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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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晴明が消えてから、しばらくの間。


葵はその場で頭を抱えたまま動かなかった。


「……。」


「……嫁?」


「いやいやいや。」


「何なんだよ最後の最後に。」


しばらく悩み続ける。


数分後。


突然、勢いよく立ち上がった。


「よし!」


全員が葵を見る。


「今考えても分からん!」


「その時の俺が頑張る!」


「今の俺じゃどうにもならん!」


そう言って親指を立てる。


「ということで。」


「先送り!」


クロードは思わず苦笑した。


「……よろしいのですか?」


「いい!」


「悩んでも答え出ないし!」


「未来の俺に任せる!」


はな達は顔を見合わせる。


「……ご主人様らしいですね。」


「昔から変わりません。」


「ある意味、一番正しい判断かもしれません。」


葵は満足そうに頷いた。


「よし。」


「今日はもう疲れた。」


「のんびりしよう。」


全員も賛成し、その日は倉庫でゆっくり過ごすことにした。


その後、六合が先ほど晴明から頼まれた物を持ってくる。


「こちらになります。」


そこには小さな瓶が並んでいた。


中には透き通る金色の液体が入っている。


葵は一本手に取る。


「飲み薬?」


「はい。」


「晴明様が常備されていた回復薬です。」


葵は嫌な予感しかしなかった。


「……六合。」


「これ。」


「普通の回復薬じゃないよな?」


六合は少し困ったように笑う。


「ええ。」


「神薬でございます。」


「飲めば、ほぼ治せない傷や病はございません。」


「…………。」


葵は静かに瓶を見る。


「またか。」


「やっぱりヤバい奴だった。」


六合は苦笑した。


「晴明様基準ですので。」


葵は周囲を見る。


そこには。


同じ瓶が山積みになっていた。


「…………。」


「どんだけあるんだよ。」


青龍が答える。


「数えるのを途中でやめました。」


「数千本はあると思います。」


「もう驚かないぞ……。」


そう言いながらも頬が引きつっていた。


六合が人数分を分ける。


「それぞれ二本ずつお持ちください。」


「残りは倉庫へ保管いたします。」


全員が一本ずつ受け取る。


葵は真剣な表情で皆を見る。


「いいか。」


「遠慮なく使え。」


「もったいないから使わない。」


「そういうのは禁止。」


「使ったら補充する。」


「命の方が大事だからな。」


セレナは大切そうに瓶を握る。


「はい!」


クロードも深く頷いた。


「承知いたしました。」


はな達も微笑む。


「ご主人様らしいお考えです。」


葵は笑った。


「晴明があれだけ置いてったんだ。」


「使わなきゃ逆にもったいない。」


その言葉に全員が笑顔になる。


一息ついたところで、葵は立ち上がる。


「さて。」


「今日はここまで。」


「明日からまたダンジョン攻略を進めよう。」


「二十一階からだ。」


全員が頷く。


「はい!」


「承知いたしました。」


「頑張りましょう。」


こうして長い一日は終わりを迎えた。


それぞれが部屋へ戻り、明日から始まる新たな攻略へ備えるのだった。

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