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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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ロイド商会を後にし、宿へ戻る。


部屋へ入ると、ちょうどクロードとはなも依頼から帰ってきたところだった。


「お帰りなさいませ。」


「お帰り。」


「ただいま。」


荷物を置いたクロードが口を開く。


「身体の具合はいかがですか?」


「だいぶ良くなったよ。」


「まだ全力では動けないけど、普通に歩くくらいなら問題ない。」


クロードは安心したように頷いた。


「それは良かったです。」


皆が席に着き、今後について話し合うことになった。


「とりあえず。」


「もう少し身体が動くようになったら、ダンジョンに行こうと思う。」


「ランクも上げたいし、経験も積みたい。」


クロードも頷く。


「私も賛成です。」


「無理のない範囲で進めましょう。」


「そのためにも、まずは完全回復ですね。」


「了解。」


話が一段落したところで、俺はニヤリと笑った。


「そうだ。」


「みんなに見せたい物がある!」


俺はロイドから貰ったマジックバッグを取り出した。


「どう?」


「マジックバッグ!」


「すごくない?」


クロードとはながバッグを見る。


「…………。」


「…………。」


反応が薄い。


「あれ?」


「もっとこう……。」


「おぉー! とか無いの?」


クロードが少し申し訳なさそうに答えた。


「実は私も持っています。」


「え?」


「長年冒険者をしておりますので。」


「必要な物ですから。」


「…………。」


俺ははなを見る。


「はなは?」


「私は必要ありません。」


「え?」


「次元倉庫が使えますので。」


「……じげん?」


「倉庫?」


俺の目が輝く。


「なにそれ!」


「アイテムボックスみたいな?」


「いいえ。」


「アイテムボックスの上位互換です。」


「…………。」


「容量制限は、ほぼありません。」


「中の時間も停止しています。」


「食材も腐りませんし、生物以外であれば基本的に何でも収納可能です。」


「さらに。」


「前世のご主人様が別次元へ創られた空間ですので、安全性も保証されています。」


「十二柱は全員使用できます。」


「…………。」


「え。」


「それ俺も使えるの?」


一気にテンションが上がる。


はなは少し申し訳なさそうな顔をした。


「本来であれば。」


「ご主人様も使用できます。」


「やった!」


思わず立ち上がる。


しかし。


「ですが。」


「私が管理している封印では、ご主人様が次元倉庫へ接続するための封印解除までは行えません。」


「…………。」


「え?」


「つまり。」


「今は使えません。」


「…………。」


「そうですか。」


「はい。」


「そうなんですか。」


「はい。」


部屋に沈黙が流れる。


「……俺。」


「さっきまでマジックバッグで浮かれてたんだけどなぁ。」


クロードは苦笑する。


セレナも困ったように笑う。


はなは申し訳なさそうに頭を下げた。


「申し訳ありません。」


「いつかは使えるようになります。」


俺は大きくため息をついた。


「その『いつか』を楽しみにしとくよ……。」


そう呟く葵の背中は、どこか寂しそうだった。

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