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ボス部屋の扉がゆっくりと開く。
広い石造りの空間。
その中央には、全身を黒い鎧で包んだ騎士が静かに立っていた。
右手には漆黒のロングソード。
左手には大盾。
兜の奥で赤い双眸だけが妖しく光っている。
「二十階層のボス、シャドウナイトです。」
クロードが小さな声で説明する。
「剣技に特化した魔物です。」
「力任せでは勝てません。」
「葵。」
「今まで教えたことを思い出してください。」
「はい。」
俺は深呼吸を一つして剣を構えた。
戦闘が始まる。
最初に前へ出たのはクロードだった。
剣と剣がぶつかり合い、重い金属音が部屋中へ響く。
「よく見ていてください。」
「相手の癖を読むのです。」
攻防を繰り返しながらも、クロードは落ち着いて教えてくれる。
何度も教わった足運び。
剣筋。
重心移動。
視線。
一つ一つを思い出しながら、俺はシャドウナイトの動きを観察した。
(右から斬る時、左肩が少し下がる。)
(盾で押し込む前に体重が前へ移る。)
少しずつ動きが読めてきた。
「今です!」
クロードの声が響く。
俺は身体強化を使い、一気に踏み込む。
教わった通り、無駄なく剣を振る。
シャドウナイトは盾で受け止める。
その瞬間。
クロードが逆方向から斬り込み、体勢を崩した。
「葵!」
「はい!」
迷いなく踏み込み、胴へ一閃。
黒い鎧に深い傷が走る。
シャドウナイトが後退した。
「もう一歩!」
クロードの声に身体が自然と反応する。
恐怖はなかった。
ただ、教わった通りに剣を振る。
横薙ぎから、そのまま首元へ斬り上げる。
黒い鎧が砕け散り、シャドウナイトは黒い霧となって消滅した。
静寂が訪れる。
「勝った……。」
思わず息を吐く。
クロードがゆっくり剣を納め、笑顔で頷いた。
「お見事です。」
「以前とは別人ですね。」
「剣筋も迷いが減っています。」
その言葉に思わず笑みがこぼれる。
「ありがとうございます。」
「でも、ほとんどクロードのおかげです。」
クロードは首を横に振った。
「それでも最後に決めたのは葵です。」
「自信を持ってください。」
その言葉が素直に嬉しかった。
セレナは目を輝かせながら駆け寄ってくる。
「葵お兄ちゃん!」
「すっごくかっこよかった!」
「ありがとう。」
頭を優しく撫でると、セレナは嬉しそうに笑った。
続いて、はなが静かに歩み寄る。
「まだ改善すべき点はございます。」
「ですが、この短期間でここまで成長されたのは見事です。」
「よく頑張られましたね、ご主人様。」
普段は厳しいはなに褒められ、少し照れくさくなる。
「ありがとう、はな。」
猫姿の青龍も尻尾を揺らしながら近付いてきた。
「ご主人様。」
「思っていたより、ずっと成長されましたね。」
「少し見直しました。」
素直ではない褒め方に思わず笑ってしまう。
「それ、褒めてるのか?」
青龍は小さく笑った。
六合も穏やかに微笑む。
「皆様のご指導を素直に吸収されております。」
「この調子で鍛錬を続ければ、さらに強くなられるでしょう。」
「ありがとう。」
四人に囲まれながら礼を言う。
部屋の奥では転移石が淡く輝いていた。
クロードが魔力を流し、転移石へ登録を行う。
「これで次回からは二十階層から探索できます。」
「今日は戻りましょう。」
全員が頷き、転移石へ手を添える。
眩い光に包まれた次の瞬間、俺達は一階の転移石前へ戻っていた。
そのまま宿へ戻り、今日の成果を話しながら夕食を取る。
明日はいよいよ二十一階層。
新たな探索に向け、それぞれ身体を休めるのだった。




