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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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56

翌日。


十分に休息を取った葵達は、再びダンジョン攻略を開始した。


二十一階。


二十二階。


二十三階。


魔物の強さは少しずつ上がっていたが、葵達は危なげなく進んでいく。


連携も以前より遥かに良くなっていた。


そんな中。


青龍が少し申し訳なさそうに口を開く。


「葵様。」


「少しお願いがあるのですが。」


「ん?」


「最近、見守ることが多かったので。」


「あまり戦わないと鈍ってしまいます。」


「少しだけ戦わせていただいてもよろしいでしょうか。」


葵は笑って頷いた。


「もちろん。」


「ただ、暴れ過ぎるなよ?」


「お任せください。」


そう答えた青龍は、どこか嬉しそうだった。


「では。」


「少し本気で。」


その瞬間。


凄まじい冷気が周囲へ広がる。


「凍てつけ。」


青白い魔力が一気に放たれた。


ゴォォォォォッ!!


冷気がダンジョン中を駆け抜ける。


目の前の魔物は一瞬で氷像となり砕け散った。


しかし。


それだけでは終わらない。


床。


壁。


天井。


見渡す限り全てが氷に覆われていく。


数秒後。


辺り一帯は巨大な氷の世界へと変わっていた。


「…………。」


「…………。」


「…………。」


葵は静かに辺りを見渡す。


「……進めなくね?」


通路は完全に氷で塞がれていた。


青龍は固まる。


「…………。」


「やってしまいました。」


白虎が呆れたようにため息をついた。


「私の前で氷系統の技を使い。」


「しかも制御を誤るとは。」


「実に青龍らしいですね。」


青龍は悔しそうに唇を噛む。


「ぐっ……。」


言い返したい。


だが。


事実だけに反論できない。


その様子を見ていた葵が首を傾げる。


「そういえば。」


「白虎も最初、雷を出して失敗してなかった?」


「……!」


白虎の肩がピクリと震えた。


「そ、それは……。」


「昔の話です。」


少し焦りながら誤魔化そうとする。


その反応を見た青龍がニヤリと笑う。


「へぇ~?」


「簡単な雷を出すだけなのに失敗していたのですか?」


「だっさー。」


「青龍!」


白虎が真っ赤になる。


葵だけが状況を理解できない。


「?」


「何で氷が得意なのに雷なんだ?」


六合が苦笑しながら説明する。


「昔からなのです。」


「青龍と白虎は、何故かお互いの得意な属性を使いたがるのです。」


「本来であれば。」


「白虎が得意なのは氷。」


「青龍が得意なのは雷でございます。」


「え?」


葵は二人を見る。


「じゃあ。」


「わざわざ逆を練習してたの?」


六合は頷く。


「はい。」


「昔から、お互い負けず嫌いでしたので。」


葵は思わず笑った。


「何それ。」


「昔から仲良かったんだね。」


その瞬間。


「「良くありません。」」


二人が声を揃えて否定した。


「仲など良くありません!」


「誰がこんな人と!」


さらに睨み合う二人。


葵は笑いながら肩をすくめる。


「いやいや。」


「息ぴったりじゃん。」


二人は同時に葵を見る。


そして。


「ふん!」


「ふん!」


揃って反対方向を向いた。


その姿を見て、セレナは思わず笑いを堪える。


クロードも口元を押さえながら肩を震わせていた。


六合とはなは苦笑する。


「……昔から変わりませんね。」


葵は氷に覆われた通路を見る。


「とりあえず。」


「今は進めないし。」


「ちょっと休憩しようか。」


全員が苦笑しながら頷いた。

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