43
ロイド商会を後にし、宿へ戻る。
部屋へ入ると、ちょうどクロードとはなも依頼から帰ってきたところだった。
「お帰りなさいませ。」
「お帰り。」
「ただいま。」
荷物を置いたクロードが口を開く。
「身体の具合はいかがですか?」
「だいぶ良くなったよ。」
「まだ全力では動けないけど、普通に歩くくらいなら問題ない。」
クロードは安心したように頷いた。
「それは良かったです。」
皆が席に着き、今後について話し合うことになった。
「とりあえず。」
「もう少し身体が動くようになったら、ダンジョンに行こうと思う。」
「ランクも上げたいし、経験も積みたい。」
クロードも頷く。
「私も賛成です。」
「無理のない範囲で進めましょう。」
「そのためにも、まずは完全回復ですね。」
「了解。」
話が一段落したところで、俺はニヤリと笑った。
「そうだ。」
「みんなに見せたい物がある!」
俺はロイドから貰ったマジックバッグを取り出した。
「どう?」
「マジックバッグ!」
「すごくない?」
クロードとはながバッグを見る。
「…………。」
「…………。」
反応が薄い。
「あれ?」
「もっとこう……。」
「おぉー! とか無いの?」
クロードが少し申し訳なさそうに答えた。
「実は私も持っています。」
「え?」
「長年冒険者をしておりますので。」
「必要な物ですから。」
「…………。」
俺ははなを見る。
「はなは?」
「私は必要ありません。」
「え?」
「次元倉庫が使えますので。」
「……じげん?」
「倉庫?」
俺の目が輝く。
「なにそれ!」
「アイテムボックスみたいな?」
「いいえ。」
「アイテムボックスの上位互換です。」
「…………。」
「容量制限は、ほぼありません。」
「中の時間も停止しています。」
「食材も腐りませんし、生物以外であれば基本的に何でも収納可能です。」
「さらに。」
「前世のご主人様が別次元へ創られた空間ですので、安全性も保証されています。」
「十二柱は全員使用できます。」
「…………。」
「え。」
「それ俺も使えるの?」
一気にテンションが上がる。
はなは少し申し訳なさそうな顔をした。
「本来であれば。」
「ご主人様も使用できます。」
「やった!」
思わず立ち上がる。
しかし。
「ですが。」
「私が管理している封印では、ご主人様が次元倉庫へ接続するための封印解除までは行えません。」
「…………。」
「え?」
「つまり。」
「今は使えません。」
「…………。」
「そうですか。」
「はい。」
「そうなんですか。」
「はい。」
部屋に沈黙が流れる。
「……俺。」
「さっきまでマジックバッグで浮かれてたんだけどなぁ。」
クロードは苦笑する。
セレナも困ったように笑う。
はなは申し訳なさそうに頭を下げた。
「申し訳ありません。」
「いつかは使えるようになります。」
俺は大きくため息をついた。
「その『いつか』を楽しみにしとくよ……。」
そう呟く葵の背中は、どこか寂しそうだった。




