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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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第四十四話 新たな鍵


「それでは、参ります。」


クロードがボス部屋の扉を開く。


低い唸り声が部屋へ響く。


中央には銀色の体毛を持つ巨大な狼。


シルバーウルフ。


クロードは静かに一歩踏み出す。


次の瞬間。


姿が消えた。


「えっ──」


俺が目で追うより早く、大剣が一閃する。


ザンッ!!


シルバーウルフは反応する暇もなく両断され、その場へ崩れ落ちた。


「……終わった。」


思わず呟く。


「あっさり過ぎない?」


「十階層程度であれば、この程度です。」


何事もなかったかのように剣を納めるクロード。


「やっぱり強いなぁ……。」


ボスが消えると、重い音を立てて奥の扉が開いた。


中には淡く光る転移石と、更に下へ続く階段がある。


「これが転移石です。登録しておけば、以降はここから探索を再開できます。」


全員で転移石へ触れる。


身体が光に包まれ――


気付けばダンジョン入口へ戻っていた。


「おぉ! 本当に戻ってきた! 便利だなぁ。」


異世界のダンジョンって凄い。


◇ ◇ ◇


宿へ戻り、夕食を囲みながら今日の反省会をする。


「思ったより順調だったね。」


クロードが頷く。


「この調子で進めば問題ないでしょう。」


「セレナも頑張ってたよ。」


「えへへ。」


照れながら笑うセレナ。


「じゃあ明日も十階層から探索開始! 頑張ろう!」


「はい。」


それぞれ部屋へ戻り、眠りについた。


◇ ◇ ◇


翌朝。


ガタガタッ!


「ん……。」


物音で目を覚ます。


部屋を見ると、


「逃がしません。」


「にゃー!」


はなが一匹の猫を追い掛け回していた。


「はな? どうしたの?」


「変な野良猫が侵入してきました。変な病気でも持っていたら危険です。排除します。」


「私、そんなの持ってないもん!」


「…………。」


猫を見る。


猫も俺を見る。


「猫が喋ったぁぁぁ!」


驚く素振りを見せる俺。


「……ご主人様。棒読みですよ。」


はなが呆れたようにため息をつく。


「やっぱりバレた?」


どう見ても普通の猫じゃない。


俺はしゃがみ込み、猫へ話しかけた。


「それで? 君は誰?」


猫は胸を張る。


「ようやく見つけました! ずっとお会いしたかったです、ご主人様! 私は十二柱が一柱――青龍。今日、ご主人様へ会いに来ました!」


……と、思った次の瞬間。


「ですが! そこの駄犬とは交代です!」


「誰が駄犬ですか。」


はなが即座に言い返す。


「その話はもう終わったはずですよね?」


「ふん! あの時は周りに止められただけ! 私はまだ納得してない!」


「はいはい。」


穏やかな声が部屋へ響いた。


「その辺りにしておこうか、青龍。」


何もない空間が揺らぎ、一人の少年が姿を現す。


柔らかな雰囲気を纏い、綺麗な所作で一礼した。


「ようやく、ご主人様へお会いすることができました。私は十二柱が一柱、六合と申します。この日を心より楽しみにしておりました。まずはご挨拶に参りました。どうぞ、よろしくお願いいたします。」


礼儀正しく微笑む六合。


その隣では、


「まだ私は認めてないからね!」


と、猫姿の青龍が頬を膨らませていた。


……朝から賑やかになりそうだ。

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