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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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「それでは。」


六合が静かに前へ出る。


「果実園、食料庫、日用品庫、素材庫。」


「以上四区画の封印を解除します。」


六合が指先を軽く掲げる。


「管理権限承認。」


「次元倉庫・限定接続開始。」


淡い光が俺を包み込み、すぐに消えた。


「これで完了です。」


「おぉ……。」


恐る恐る意識を向けてみる。


すると頭の中へ、大量の情報が流れ込んできた。


果実園。


食料庫。


日用品庫。


素材庫。


何が保管されているのか、自然と理解できる。


「すげぇ!」


試しに果実園へ意識を向ける。


目の前の空間が小さく揺らぎ、手のひらほどの次元の裂け目が開いた。


「おぉ!」


俺はそこへ手を伸ばす。


掴んだ感触が伝わり、そのまま手を引き抜くと、一房の大粒のぶどうが現れた。


「すげぇ!」


「ご主人様!」


青龍は目を輝かせる。


「はいはい。」


一房渡すと、青龍は嬉しそうに頬張った。


「おいしー!」


俺も一粒口へ放り込む。


「……。」


「なにこれ。」


「めちゃくちゃうまい。」


今まで食べたぶどうとは比べ物にならない。


甘味も香りも桁違いだった。


「前世のご主人様が品種改良までされていましたから。」


六合がさらりと言う。


「そこまで!?」


思わず突っ込む。


楽しくなって次々と中身を確認していく。


食料。


調味料。


衣類。


便利そうな道具。


そんな中――


「あった!」


思わず笑顔になる。


「タバコだ!」


手に取ってみる。


「……見たことない銘柄だ。」


箱には、


《蒼天》


とだけ書かれていた。


「前世のご主人様が、ご自身で栽培から加工までされていた物です。」


六合がさらりと答える。


「え?」


「自分で作ってたの?」


「はい。」


「こちらの世界にも煙草に似た嗜好品はございます。」


「《蒼天》は、その効能を極限まで高めた上位互換と言える品です。」


「疲労回復。」


「魔力回復。」


「集中力向上。」


「精神安定。」


「さらに身体への害は一切ありません。」


「ご主人様が研究を重ねて完成させた逸品です。」


「…………。」


「そこまでやる?」


思わず呆れる。


はなは慣れた様子でため息をついた。


「前世のご主人様は、一度何かに拘り始めると、とことん突き詰めるお方でしたので。」


「そこだけは本当に変わっておりませんね。」


「いや、大事だから!」


俺が即答すると、


青龍は笑い、


六合も思わず苦笑した。


「そうだ。」


「武器はどんなのがあるんだろ。」


どうせなら強そうな武器を見てみたい。


そう思い、武器庫へ意識を向ける。


次の瞬間、


頭の中へ、とてつもなく物騒な名前が浮かび上がった。


《終焉神剣・ラグナロク》


「ラグナロク?」


思わず口にした瞬間だった。


「ご主人様!」


「ダメです!」


はなと六合が同時に声を上げる。


その勢いに思わず肩を震わせる俺。


「もし制御もせずに今この場へ取り出せば……。」


はなが真剣な表情で続ける。


「このダンジョンごと吹き飛びます。」


「え?」


「もちろん、この都市も無事では済まないでしょう。」


「…………。」


思わず武器庫から意識を逸らした。


六合は苦笑しながら説明を続ける。


「ご安心ください。」


「現在のご主人様では、武器庫以降の封印は解除されておりませんので、勝手に取り出すことはできません。」


「ですが、今後解放されることもあるでしょう。」


「その時は、名前を見ても分からない物には決して触れず、必ず私か白虎へ確認してくださいませ。」


「世界が壊れてからでは、遅いですからね。」


六合は穏やかに微笑んでいる。


だが、その言葉だけは冗談ではないと全員が理解していた。


「世界が壊れるって……。」


「ヤバすぎるだろ。」


「どんだけ危険な物を集めてたんだよ、前世の俺……。」


思わず頭を抱える。


その様子を見て、


はなは呆れたようにため息をつき、


青龍は笑いを堪え、


六合だけが静かに微笑んでいた。


「……はい。」


俺は今までで一番素直に返事をした。

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