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セレナと暮らし始めてから、一週間が経った。
俺は相変わらず宿のベッド生活だった。
「くっ……!」
身体を起こすだけでも全身が悲鳴を上げる。
晴明。
“少し反動がある”って言ってたよな?
「どこが少しなんだよ!」
「めちゃくちゃ痛ぇじゃねぇか!」
ベッドの上で文句を言う。
はなが答えた。
「文句なら前世のご主人様に言ってください。」
「本人いねぇし!」
そんなやり取りが毎日続いていた。
動けない間、金銭面をクロードばかりに頼るのも申し訳ない。
そのため、セレナには宿で俺の身の回りの世話をお願いし、クロードには今まで以上に討伐依頼を受けてもらった。
そして、はながその半分ほどの依頼をこなすという流れになった。
俺は安静にしながら魔力操作だけは続けていた。
……が。
「うわっ!」
魔力が暴れて霧散する。
「また失敗ですね。」
「全然言うこと聞かねぇ……。」
以前なら当たり前にできていたことすら上手くいかない。
晴明の言っていた魔力回路への負荷というのは、本当だったらしい。
結局、一週間。
文句を言いながらも回復を待つしかなかった。
◇ ◇ ◇
「よし!」
「やっと普通に歩ける!」
一週間ぶりに宿の外へ出る。
「まだ無理しちゃダメだよ?」
セレナが心配そうに俺を見上げる。
「分かってるって。」
「でも、ずっと寝てたから身体がなまりそうでさ。」
「無茶したら、はなさんに怒られるよ?」
「……それは嫌だな。」
思わず苦笑する。
その時、クロードから聞いていた話を思い出した。
「そういえば。」
「ロイドさんが、動けるようになったら来てほしいって言ってたんだ。」
「クロードさんが言ってたね!」
「今日はクロードさんとはなさん、依頼に行ってるし。」
「じゃあ、一緒に行こ!」
「うん!」
二人で町を歩く。
案内された先には、大きな建物が建っていた。
「……でか。」
入口には立派な看板。
『ロイド商会』
「これ全部?」
「うん!」
「ここが本店なんだって。」
思わず見上げる。
「めちゃくちゃ成功してる人じゃん……。」
中へ入ると、すぐにロイドが駆け寄ってきた。
「葵さん!」
「お身体はもう大丈夫なのですか!」
「何とか歩けるくらいには。」
ロイドは深々と頭を下げる。
「改めまして。」
「本当にありがとうございました。」
「命の恩人です。」
「いえいえ。」
ロイドは応接室へ案内してくれた。
紅茶が運ばれ、一息ついたところで話し始める。
「あの後、色々調べました。」
「すると、今回の襲撃には裏がありました。」
「ライバル商会が盗賊へ情報を流していたようです。」
「私を襲わせるために。」
俺は驚く。
「そんなことまで……。」
ロイドは苦笑した。
「私はアイテムボックスの能力を持っています。」
「非常に希少な能力ですので、普段はなるべく表へ出さず、隠して商売をしてきました。」
「ですが、どうやら情報が漏れていたようですね。」
「もし皆さんが助けてくださらなければ……。」
「今頃、私は奴隷として働かされていたでしょう。」
静かに頭を下げる。
「本当にありがとうございました。」
俺は苦笑する。
「いやぁ。」
「アイテムボックスって凄いですよね。」
「正直、めちゃくちゃ羨ましいです。」
ロイドは笑った。
「残念ながら、この能力は差し上げられません。」
「ですが。」
「代わりと言っては何ですが。」
ロイドは従業員へ目配せする。
しばらくすると、一つの革製の鞄が運ばれてきた。
「こちらを受け取ってください。」
「マジックバッグです。」
「……え?」
思わず固まる。
「容量は馬車一台分ほど収納できます。」
「もちろん中身は腐りません。」
「重量もほとんど変わりません。」
「私のアイテムボックスには及びませんが、冒険者には非常に便利な品です。」
「かなり高価なのでは……。」
「命を救っていただいた恩に比べれば安いものです。」
「どうか受け取ってください。」
俺は恐る恐るバッグを手に取る。
「……すげぇ。」
異世界あるある。
本物のマジックバッグだ。
思わず顔が緩む。
「ありがとうございます!」
ロイドも嬉しそうに微笑んだ。
「こちらこそ。」
「これからも何か困ったことがありましたら、いつでもロイド商会を頼ってください。」
「出来る限り力になります。」
俺は深く頭を下げた。
「その時は遠慮なく頼らせてもらいます。」
商会を出る。
マジックバッグを何度も眺めながら歩く俺。
「やばい。」
「テンション上がる。」
「異世界来て良かった。」
「えへへ。」
「良かったね!」
嬉しそうに笑うセレナを見て、俺も思わず笑ってしまった。




