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一通り倉庫内を見て回り、元の果樹園へ戻ってきた。
「どうだった?」
晴明がどこか得意げに胸を張る。
「自慢じゃないけど、結構頑張って作ったんだ。」
葵は周囲を見渡しながら苦笑する。
「いや……。」
「結構どころじゃないだろ。」
「こんなの一つの世界じゃん。」
晴明は嬉しそうに笑う。
「ありがとう。」
「そう言ってもらえると嬉しいな。」
はな達も満足そうに頷く。
「やはり、ご主人様の倉庫は最高です。」
「昔を思い出しますね。」
青龍も尻尾を揺らす。
「久しぶりに全部見られて楽しかったです。」
六合も静かに微笑んだ。
「管理していても、実際に歩くのは久しぶりでした。」
晴明は手を叩く。
「じゃあ少し休憩しようか。」
「僕が何か作るよ。」
⸻
葵は少し考える。
「何でも?」
「もちろん。」
「じゃあ……。」
少し照れ臭そうに笑う。
「すき焼きとか作れる?」
その瞬間。
晴明が嬉しそうな顔になる。
「ああ。」
「お母さんが作ってくれたやつだね。」
葵は驚く。
「知っているのか?」
「うん。」
「目覚めてから、君の記憶を少し見させてもらったからね。」
「すごく美味しそうだった。」
「もちろん作れるよ。」
そう言うと晴明は腕まくりをした。
「ただ――」
「せっかくだから、少しこだわろうかな。」
⸻
晴明が倉庫の中を歩き始める。
「まず肉は……。」
「普通の牛じゃ物足りないね。」
巨大な冷蔵庫のような保管庫を開く。
「これは紅蓮竜の肩ロース。」
「こっちは白銀竜のサシ。」
「うーん……。」
「今日はこっちかな。」
次に野菜。
「黄金白菜。」
「月光ねぎ。」
「七色しいたけ。」
「幻白しらたき。」
「翡翠春菊。」
「これも入れよう。」
さらに卵。
「星鶏の卵。」
「割ると黄身が濃厚なんだ。」
醤油。
「熟成千年醤油。」
酒。
「神米酒。」
砂糖。
「妖精蜜。」
はな達は苦笑する。
「始まりましたね。」
青龍が肩をすくめる。
「昔から料理だけは異常にこだわるんですよ。」
六合もため息をついた。
「一食作るだけで数時間悩まれることもありました。」
晴明は真剣そのもの。
「よし。」
「これで完璧。」
⸻
鍋に火が入る。
甘辛い香りが辺りへ広がる。
醤油の香ばしさ。
砂糖が溶ける甘い香り。
酒の豊かな香り。
そこへ肉を入れた瞬間――
ジュワァァァァ……
食欲を刺激する音が響いた。
肉汁が溢れ、香りが一気に広がる。
野菜にも旨味が染み込み始める。
卵を溶く。
黄金色の黄身がゆっくり揺れる。
葵は思わず唾を飲み込んだ。
「やばい……。」
「匂いだけで腹減る。」
セレナも目を輝かせる。
「すごく……いい匂いです……。」
クロードも思わず笑う。
「これは期待できますね。」
⸻
「はい。」
晴明が器を配る。
「いただきます。」
全員が一口。
……。
数秒。
誰も喋らない。
そして。
「…………。」
葵が目を見開く。
「うまっ。」
「何これ。」
「俺が知ってるすき焼きじゃない。」
肉は口の中でほろりとほどける。
脂は重くなく、旨味だけが広がる。
野菜は甘く、噛むほどに出汁が溢れる。
卵が全てを優しく包み込む。
思い出の味。
だけど、遥かにその先にある味だった。
セレナは幸せそうに笑う。
「こんな美味しい料理……初めて食べました。」
クロードも静かに頷く。
「人生で一番美味しい食事です。」
青龍は夢中で食べ続ける。
「やっぱりご主人様の料理は最高です!」
六合も珍しく笑顔になる。
「懐かしい味ですね。」
はなは静かに目を閉じた。
「……帰ってきた気がします。」
晴明は皆の反応を見て、嬉しそうに微笑んだ。
「良かった。」
「やっぱり、美味しいって言ってもらえるのが一番嬉しいね。」
葵は箸を止めることなく笑う。
「いや……。」
「これ反則だろ。」
「毎日食べたい。」




