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身体の痛みは、ほとんど無くなっていた。
「よし!」
「完全復活!」
俺は軽く身体を動かす。
「いいえ。」
はなが即座に否定した。
「身体自体は回復しています。」
「ですが、魔力回路はまだ完全ではありません。」
「あと少しかかります。」
「えぇ……。」
「とは言え。」
「軽い身体強化程度でしたら問題なく使用できます。」
「それなら十分!」
「やっと冒険できる!」
◇ ◇ ◇
休んでいる間に、セレナも冒険者登録を済ませていた。
エルフは魔法適性が高い種族らしく、はなが基礎から魔法の訓練を教えていたそうだ。
「セレナ、頑張った?」
「うん!」
「まだ全然だけど!」
「はなさんが教えてくれた!」
「そっか。」
思わず頭を撫でると、セレナは嬉しそうに笑った。
◇ ◇ ◇
四人はダンジョン都市ファルンの中央にある巨大なダンジョンへ向かった。
「おぉ……。」
思わず見上げる。
巨大な石造りの入口。
次々と冒険者達が出入りしている。
「いよいよだ。」
「異世界のダンジョン!」
受付で冒険者証を見せる。
「確認しました。」
「お気を付けて。」
受付の女性に見送られながら、俺達はダンジョンへ足を踏み入れた。
「ワクワクする!」
◇ ◇ ◇
ダンジョン一階。
「まず覚えていただきたいことがあります。」
クロードが歩きながら説明を始める。
「ダンジョンでは罠への警戒が最優先です。」
「足元。」
「壁。」
「天井。」
「違和感があれば必ず確認してください。」
「なるほど。」
「そして、焦って先頭へ飛び出さないこと。」
「私とはなが索敵します。」
「了解!」
さらに進む。
「魔物です。」
クロードが小さく呟く。
現れたのは、青いゼリー状の魔物。
「スライム……。」
思わず身体が強張る。
あの日の光景が頭をよぎった。
下水道でスライム相手に何もできず、やられそうになったこと。
そして、はなが初めて封印を解除して助けてくれたこと。
「あの時は本当に何もできなかったな……。」
無意識に剣を握る手へ力が入る。
「葵。」
クロードが静かに声を掛けた。
「落ち着いてください。」
「スライムは核を破壊すれば倒せます。」
「……はい。」
深呼吸を一つ。
軽く身体強化を発動し、一気に距離を詰める。
「はっ!」
剣がスライムの核を正確に貫いた。
パリン。
核が砕け、スライムはその場で崩れ落ちる。
「……勝った。」
以前は何もできず、やられそうになった相手。
今では落ち着いて、一人で倒せた。
「以前より確実に成長していますね。」
クロードの言葉に、俺は少し照れくさそうに笑った。
そこから先も順調だった。
クロードは戦いながら敵の特徴を教え、
罠の見分け方。
索敵の方法。
連携の取り方。
一つ一つ丁寧に教えてくれる。
気が付けば――。
「ここです。」
「十階層のボス部屋前になります。」
大きな扉の前で足を止めた。
「ボス部屋?」
クロードが頷く。
「ダンジョンでは十階層ごとにボスが存在します。」
「討伐すると奥に転移石があります。」
「その転移石へ登録すれば、一度地上へ戻っても次回から十階層から探索できます。」
「なるほど!」
「便利だ!」
「今回のボスはシルバーウルフです。」
「一体ですが、通常種より遥かに強力です。」
俺は、そっとはなの方を見る。
(犬系か……。)
(また仲間じゃないの?って言ったら怒られるかな……。)
すると、はなと目が合った。
「ご主人様。」
「何か言いたいことがあるのでしたら。」
「よくお考えになってから、おっしゃってくださいね。」
にっこり。
……圧が凄い。
(読まれてる!?)
「よ、よし!」
「頑張って皆で倒すぞー!」
勢いよく話を逸らし、そのままボス部屋へ向かって歩き出す。
その背中を見ながら、
クロードは小さく苦笑し、
セレナもくすっと笑う。
はなは呆れたようにため息をつきながら、その後を追いかけた。




