魂を辿ります。」
「呼びたいという意思だけで十分です。」
「なるほど。」
六合が静かに頷く。
「それでは。」
「私達も補助いたします。」
はな、青龍、六合の三人が同時に魔力を流し始める。
淡い光が葵を包み込んだ。
「葵様。」
「最後に、お呼びください。」
「分かった。」
葵は大きく息を吸い込む。
「来てくれ――」
「朱雀!!」
その瞬間。
巨大な召喚陣が眩く輝いた。
ゴオォォォォッ!!
紅蓮の炎が天井近くまで吹き上がる。
「うわっ!?」
思わず葵が後ずさる。
炎の中から、一人の少女の笑い声が響いた。
「やっほーーーっ!!」
「呼んだーーーーーっ!?♪」




